
山あり谷あり。それが1975年アメリカ・ツアーの千秋楽となったLAフォーラムにおけるZEPのステージングです。元々75年のアメリカ・ツアーはプラントの風邪とペイジが指を負傷という手負いの状況で敢行されていましたが、そうしたトラブルが収まって行われたツアーのセカンド・レグからZEPは調子をどんどん上げてゆきます。サウンドボード録音が有名なダラス辺りからその兆候がみられていたものですが、ロングビーチ・アリーナの二日目から突如として演奏のボルテージが飛躍的に向上し、そこから各人がいきいきと演奏するピークが続きます。この時期が75年の名演揃いであることはマニアならばよく知られているところで、そこにサウンドボード録音の発掘が続いたことでなおさら絶頂に達していたことを証明していたものです。こうした状況であればLA三公演もそのままの勢いで突っ走るのかと思われましたが、意外にもそうはなりませんでした(笑)。今や70年代のLAフォーラム=ZEPの名演確定といったイメージが強く、ブルーベリー・ヒルやエディといったアイテムがその普及に多大ななる貢献を果たしたことは間違いありません。しかし75年のLAフォーラムはそこまでの熱演が繰り広げられなかったことから、ZEPマニアの間でも思いのほか評価が芳しくないのです。そうしたイメージからブルーベリー・ヒルやエディほどアイテムが定着していなかったこともあるのではないでしょうか。しかし、そこまで印象が薄く映ってしまうのはロングビーチ二日目やシアトル二回のライブがあまりに抜きん出た内容であったからであり、LAも山あり谷ありで非常に面白い演奏内容となっている、それが事実でしょう。まずは初日、3月24日のライブです。この日は序盤の「Sick Again」のエンディングのタイミングがずれるというハプニングが早くも起きてしまったことからも解るように、それまで3月中盤からのライブにあった疾走感が鳴りを潜め、意外なほど慎重に演奏しようとしているかのように映っています。オフィシャル・サイトでこの日の客席から撮影された8mm映像が見られますが、ペイジはかなり激しいステージ・アクションを伴いながら弾いており、そこに集中するあまり、先のようなケアレス・ミスが起きてしまったのでしょう。なんとなくおっかなびっくりという雰囲気が当てはまるこの日の前半ですが、ペイジがスライドギターを弾く「In My Time Of Dying」で一気に演奏が激しくなります。つまり、77年のイケてない日にありがちな(例えば7月の各ライブ)、全体を通して精彩を欠いたライブということは断じてありません。むしろいつかの曲において、はっきりとわかるほど輝く瞬間が訪れるところが75年LA公演の面白いところなのです。この日最初の名演が「In My~」だったと言えるでしょう。 またシアトル辺りから「Dazed And Confused」が30分を超える長さにまで肥大し始めたのもこの時期の特徴で、それがLA三日間になると、すべての日で30分するという状況にまで進化しました。ところが、これらの展開は主に長い演奏の各セクションにおける「つなぎ」の部分をペイジが引き伸ばしている場合がほとんどであり、いつもよりもインプロビゼーションの駆け引きが長いという訳ではありません。それどころか、この日は演奏が始まってすぐにペイジのレスポールのチューニングが狂ってしまい(72年武道館の「Dazed And~」)もそうですが、この曲の序盤でトラブルが起きやすいですよね…)、演奏の合間でペイジは何とかチューニングしていますが、出鼻をくじかれてしまった感は否めません。こうした波のある一日ではありましたが、終盤になるとグループは一致団結。ペイジは「Stairway To Heaven」で文字通り燃え上がるかのようなフレーズを聞かせてくれるのですが、これは素晴らしい!また「Whole Lotta Love」で登場する「The Crunge」もロングビーチよりはるかにまとまりのある展開をみせています。やはりペイジにもまだまだ瞬発力があり、三日間で散見されたミストーンから立ち直るのが早く、ただプレイが粗くなってしまう状況には陥っていないのが75年ならではでしょう。そんな初日のスペクタクル・ショーを信じられないほどの高音質オーディエンス録音でキャッチしてみせたのがマイク・ミラード。今回のリリースを聴いてもらえれば解るかと思われますが、75年のLA三日間は彼が遺したZEP音源の中でも衝撃的な音圧を誇る録音状態です。中でも初日はペイジのギターの音が異様なほどリアルで、これはもはやサウンドボード・レベルと言っても過言ではありません。だからこそ、この日に彼が発してしまったミスタッチも生々しく捉えられているのですが、とにかく驚異的としか言いようがありません。しかしオーディエンス録音のマエストロ、ミラードもこの日が初日ということからでしょうか「Trampled Underfoot」の途中でテープの残りに気を取られてしまったと同時に、ボリュームが上がって音が割れてしまうというハプニングが起きています。恐らくはテープ交換の準備をしようとしてボリューム・レベルに触れてしまった、そんなところではないでしょうか。ここまで挙げてきた演奏上のミスが散見されつつ、結局はねじ伏せてしまうという75年のZEPらしいステージをミラードが驚きの音像で捉えた録音、それをJEMSがロージェネレーション・バージョンからトランスファーした最新かつ最良のバージョンがリリース決定しました。もちろん今回もミラード音源を忠実に封じ込めるのがリリースの目的です、オープニングの「Rock And Roll」を始めとしたカット箇所は補填していません。あくまでピュアなミラード・レコーディングをお楽しみください!
The Forum, Inglewood, CA. USA 24th March 1975 Mike Millard Unmarked 1st Gen Cassettes Transfer
Disc 1 (52:55)
1. Rock And Roll 2. Sick Again 3. Over The Hills And Far Away 4. In My Time Of Dying 5. The Song Remains The Same 6. The Rain Song 7. Kashmir
Disc 2 (57.11)
1. No Quarter 2. Trampled Underfoot 3. Moby Dick
Disc 3 (73:19)
1. Dazed And Confused 2. Stairway To Heaven 3. Whole Lotta Love 4. Black Dog 5. Heartbreaker