
ピンク・フロイドのライブ・サウンドが大転換期を図った1975年。彼らがそれまで作り出してきた浮遊感のあるサウンド・イメージから、無骨さすら感じさせるハードなロック・サウンドへと脱皮してみせました。まだ1974年まではかつてのイメージを辛うじて漂わせていましたが、翌年にアメリカを回った際には、ゴリゴリといってもおかしくないロックなフロイドへと豹変。そこには「The Dark Side Of The Moon」が大ヒットしたアメリカにおいて、スタジアム・クラスの会場でライブを行なわなければならない状況なども反映されていました。前年から投入された新曲「Raving And Drooling」はアメリカ・ツアーでサウンドの変化が如実に現れていていましたし、「Shine On You Crazy 」も長い曲が分断され、新たな曲が間に割って入ります。それが75年の新曲「Have A Cigar」だったのですが、パワー・コードで弾かれるギター・リフがもはやハードロックの域にまで進化していました。その結果が、当時制作が進行していたアルバム「Wish You Were Here」だったのです。フロイドがサウンドを大きく変化させた75年のアメリカ・ツアーは断続的なスケジュールで組まれ、6月まで続きました。このツアーは音質の恵まれたオーディエンス録音が多く、今回リリースされる4月に関しても当店リリースの「Arms Of Vancouver」や「Seattle Master Reels」など、ツアーの序盤から優良音源が居並んでいます。4月のツアー日程ではロス・アンジェルスにあるメモリアル・スポーツ・アリーナにおける五夜連続公演がハイライトとなりました。1975年上半期のLAはイギリスの大物アーティストが矢継ぎ早に訪れており、その状況は一人の若者をコンサート録音へと駆り立てました。彼の名はマイク・ミラード。今や泣く子も黙る70年代西海岸テーパーとして、今やマニアでなくともその名前が知れ渡るほど伝説的な存在です。ミラードは74年からコンサートのオーディエンス録音に目覚め、この年から本格的な録音活動を始めています。何しろ、75年の前半において彼が生み出した録音はどれも名音源ばかり。赤いジャケットでリリースしたZEPのLAフォーラム三公演、さらに7月にはローリング・ストーンズの同会場でのライブなど、マニアにはおなじみの音源ばかり。特にZEPの録音のクオリティは凄まじいものがあったのですが、それにひけを取らないウルトラ・レコーディングをミラードはフロイド4月のLA公演でも敢行してくれたのです。それが26日のモリアル・スポーツ・アリーナ。当店からも「Pink Millard」がリリースされて好評を博していたあの音源です。「Pink Millard」はSold Outとなって久しいことからも解るように、伝説のテーパーによって録音された75年4月のライブの名盤に君臨していました。しかし同タイトルは不自然さこそ感じさせなかったものの、リリース当時のサウンド・トレンドを意識したイコライズが施されていました。さらに演奏と無関係な部分を編集するなどして、三枚組ではなく、ディスク二枚組にまとめていたのです。それが結果として聴きやすいとの評判を得ていたものの、コアなマニアの間ではいくつかの欠点が指摘されてもいました。まずは先のイコライズ。よって、海外などにおいて、フロイドLA75のベストは今から十年以上前にリリースされた「The Late Great Millard Tapes」ではないか?という声も海外のマニアから聴かれたのです。しかし、今回は一切のイコライズ無しでミラードが録音してくれた音源そのままのピュアでナチュラルな状態のトランスファーを元に収録。これを聴いてしまうと「The Late Great~」ですら低音のブースト感が不自然に聴こえてしまうほど、ナチュラルで伸びやかな状態を実感してもらえるでしょう。ところが、それ以上に重要なのは「The Late Great~」にあった、冒頭の録音者による声が「Pink Millard」には欠けていたのです。録音者の声、つまりそれはマイク・ミラードの肉声ではありませんか?このタイトルがリリースされた当時、まだミラードと言えばZEPの神録音テーパーというイメージが強すぎ、フロイドやイエスで残してくれた偉業のインパクトを見過ごしてしまいました。その結果として、今では重要な瞬間となったミラードの肉声をカットしてしまったのです。彼はここでレコーダーにマイクをつなげてチェックしており、そのまったりとした声が何とも味わい深い!短い瞬間ではありますが、彼の肉声をお楽しみください(笑)。
そして何よりも、一か月前のZEPのLAフォーラム録音と双璧を成す、数多いミラード録音の中でも究極的にオンな音像とクリアネスの素晴らしさと言ったら…。最初のセットにおける新曲群の武骨な演奏はもちろん、「The Dark Side Of The Moon」セットやアンコールの「Echoes」までもハードに演奏する75年ならではのフロイド・サウンドの魅力をあますことなく捉えてくれた偉業にひれ伏してしまいそうです。ただし「Have A Cigar」と「Any Color You Like」で起きてしまった、テープチェンジが原因のカットも綺麗にアジャストしています。元々音源に恵まれた75年ツアーの中でもこれは絶対的に凄い!しかもアニマルズ・ツアーの頃と違って、大会場での演奏と観客の反応に神経質なロジャー・ウォーターズが第一部終了時のMCで表した不快感がまた何とも彼らしい。75年ツアーの中でも、ここまで聴きどころ満載な音源をミラードが最高峰レベルのクオリティで残してくれ、しかも自身の声まで残してしまった(笑)神録音のベスト・バージョンがリリースされます!
Live at Los Angeles Memorial Sports Arena, Los Angeles, CA. USA 26th April 1975 ULTIMATE SOUND
Disc 1 (63:12)
1. Mike Test 2. Intro. 3. Raving And Drooling 4. You Gotta Be Crazy 5. Shine On You Crazy Diamond Part 1-5 6. Have A Cigar 7. Shine On You Crazy Diamond Part 6-9
Disc 2 (56:49)
The Dark Side Of The Moon
1. Speak To Me 2. Breathe 3. On The Run 4. Time 5. Breathe(Reprise) 6. The Great Gig In The Sky 7. Money 8. Us And Them 9. Any Colour You Like 10. Brain Damage 11. Eclipse
Disc 3 (24:22)
1. Audience 2. Echoes