
レッド・ツェッペリン1973年アメリカ・ツアーの前半はPAアウトのサウンドボード録音が豊富に存在することがマニアの間では有名で、CDブート・アイテム黎明期にはこの時期のライブを収録したサウンドボード録音が立て続けに出回ったものです。21世紀に入るとさらにデンバーからサンディエゴ公演まで、これまた立て続けに発掘されたこともありました。当店としても5月14日のニューオリンズ公演のサウンドボード録音をリリースしたのは記憶に新しいところですが、今回はその続編とも呼ぶべき、18日のダラス公演をリリースいたします。ZEPマニアの方であれば、73年のダラスと言われればLPアイテム「FRACTURED RIBS」を思い起こされるかもしれません。このアナログがリリースされた時期は、ZEPのサウンドボード録音の発掘アイテムがCDと入り乱れてリリースされていた時期。このダラスに関して言えば、CDを差し置いてLPという形で先に登場し、後に同じタイトルでCD版が登場(懐かしのコンドル盤です)というパターンでした。いずれにせよ、アイテムが登場した時期自体は先のニューオリンズよりもずっと早く、現在までに数多く発掘された73年アメリカ・ツアーにおけるサウンドボード録音の中ではもっとも古い部類に数えられるものです。73年アメリカと言えばオフィシャルの「THE SONG REMAINS THE SAME」サウンドトラックがあり、それと同じツアーじゃな…と高を括るマニアも少なくなかったのですが、いざ蓋を開けてみればオフィシャルとはまったく違った雰囲気やグルーブ感の演奏に驚かされたものです。ダラスとオフィシャルのサントラの間には二か月の開きがあり、今思えば演奏の雰囲気が違っていたのも当然の話だったのですが、当時はそれを示す前例が少なく、当時もっとも親しまれていた73年アメリカ・アイテムだったシアトルはサントラの時期に近いというで、やはり同ツアーはああいった雰囲気で進んでいたものだと思われていました。ところがどうでしょう、先に挙げたアイテム群で明らかとなったダラスのステージを聴いてみれば、同じツアーでも全然ノリが違う。この日はよく言えば「リラックス」した雰囲気が全体に漂っており、悪く言うと「サントラの完成度ではない」ということになります。もっとも、この日に限らず73年アメリカの5月はヨーロッパのコンサート・ホールからスタジアムへとシフトチェンジした時期であり、ZEPからすれば手探り状態。ここダラスではそれを如実に物語る場面まで登場します。「Celebration Day」の最中、プラントが「モニターを(ボリューム)上げてくれよ、ラスティ」と付け加えているところからも、彼がこれまでにない大会場で着実に歌い上げることの難しさが垣間見られます。それと同時に、リラックスしているからこそ、本番ステージの最中のハプニングをこのようにして切り抜けられたのかもしれません。一方で序盤の演奏は前のヨーロッパの雰囲気を引きずったものがあり、中でもオープニング「Rock And Roll」で聴かれるボンゾのドラミングなど、ツアーがより進んだ段階のグルーブ感よりも、ドカドカと鳴り響くバスドラがヨーロッパの頃をしのばせます。それにニューオリンズでもそうだったように、前半はジミーの堅実なギター・プレイが素晴らしい。彼が生来持ち合わせていた、あの派手なステージアクションにこのツアーから開眼したこともあり、ヨーロッパの時ほど弾きまくっている訳ではないのですが、それでも随所で丁寧なタッチのフレーズが明瞭に聴き取れるのがサウンドボードのいいところ。むしろ、ここでのノリノリな弾きっぷりはニューオリンズをも凌ぐほどで、例えば「Over The Hills And Far Away」のギターソロではジミーのプレイが乱れそうになる場面に出くわすのですが、それを立て直してみせる様がお見事。そして「Since I've Been Loving You」でのプレイも冴えわたっていました。ただし5月一連のサウンドボード録音の例に漏れず、ダラス音源もショウの完全収録には至りません。この日に関して言うと「Moby Dick」以降のライブ後半パートが録音されていません。おまけに同日のオーディエンス録音というのが存在せず、この音源もう一つの問題だった「The Rain Song」で入るカット箇所をアジャストすることも不可能、現在までダラス公演が聴けるのは今回のサウンドボード録音のみなのです。そう考えるとライブ中盤における旨みと言えた「Dazed And Confused」と「Stairway To Heaven」がカットされずに収録されている点は幸いでしょう。ここでも堅実な演奏がむしろ新鮮に聴こえるのが前者で、それでいて演奏が終盤のメイン・パートに戻る際のボンゾとジミーの駆け引きなどは聴くものをゾクゾクさせてくれる瞬間。後者では何といってもプラントの堂々と歌い上げる様が素晴らしい!かつてのハイトーンが出なくとも、力強く歌ってみせる様が73年5月ならではのもの。7月と違ってこの月はプラントが総じて好調であり、キーを下げつつも迫力を感じさせる歌い方がすっかり板についています。それどころかダラスにおけるプラントの好調ぶりは際立っており、73年型プラント・シャウトの好例と呼べる場面が続出。最初に触れた「Celebration Day」はもちろん「Misty Mountain Hop」でもいい感じに歌ってくれました。ダラス音源が初めてリリースされた際のLPタイトルが物語っていたように、ジョンジーの肋骨にひびが入っていたことをプラントが聴衆に告げています、だからでしょうか、ジョンジーがメロトロンを弾く「The Rain Song」では彼が珍しくミスを犯し、それをアドリブでごまかそうとする面白い場面まで聴けるのです。ところがダラスのサウンドボード、同時期の音源と比べると若干音質が落ちます。ZEPサイトにおいても「very good」とレーティングされている場合が多く、そのせいで最初の登場がLPだったのかもしれませんし、そこではピッチの狂いまで見受けられたものです。さすがにピッチの問題に関してはCDアイテムになると緩和されたのですが、音質の粗は変わらず。この問題のブラッシュアップに乗り出したのがwinston remastersと並ぶマニア・リリースの雄dadgad。別音源が存在せず、オーディエンス録音による補てんが出来ないことからwinstonは手を付けなかったのだと思われますが、今回リリースが実現するdadgadリマスターの仕上がりは実に見事。今一つ音の抜けが悪かった原音の状態が解消されつつもサウンドボード録音という素性の良さを生かし、それこそ霧が晴れたかのようなクリアネスに生まれ変わりました。過去のダラス・アイテムと比べると圧倒的なアッパー具合であると断言いたしましょう。
Memorial Auditorium, Dallas, TX. USA 18th MAY 1973 STEREO SBD
Disc 1 (62:18)
01. Intro 02. Rock And Roll 03. Celebration Day 04. Black Dog 05. Over The Hills And Far Away 06. Misty Mountain Hop 07. Since I've Been Loving You 08. No Quarter 09. The Song Remains The Same 10. The Rain Song
Disc 2 (41:04)
01. Dazed And Confused 02. Stairway To Heaven
STEREO SOUNDBOARD RECORDING