
1973年のアメリカ・ツアーは二つのレグに分けて行われた長期ツアーだったこともあってか、とにかく音源が豊富で、サウンドボードからオーディエンス録音まで多くのショーで音源が発掘されています。先週もファースト・レグ終盤の名演である「ボン誕」の新たな決定版をリリースしたところ、瞬く間にSold Outとなってしまいました。「ボン誕」の人気が示したように、名演も数多く残されています。しかし73年アメリカ・ツアーにおいて、これほど隠れた名演かつ名音源という言葉がぴったりと当てはまるショーはないのではないでしょうか。それが今回リリースされる、7月7日に行われたシカゴ公演。73年のシカゴ・スタジアムと言えば、前日の公演があらゆる意味で有名なもの。セカンド・レグのスタートとなったこの日は音質の良いサウンドボード録音が残されてはいるものの、休み明け感が全開なプラントは絶不調。まったく声が出ていないボロボロぶりまでサウンドボードにしっかりとキャッチされてしまった。その点二日目のシカゴは21世紀に入って発掘された、比較的新しめなオーディエンス録音。「Celebration Day」の終盤を始めとして、いくつかのカットが演奏にまで及んでしまった点が惜しまれますが、音質はかなり上質なクオリティ。ショー前半は当日のPAバランスを反映したのか、ペイジのギターが目立つ迫力の音像。それでいてクリアネスがまた見事なもので、モノラル録音ながらも、73年アメリカのオーディエンス録音としては文句なしに上位へランクされるべきもの。おまけにビンテージな音源ながらも全編に渡ってピッチが正確という、驚くべき点も兼ね備えています。70年代のコンサートを捉えたオーディエンス録音は経年が合わさってピッチが狂いやすいことを考えると、いかに大切にテープが保管されていたかが伺えます。いくつかのカットが散見されつつも、ショー全体を録音した73年の新音源ということから、15年近く前に登場した際には二つのCDアイテムが作られています。しかし残念なことに、それらのアイテムは何かしらの欠点を抱えてしまったままリリースされてしまいます。「UNTOUCHABLE」はリリースされた当時の世相を反映したかのようなイコライズが施されてしまい、ナチュラルとは程遠い仕上がりとなっていました。一方「In The Windy City II」は過剰なイコライズこそ無かったものの、後で触れる「Misty Mountain Hop」から「Since I've Been Loving You」にかけてのハプニングが丸々カットされてしまうという謎の編集が惜しまれました。こうした不十分なアイテムしか存在しなかったことが災いしたからでしょうか、以降73シカゴ二日目のアイテムのリリースがプッツリ途絶えてしまい、この優良音源かつ名演が完全に見過ごされた状況となってしまうのです。あれだけ過去の音源のリリースが繰り返されてきたZEPライブ音源の中にあって、これは異例の事態だと言えるのではないでしょうか。つまり、決定版がリリースされないまま、ショー自体までもが見過ごされてしまったということ。73シカゴ二日目は驚くほどの音質の良さだけに留まらず、何よりも演奏が素晴らしい…プラントを除いては。彼に関してはこの日も相当に不調です。「Rock And Roll」からキーを下げまくった歌いぶりが痛々しい。何しろ音質が良いのでショー全体を通しても、この日のプラントが一進一退を続けながらシャウトしていた様子までリアルに伝わってきてしまうのです。もっとも極度の不調ぶりが際立っていた前日に比べると、それでもマシな状態ではあったのですが、後のボストンにおける不調などを予見させるものがあるのは事実。1973年のステージにおいて、こうした状態に陥るとペイジとボンゾがいつも以上に雰囲気するのはアメリカ以前のショーにおける様々な音源が証明してくれていたものです。そのジンクスがここでも再現されて、中でもペイジが乗りに乗った調子で弾いている様子はオープニングから歴然としている。「Rock And Roll」でもいつもと違ったボンゾとの駆け引きが登場してゾクゾクさせてくれます。そんな二人のやる気満々な調子とは裏腹に、「Over The Hills And Far Away」を始める前にジョンジーがベースのチューニングを初めてショーの流れを止めてしまうという呑気な場面が面白い。しかしこの曲のエンディングでもペイジはいつもより音数が多いフレーズを弾いており、相変わらずの好調ぶり。ところが「Misty Mountain Hop」から「Since I've Been Loving You」に移る際、ペイジは他の二人が演奏をブレイクさせていたにも関わらず、自身のソロを弾き始める代わりに「Misty Mountain~」のリフを一人だけ余計に弾いて取り残されてしまうという、非常に珍しい爆笑ハプニングが起きてしまったのです。これぞ「勢い余って」という言葉がピッタリと当てはまる場面でした。これは前半における聴きどころの一つとも言え、やはりそこをカットしては身も蓋もありません。そしてこの日最高の演奏が「Dazed And Confused」。不調のプラントをペイジとボンゾの二人がカバーしようとする73ヨーロッパの黄金パターンが強烈に蘇りました。イントロの時点からしてボンゾが73年アメリカにしては珍しいほどにちょっかいを出しまくっており、そこから「San Francisco」セクションを迎えるまでは彼とペイジの壮絶なインタープレイが繰り広げられます。この前半部分だけでも相当に強烈な印象を聴く者に与えてくれるのですが、弓弾きパートを終えてからの二人は、正に73ヨーロッパを彷彿とさせるスリリングな駆け引きを展開。中でもボンゾが繰り返すパッセージにペイジが合わせて二人のフレーズが重なる場面など、もはや鳥肌が立つほどの壮絶さ。73年アメリカ・ツアー、セカンド・レグにおける最高の「Dazed And~」だと断言いたしましょう。ショー終盤の「Whole Lotta Love」を終える時にペイジが「The Rover」風なフレーズを一瞬だけ弾いてみせるところなどがまたスリリング。73年アメリカ・ツアーにおいて、彼とボンゾがずば抜けた技巧を魅せた知られざる一日が久々に、しかも文句なしの決定盤としてリリースされます。とにかくこの日の「Dazed And Confused」壮絶な演奏を聴いてみてほしい。
Live at Chicago Stadium, Chicago, IL. USA 7th July 1973
Disc 1 (27:28)
1. Introduction 2. Rock and Roll 3. Celebration Day 4. Over the Hills and Far Away 5. Misty Mountain Hope 6. Since I've Been Loving You
Disc 2 (55:54)
1. No Quarter 2. The Song Remains the Same 3. The Rain Song 4. Dazed and Confused
Disc 3 (72:41)
1. Stairway to Heaven 2. Moby Dick 3. Heartbreaker 4. Whole Lotta Love 5. Communication Breakdown