今年11月の日本公演も近づいてきたYES。今回の目玉は、何とも言っても『海洋地形学の物語』でしょう。4曲の完全再現ではなく、「神の啓示→古代文明のLeaves Of Green→儀式」という抜粋形式ではありますが、いよいよもってあの幻想の大曲を生体験できる日が近づいてきたのです。正真正銘『海洋地形学』当時の貴重なオーディエンス・アルバムをご用意しました。本作が録音されたのは、“TALES FROM TOPOGRAPHIC OCEANS TOUR 1973-1974”の極初期となる「1973年11月18日ブリストル公演」です。このツアーは『海洋地形学』の完全演奏で歴史に名を残していますが、ツアーの全編で4曲丸ごと演奏していたわけではありません。良い機会ですので、ここでカンタンに整理してみましょう。
《1973年初秋:『海洋地形学の物語』完成》 ・1973年11月16日-12月10日:UKツアー(24公演)《1973年12月:『海洋地形学の物語』リリース》 ・1974年2月7日-28日:北米ツアー(前半21公演) ーここで「追憶」がセット落ちー ・1974年3月1日-25日:北米ツアー(後半22公演)
・1974年4月11日-23日:欧州ツアー(10公演) 《5月:リック・ウェイクマン脱退》
これが『海洋地形学』の完成からリック脱退までの足取りです。ツアーは大まかに「発売前のUK」「発売直後の北米」「欧州」の3つに分かれますが、『海洋地形学』全曲を演奏したのは「UK」と「北米の前半」だけ。おおよそ40回ほどあったと思われます。
※注:上記は大まかなもの。全日程の演目は判明していませんし、日程内でも全曲演奏ではない日もあります。
さて、肝心の本作に話を戻しましょう。本作が録音されたブリストル公演は「UKツアー」の中でも極初期にあたる3公演目。もちろん、『海洋地形学』が完全演奏されたライヴであり、その4曲を完全に録音した貴重な1本。残念ながらショウ冒頭の『危機』3曲は録音されませんでしたが、現存する最古の“生演奏・海洋地形学”録音なのです。なんとも貴重な録音ですが、本作のクオリティは貴重ぶりに似つかわしくない素晴らしいオーディエンス・サウンド。イントロの語りあたりでゴソゴソと機材を調整する音が入るものの、バンドが入るまでにはクリアに澄み渡り、やけにオンな楽音が流れ出る。さすがに70年代前半のヴィンテージ録音なので「まるでサウンドボード」とはいきませんが、楽音の太さ、クリアさはライン級。5人の演奏がクッキリと美しい名録音なのです。『海洋地形学』完全演奏はライン録音で残されていないだけに、ここまでのサウンドで聴けること自体がありがたい。先述のようにショウの完全録音ではないので、ツアーベストとは言えませんが、こと『海洋地形学』再現パートに関しては、指折りの名録音・名サウンドの1本なのです。そして、その演奏ぶりも素晴らしい。ツアー3公演目(=完全演奏3回目)でもあるからか“こなれた演奏”というわけではありませんが、逆に歴史的超大作に挑戦する緊張感が現場を支配。ツアー後には脱退してしまうリックにさえダレた感じがないのです。さらに、そんな超大作を目の当たりにする観客席にも緊張感が漂う。当時はまだアルバムも発売されておらず、いつ終わるとも知れない超大作の連続に観客の戸惑いも感じますが、だからこそ“静寂と演奏”が総てを埋め尽くしており、本作のクリアサウンドの一因にさえなっている。母国イギリス録音だというのに、まるで日本公演を聴いているかのようです。このライヴから43年後の11月、ついに日本で『海洋地形学』が演奏される。冒頭でお話しした通り、本作のような完全演奏ではないものの、この壮大な世界を生体験できるのです。その日まで、あと少し。
Live at Hippodrome Theatre, Bristol, UK 18th November 1973 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND
Disc 1
1. The Revealing Science Of God 2. The Remembering
Disc 2
1. The Ancient 2. Ritual 3. Heart Of The Sunrise 4. Roundabout
Jon Anderson - Vocals Steve Howe - Guitars Chris Squire – Bass Rick Wakeman - Keyboards Alan White - Drums