
ロジャー・ウォーターズが再び動き出しました。“THE WALL LIVE 2010?2013”で空前の大成功を収めたロジャーでしたが、その際には「もうツアーはやらないかも知れない」とも発言。実際、その後は散発的なパフォーマンスだけでした。しかし、2016年になって大規模なコンサートを発表。本作は、その初日となる「2016年9月28日メキシコ・シティ公演」のオーディエンス・アルバムです。まずは、現在までに発表されている活動概要から見てみましょう。
・2016年9月28日メキシコ公演 【本作】・2016年9月29日メキシコ公演・2016年10月1日メキシコ公演 《約1週間後》・2016年10月9日インディオ公演 《1週間後》・2016年10月16日インディオ公演 《約1週間後》・2016年10月22日マウンテンビュー公演・2016年10月23日マウンテンビュー公演
以上、7公演が2016年に予定されているコンサート。現在はメキシコ3公演→インディオ公演と歩みを進めたところです。そんな初日を収めた本作は、3年ぶりのビッグ・コンサートの巨大さが吹き出すドキュメント・サウンド。なにしろ、距離感がもの凄い。音源紹介で「距離感」は地雷ワードのような気もしてしまいますが、これは楽音の話ではなく、歓声の規模。現場となった“フォロ・ソル”は、5万5000人収容の野外野球場なのですが、間近の熱狂から遠く遠くでうねる大歓声に至るまでの遠近感が圧倒的なのです。近くで1人の女性が叫んだかと思えば、遙か彼方からさざ波のように数万のどよめきが押し寄せる。よく「スケール感」「スペクタクル」と書きますが、ここまで巨大な空間を感じさせ、熱狂が満たしてく録音などそうそうありません。しかも、その熱狂がラテンなメキシコノリだから熱い。冒頭の大騒ぎにやや不安にもなりますが、ショウが始まると基本的に曲間で大いに盛り上がりつつ、(日本公演やイギリスのようにシンと鎮まるわけではないものの)演奏中はしっかりと聴くスタイルになっていく。そんな空間を突き抜ける楽音は、大歓声のスペクタクルに反してやたらと端正。音の粒立ち、骨太な芯、美しい鳴り……そのいずれもが素晴らしく、安定感もバツグンならオーディエンス録音では弱点になりがちな低音も艶やか。その上、野外だけに回り込むような残響もなく、もしラテンな大歓声がなかったら「これサウンドボード?」と疑うところでした。世界中の注目を集めた初日だけに、この日の記録は次々と報告されていますが、本作はピンク・フロイド研究の世界的権威が厳選・監修したもの。まだ日が浅いので断定は出来ませんが、現時点でベストなマスターなのです。そんなサウンドで描かれる最新ショウこそが最大のポイント。すでに各所で話題となっていますが、その内容は正しく“ピンク・フロイド・グレイテストヒッツ”。軸になっているのは『狂気』『炎』『アニマルズ』『ザ・ウォール』の4作で、全曲がフロイド・ナンバーに埋め尽くされた大盤振る舞い感が凄い。さすがに『ザ・ウォール』からは7曲止まりですが、『狂気』からは「On the Run」「Any Colour You Like」以外の全曲、『炎』からは「Shine On You Crazy Diamond (Parts VI?IX)」以外の全曲、『アニマルズ』からも「Sheep」「Pigs On The Wing 2」以外の全曲を演奏している。各アルバムから欠けがあるように完全再現はなく、曲順も入れ替えられてはいますが、おおよそ『狂気』→『炎』→『アニマルズ』→『ザ・ウォール』の時系列で並んでいます。ただし、時系列とは言っても“ヒストリー”ではなく、あくまでも“グレイテスト・ヒッツ”。『神秘』からは「Set The Controls For The Heart Of The Sun」1曲ですし、『おせっかい』からは2曲に止まっています。しかし、その2曲「One Of These Days」「Fearless/You'll Never Walk Alone」こそが最大のポイント。いずれもロジャーのソロとしては初演であり、「One Of These Days」は1974年以来。「Fearless」に至ってはピンク・フロイド時代を含めても幻とさえされる激レア曲であり、その生演奏が激しくクリアなサウンドで聴けるのです。ここでの超リアルな観客の反応も聞きもの。「One Of These Days」はベースの1音だけで絶叫が轟き、猛烈な盛り上がりが広大な会場を波のように広がりますし、一方の「Fearless」では曲が分からなかったのか、反応は今ひとつ。曲中に話し込む人まで出てくるなど、やたらと素直な落差までもが味わえる。決して、コアなマニアだけではない幅広い人気ぶりが透けるドキュメントなのです。偶然なのか、デイヴ・ギルモアの“RATTLE THAT LOCK TOUR”とバトンタッチするように動き出した、ロック界の巨人。その第一夜にして、貴重なソロ初演曲もたっぷりと楽しめるライヴアルバムです(ちなみに、同じ日にギルモアは母国イギリスでライヴを行っており、その模様は今週リリースの『ROYAL ALBERT HALL 2016 3RD NIGHT』でお楽しみいただけます)。本作の翌日公演では「Pigs On The Wing 2」も復活しており、これからに期待が膨らむばかりです。そんなキックオフ公演をいち早く堪能できる逸品。
Live at Foro Sol, Mexico City, Mexico 28th September 2016 TRULY PERFECT SOUND
Disc 1 (55:55)
1. Intro. 2. Speak To Me 3. Breathe 4. Set The Controls For The Heart Of The Sun 5. One Of These Days 6. Time 7. Breathe (Reprise) 8. The Great Gig In The Sky 9. Money 10. Us And Them 11. Fearless 12. You'll Never Walk Alone
Disc 2 (61:56)
1. Shine On You Crazy Diamond (Parts I-V) 2. Welcome To The Machine 3. Have A Cigar 4. Wish You Were Here 5. Pigs On The Wing 1 6. Dogs 7. Pigs (Three Different Ones)
Disc 3 (47:14)
1. The Happiest Days Of Our Lives 2. Another Brick In The Wall Part 2 3. Mother 4. Run Like Hell 5. Brain Damage 6. Eclipse 7. Vera 8. Bring The Boys Back Home 9. Comfortably Numb