プリンスの「SIGN OF THE TIMES」は2枚組の大作にして名盤である。前作「PARADE」まで活動を共にしたREVOLUTIONを解散後、プリンスはひとりスタジオに入り作り上げたのが「SIGN OF THE TIMES」である。そしてスタジオ・ワークの妙こそがプリンスの真骨頂と言ってもよい。サウンドの傾向をアルバムごとに迎合とは別の形で時代に即して変化させているプリンスが、現在の耳で聴けばいかにも80年代のテイストあふれる作品として仕上げている。 またこの時期はプリンスが最も才能充実していた時期と重なり、音楽関係のみならず映画や女性関係にも多忙な日々であったはずだが、それにしても2枚組のマテリアルを発表するのみならず、その影にはその数倍にものぼるアウトテイク、未発表曲が存在していることも知られている。まさにこの時期のプリンスを表現するのであれば充実の一言に尽きる。 そもそもREVOLUTIONと共に制作した2枚組「DREAM FACTORY」をバンド解散と共に破棄、さらに3枚組として制作された「CRYSTAL BALL」がワーナーに拒否され、その結果2枚組の「SIGN OF THE TIMES」に落ち着いたという経緯がある。プリンス恐るべしである。 こうしてリリースされた「SIGN OF THE TIMES」に伴うツアーは1987年、わずか2か月間に全34公演が行なわれた。プリンスのペースでいえばゆったりとしたものだが、これがプリンスの重要な転換点となったと思われる。なにせ長年連れ添ったバンドと決別し、新たなラインナップで臨んだツアーである。レコード会社はプロモーションのために欧州、全米、そして日本を含む大規模なツアーを要求したが、このアルバムに伴うツアーは欧州のみでしか行われていない。それゆえ、残された音源はいずれも非常にレアなものとなっている。 本作は、そのSIGN OF THE TIMESツアーより、1987年6月17日、パリ4連続公演の最終日をサウンドボードで収録している。セットリストはニューアルバム「SIGN OF THE TIMES」収録曲をメインに据えつつ、過去のヒット曲を配するこの時点でのベスト選曲かつ現役感あふれるものとなっている。ボーナストラックでは同ツアーより6月22日オランダ公演より2曲を収録している。欧州において短期しか行われなかったSIGN OF THE TIMESツアーの代表的な音源と言えるだろう。
PALAIS OMNISPORTS DE PARIS BERCY PARIS, FRANCE June 17, 1987
01. Sign O' The Times 02. Play In The Sunshine 03. Little Red Corvette 04. Housequake 05. Girls And Boys 06. Slow Love 07. I Could Never Take The Place Of Your Man 08. Hot Thing 09. Now's The Time 10. Sheila E's Drum Solo 11. Let's Go Crazy 12. When Doves Cry 13. Purple Rain 14. 1999
STADION GALGENWAARD UTRECHT THE NETHERLANDS June 22, 1987
15. The Cross 16. It's Gonna Be A Beautiful Night