1963〜'65年、混迷する自由の国アメリカ合衆国。根強い黒人への人種差別とベトナム戦争・・。そんな時代の真っ只中、ウディ・ガスリー直系のプロテストソングを引っさげ登場。PPMのカバーで「風に吹かれて」がヒットすると、一躍フォーク界のプリンスとして脚光を浴びる事となるボブ・ディラン。キング牧師のもと差別撤廃へ向け公民権運動が未曾有の盛り上がりを見せる時代の荒波の中、「風に吹かれて」、「はげしい雨が降る」、「時代は変わる」と、ディランの書く曲は人々の心を揺さぶり続け、"モダン・フォークのプリンセス"ジョーン・バエズと共に、二人はこの時代のアイコンとなったのです。このCDには、ディランのそんな時代を象徴するフォークの祭典「ニューポート・フォーク・フェス」でのライヴをサウンドボード音源から72分にわたり収録。まず初の同フェス登場となった1963年、7/26の午後のワークショップ(今で言うミニ・ステージ)でのトーキングソング"North Country Blues"、そしてJ・バエズとのデュエットで反戦ソング「神が味方」。♪騎兵隊がインディアンを撃ち殺した時・・神は味方だったのだ。♪でも今、戦争を止めるだろう、もしも神が僕らの味方なら・・。ぶっきら棒なダミ声のディランと澄み切ったバエズの声は、惹かれ合いながらも決して交わる事のない唯一無二の奇跡のハーモニーを聞かせてくれます。精神分析医の診察室を舞台に核兵器の恐ろしさを語る「第3次世界大戦を語るブルース」、権力の前での個人の無力さを示す「しがない歩兵」そしてピート・シーガー、J・バエズ、ピーター・ポール&マリーらと当時まさに旬であった曲「風に吹かれて」のフーテナニー風の合唱が大団円。♪どれだけ弾丸が飛び交えば 気づくのだろう?余りに多く死に過ぎたと♪その答えは、友よ、風の中で舞っている続くは1年後の1964年。前年はあのまま歴史的な「ワシントン大行進」(初回版付属ボーナスDVD参照)に参加するなど、公民権運動の旗手・・プロテスト・フォークの急先鋒として時代に鋭い言葉を投げかけていたディランも、1年を経て既に心はプロテスト・ソングからビートニクやアルチュール・ランボー的な詩世界表現へと創作は向かいつつあり、ドラッグソングとも言われる「ミスター・タンブリン・マン」や、J・バエズとのデュエットも素晴らしい「自由の鐘」など、連続する韻、乱反射する歌詞イメージがフォーク音楽を新たな領域へ誘います。常に変化し続ける男、ディラン・ワールドに眩暈がしそうです。そう世界は、この時に気づくべきだったのです。翌年に起こる劇的な大変化を。1965年・・・。3回目の出演となる同フェス。既に黄色い声も混じる程の大スターとなっていたディランは、7/24の初日こそ「ラヴ・マイナス・ゼロ」などフォーキーな曲を大観衆の前で披露しますが、翌日の1965年7月25日に大きく歴史が動く事になります。約一ヶ月前の1965年6月中旬に"Like A Rolling Stone"をロックバンドをバックにレコーディングし終えたディラン。7月20日に発売になったばかりのこの新曲にディラン本人も相当手応えを感じていたのでしょう。ポール・バターフィールド・ブルース・バンドを母体にアル・クーパーをオルガンに迎えたバンドを従えて、ディランはエレキギターを抱えて颯爽と最終日のトリでステージに上がります。そこで立て続けに「マギーズ・ファーム」、「ライク・ア・ローリング・ストーン」と演奏を続けると、フォークの貴公子の予告もない突然のロック的演奏に対して観客のブーイングは大きく、ディランは不本意ながらもステージを降りる事となります。ディランのフォーク・ソングを聴きたい観客のブーイングは鳴り止まず、司会の取り成しでステージに再登壇したディランは、そこでアコギを抱えて弾き語りで2曲を歌います。「ミスター・タンブリン・マン」をEのキーで歌いたいディランは、持参していなかったハーモニカを観客に「誰かEのハーモニカを持ってないか?!」と要求し、実際ステージに投げ込まれたハーモニカがFだったので、その場でカポを付け直して、非常に珍しいキーFでの「ミスター・タンブリン・マン」を歌いステージを後にします。そしてこれがディランの最後のニューポート・フォーク・フェスティバルのステージとなるのです。(実際はこの37年後、再開された同フェスに2002年に出演します)実際は同フェスのステージではブルース・バンドなどエレクトリックの演奏も行われており、まさかここまでの騒動になるとは本人も予想していなかったでしょう。しかし音楽界では、この事件を引き金にしたかの様にフォーク・ロックが一大ブームとなっていきます。特に米国では、この1965年7月25日がロックンロールとブルース、フォークでもない「ロック」の生まれた日として後に永遠に記憶される日となるのです。若きディランがその才能を爆発させながら、感性と本能の赴くまま踏み込んでいった未踏の地平線。そんなフォークがロックがポップカルチャーが沸点となる瞬間を詰め込んだボブ・ディランのニューポート・フォーク・フェスティバルLIVE。3年越しのディランの足跡を辿るロードマップとも言える高音質ライヴ集。
72'15"
** 1963 **
01 North Country Blues 7/26 afternoon workshop 02 With God On Our Side with Joan Baez 7/26 afternoon workshop & 7/28 night performance 03 Talkin' World War III Blues 7/26 night performance 04 Who Killed Davey Moore? 7/26 night performance
05 Only a Pawn in Their Game 7/26 night performance 06 Blowin' in the Wind with Joan Baez PPM and etc 7/26 night performance
