トレヴァー・ラビン時代の極上サウンドボード・アルバムの登場です。YESはオフィシャルでもライヴ作品の充実しているバンドですが、どういうわけか第2の黄金期であったはずのラビン時代は冷遇。代表作である『9012LIVE』も、“90125 YES”の本領を伝えるものではありませんでした。そんな中で、クオリティ・サイズ共に“オフィシャル代わり”となり得る傑作ステレオ・サウンドボードがどうしても必要だった。これまで、その大役を担い得たのは、完売サウンドボードの『MARYLAND HEIGHTS』だけでしたが、本作はそれにも匹敵する極上品なのです。そんな本作が録音されたのは、「1994年6月19日カナンデイグア公演(ニューヨーク州)」。現地のFM放送を元にしたステレオ・サウンドボード音源です。まず、素晴らしいのはクオリティ。収録もミックスもほぼ完璧、まさにオフィシャル級のサウンドボードです。「ほぼ完璧」とやや濁したのには、わけがある。本作の元になっているのは、かつて『EARLY TALK』として登場し、大絶賛されたマスターなのですが、現代の耳で聴くと重低音がやや薄かった。いや、低音自体はしっかりしているものの、中域が強調されたバランスのためにベースラインのエッジがボケ気味だったのです。もちろん、非常に高度なレベルの話ではありますが、本作では最新リマスターにより、重低音を引き出した。それも単に低音のバランスを上げるのではなく、サウンドニュアンスに手を加えてクリス・スクワイア独特のラインも克明に味わえる。ライヴ終盤「Walls」でヴォーカルマイクに現場PA由来のノイズがうっすら入りますが、こちらも可能な限り目立たないように仕上げました。そんなサウンド蘇った極上ステレオ・サウンドボードは、内容もオフィシャル級。セットリストからして、『90125』『BIG GENERATOR』『TALK』のベスト・アルバムとしても聴ける総決算。『BIG GENERATOR』からは代表曲の「Rhythm Of Love」だけですが、『90125』は半分以上の5曲に「Make It Easy」も披露され、新作『TALK』に至っては「State Of Play」以外の全曲が演奏されるのです。高度で複雑ながらもアメリカン・プログレハードさながらにキャッチーな楽曲群の旨みがこれでもか!と炸裂。このツアーの後、ラビンはYESと共とを別ってしまいますが、10年に渡ってラビンが生み出してきた名曲群は、旧来のYESが持っていた華やかさや親しげなメロディはそのままに、“ロックの熱さ”がじんわりと滲む。そんなベストライヴを極上サウンドでたっぷりと味わえるのです。第3のポイントは、その演奏そのもの。ここにはスティーヴ・ハウもリック・ウェイクマンもいませんが、引き締まったアンサンブルはロックバンドとして最高級。18分に及ぶ大曲「Endless Dream」も完璧に演奏されますし、過去の名曲群もビシッと決める。そして、何より素晴らしいのはラビン。ギターを持てば過去の名曲群にも“熱気”を注入し、ピアノの前に座れば「And You And I」に見事なイントロソロを加える。実のところ、本作には思わぬミスもありまして、「Heart Of The Sunrise」のイントロでクリス・スクワイアがリズムを見失い、ついでにアラン・ホワイトが入りそこね、いつもの鉄壁アンサンブルが滅茶苦茶。あわや曲崩壊!となるところを強引に救うのがまたラビン。YES後は映画音楽で大成するラビンですが、本作では、作曲家としても演奏家としても彼の才能が爆発。溢れんばかりの才気がロック・フィールドで全開となっている1本なのです。このライヴから22年。ジョン・アンダーソンとラビンが再会した新プロジェクト“ANDERSON, RABIN & WAKEMAN”のツアーがいよいよ10月から始まろうとしています。これまでも離合集散を繰り返し、1バンドというよりは1つの音楽ジャンルとさえなっているYESミュージック。さまざまな表情の中でも、ひとつの頂点だった“90125 YES”。本作は、そんな5人の総決算にして、最高のサウンドボード・アルバムです。オフィシャルが残し得なかった“孤高のプログレハード”。
Live at Finger Lakes Performing Arts Center, Canandaigua, New York, USA 19th June 1994 STEREO SBD(UPGRADE)
Disc 1(63:06)
1. I Am Waiting 2. The Calling 3. Rhythm Of Love 4. Hearts 5. Real Love 6. Changes 7. Heart Of The Sunrise 8. Roundabout
Disc 2(69:44)
1. Cinema 2. City Of Love 3. Make It Easy 4. Owner Of A Lonely Heart 5. Rabin Piano Solo/And You And I 6. Where Will You Be? 7. I've Seen All Good People 8. Walls 9. Endless Dream
STEREO SOUNDBOARD RECORDING
Jon Anderson - Vocal Trevor Rabin - Guitars, Piano Chris Squire - Bass Tony Kaye - Keyboards Alan White - Drums Billy Sherwood – Guitars