** 1964 **
07 Mr. Tambourine Man 7/24 afternoon workshop 08 It Ain't Me Babe with Joan Baez 7/24 night performance 09 With God On Our Side with Joan Baez 7/26 night performance 10 Chimes of Freedom 7/26 night performance
** 1965 **
11 Introduction 12 All I Really Want To Do 7/24 afternoon workshop 13 If You Gotta Go, Go Now 7/24 afternoon workshop 14 Love Minus Zero/No Limit 7/24 afternoon workshop 15 Maggie's Farm 7/25 night performance 16 Like a Rolling Stone 7/25 night performance 17 Booing 7/25 night performance
18 E-Harmonica 7/25 night performance 19 Mr Tambourine Man 7/25 night performance 20 It's All Over Now, Baby Blue 7/25 night performance
BOB DYLLAN - '63-'64 (PROSHOT/63mins)1DVD
1963〜'65年のニューポート・フォーク・フェスティバル音源をまとめたCDに同梱されるのは同時期、1963〜'64年のプロショット映像集です。ディラン初のTV出演として有名な"WBC-TV"でのモノクロの3曲のパフォーマンスは、フリー・ホィーリンのジャケットの頃の風貌のディランがアコギを高めに抱え、アゴを突き上げてウディ・ガスリー気取りで歌う姿が初々しく今見ても新鮮です。特にこの3曲、弾き語りの映像ですが実は番組オリジナルのバック演奏が付けられていてスタジオ版には存在しないベースなどが確認できる「風に吹かれて」や、「ホリス・ブラウンのバラード」など、この当時のディランのプロテスト魂がリアルに伝わる名番組です。そして歴史の大きなターニング・ポイント、公民権運動のピークでもある「ワシントン大行進」。1963年8月28日、あのマーチン・ルーサー・キング牧師の歴史的演説・・・I Have a Dream。「私は夢見ている。いつの日か奴隷所有者の息子達と奴隷の息子達が、兄弟愛という名の同じテーブルにつく事を」この名演説が説かれたあの場所、リンカーン記念堂の30万人の大観衆の前で、J・バエズが「勝利を我等に」を歌い、ピーター・ポール&マリーが「風に吹かれて」を歌いディランが「船が入ってくるとき」「しがない歩兵」を歌ったパフォーマンスをニュース映像からプロショット収録。当時のモノクロ画像は乱れもありますが、この歴史的イベントを最長版で収録しています。「ワシントン大行進」にディラン達が参加し大観衆の前で歌い、それが映像に残っている・・・。熱心な音楽ファンにも意外に知られていない映像を一挙に収録しています。ディランが「船が入ってくるとき」を歌いだすと、さっとかたわらに来て即興でハミングするバエズ。渡来する征服者を歌ったこの曲、もっとも大事な最後の2ヴァースになると、ハミングから歌詞のハーモニーに切り替えて歌うバエズの姿は、当時いかに彼女がディランの理解者だったのかが判る場面だと思えます。そしてキング牧師が歴史的なI Have a Dream演説をする同じ壇上、同じマイクで歌われる「しがない歩兵」。当時のディランやバエズ、そして時代背景などが体感できる本当に貴重な映像です。そして1964年、カナダTVから"QUEST"出演ライヴを収録。ファンには定番映像とも言える最初期の貴重なパフォーマンス。役者がポーカーを興じる部屋の中でディランが弾き語り、居合わせた酔客達が耳を向けるシチュエーションでのドラマ仕立てのライヴ番組。これも曲の心象風景を忠実に描いていて今見ても大変興味深い内容です。
[Folk Songs And More Songs, WBC TV, May 1963]
Opening BLOWIN' IN THE WIND MAN OF CONSTANT SORROW BALLAD OF HOLLIS BROWN
[March on Washington 1963,August 28]
MLK Interview WE SHALL OVERCOME /Joan Baez BLOWIN' IN THE WIND / Peter Paul & Mary IF I HAD A HAMMER / Peter Paul & Mary WHEN THE SHIP COMES IN ONLY A PAWN IN THEIR GAME KEEP YOUR EYES ON THE PRIZE (Hold On)/Len Chandler, Dylan, Baez.
[CBC-TV, Canada 1964]
THE TIMES THEY ARE A CHANGIN' TALKIN' WORLD WAR III BLUES THE LONESOME DEATH OF HATTIE CARROLL GIRL FROM THE NORTH COUNTRY A HARD RAIN'S A-GONNA FALL RESTLESS FAREWELL
[Steve Allen TV 1964]
THE LONESOME DEATH OF HATTIE CARROLL End Credits