
ZEPのライブ・アイテムがこうも魅力的であり続けるのは、演奏内容もさることながら、リリースされたアイテムに付けられたタイトルも大きな要因ではないでしょうか。「LISTEN TO THIS, EDDIE」や当店のWinstonバージョンの売り切れも記憶に新しい「LIVE ON BLUEBERRY HILL」など。実はこれらのタイトル、どちらも同一人物によって名付けられたのでした。後者はTMOQという伝説のレーベルがリリースした際に冠されたタイトルですが、エディーに関してもTMOQを運営していた人物がROCK SOLIDというレーベルから1980年代に同タイトルをリリースした際に名付けたもの。今週当店がリリースするのもいにしえのTMOQがリリースした古典的名作「BONZO’S BIRTHDAY PARTY」。ウイリアム・スタウトによって描かれた、TMOQの象徴である豚がバースデー・ケーキから飛び出すアルバム・カバーも強烈な名作。もちろんパッケージのインパクトだけでなく、このタイトルは1973年アメリカ・ツアーの素晴らしさをいち早く、しかも良好な音質のオーディエンス録音を使って伝えてくれたという点に偉大さがあるのです。5月31日の「BONZO’S BIRTHDAY」、6月3日の「THREE DAYS AFTER」、そして7月17日の「V1/2」はTMOQが生み出した73アメリカ・ツアー三羽烏でした。中でも「BONZO’S BIRTHDAY」はボンゾことジョン・ボーナムの誕生日ギグという大きなトピックがあり、他の二タイトルとはまた違った魅力を放った名盤であることに異論はないはず。今やビンテージと化したTMOQリリースに使われたオーディエンス録音のクオリティの高さも「BONZO’S BIRTHDAY」を名盤に昇格させた大きな要因でしょう。程よい距離感のある音像バランスに加え、何と言っても1973年のオーディエンス録音としては最高級と言っても過言ではないクリアネス。現在のようなPAアウトのサウンドボード録音の大量発掘など想像だにできない時代、代わりに全米を熱狂させた臨場感や73年ツアーにおけるZEPライブのダイナミズムを伝えてくれたのがTMOQ音源でした。ただしTMOQソースこと「recorder 1」はショー序盤と終盤が未収録な上にカットが多いという欠点が判明しています。最初から完全収録を前提としない、1973年当時の二枚組LPとしてリリースする分には問題なかったのでしょうが、これが大きな欠点であることに変わりはありません。そこでCDの時代に移った1990年代に入ると登場したのが「recorder 2」。まだ「Communication Breakdown」が未収録な上に「recorder 1」のクリアネスには及ばないものの、それでも1973年のオーディエンス録音としては上々。その点「recorder 3」は絵に書いたようなB級音質。古めかしい状態ですが、それでも「Communication Breakdown」がこれでしか聴かれないのだから仕方ない。90年代末になって発掘されたPAアウトのサウンドボード録音ですらこの曲が未収録ということで、現在に至るまで貴重な補填要員としてもてはやされていました。そのサウンドボード録音が発掘された衝撃もまた大きいものがありました。何しろ古くからマニアの間で親しまれてきたショーのサウンドボード録音となればなおさらでしょう。ただし同時期に発掘された73年アメリカのPAアウト・サウンドボードのジレンマに漏れず、ショーの完全収録からは程遠い状態。中でも肝心要なボンゾへの誕生日おめでとうシーンが未収録なのが致命傷。何しろこの手の音源はリリースを前提としないでスタッフが記録用に残したものなので、音源を出し惜しみしてるのではなく、本当に録音されていないのです。そしてこのショーを特別たらしめていたのは主人公たるボンゾ。誕生日ならではのハッスルぶりが愉快なことこの上ない。元々この日はペイジが指を怪我してしまったことのよって予定が変えられたショーであり、73年アメリカ・ツアーにしては珍しく余裕のあるスケジュールとなっています。そうした状況から、ショーの前半は5月のアメリカらしいまったりさがさらに押し出された雰囲気。それに加えてペイジの指が本調子でなかったことを考えれば致し方無いというもの。そんな彼も「The Song Remains The Same」辺りからの頑張りは素晴らしいものがあり、そこにバースデー・ハッスルのボンゾが加わって最高の演奏となったのが「Dazed And Confused」。そもそもこの曲には弓弾きコーナーという、ペイジの指に負担のかからないパートが(しかも長く)設けられている。そこで傷んだ指を休められたからこそ、後半が鬼気迫る展開となったのでしょう。数か月前のヨーロッパの時ともまた違ったスリル満点なインタープレイの応酬は壮絶の一言。ここで聴かれるジミーのフレーズとボンゾのリズムの駆け引きは5月のテイクの中でもずば抜けた出来を示しています。この日最大の名演パートがノーカットでサウンドボードに収められていたことは同音源における最大の魅力。TMOQ盤ではLPというメディアの制約上ディスクの片面で「Dazed And~」不完全に収録されていたことを考えると隔世の感があるというもの。しかもサウンドボード・パートに関してはマスターからのDATコピーという最良の状態にて収録。しかし今回のリリースの真骨頂はSBDの欠損部分や未収録部分における徹底的なアジャストにあります。中でもSBD最大の欠点である「Moby Dick」からの「Happy Birthday」未収録に関しては、各種オーディンス録音でも欠損が起きていることから緻密なアジャストを心がけました。結果として三つの音源が入れ替わりながらの完全収録となっていますが、ピッチや音量レベルなどのアジャストを入念に調整し、最後までストレスなく聴き通せるように仕上げており、その滑らかさだけでも過去最高だと断言いたしましょう。さらに「recorder 1」をもっとも補ってくれる「recorder 2」に関しても、「Stairway To Heaven」終演後のキュルル音などを敢えて削除せず、不自然な編集を省いているのです。これはマニアックな視点かもしれませんが、サウンドボードを含むすべての音源を駆使したベスト・バージョンとしての仕上がりを目指した結果としてこのような処理となりました。そう、1タイトルで事足りる「BONZO’S BIRTHDAY PARTY」。アンコール「The Ocean」などは演奏終了後も含め、もっとも高音質な「recorder 1」をギリギリまで生かした編集。おまけにこの日の演奏ですが、ボンゾが中間の「ラーラーラララーラ」をプラントとハモるだけに留まらず、終盤の「シュワップドゥビドゥビ」スキャットまで一緒にハモっているのが微笑ましくもレアで、これもまた誕生日ならではの光景かと。そしてラストの「Communication Breakdown」になるとガックリ音質が落ちてしまうものの、ペイジがありったけの力を振り絞って弾いてみせたようなソロが感動的。この名演がSBDや「recorder 1」で聴かれないのは本当に残念ですが、それでも一聴の価値がある場面と言えましょう。最後に5月31日の写真というのも近年に入って考証が確定しています。例えば懐かしのコンドル盤「FRACTURED LIBS」のジャケ写に使われていたのがその日。ボンゾはこの日、絞り染めのノースリーブという不思議なシャツを着ています。
The Forum, Inglewood, CA. USA 31st May 1973
Disc 1 (48:04)
01. Introduction 02. Rock and Roll 03. Celebration Day 04. Black Dog 05. Over the Hills and Far Away 06. Misty Mountain Hop 07. Since I've Been Loving You 08. No Quarter
Disc 2 (44:12)
01. MC 02. The Song Remains the Same 03. The Rain Song 04. Dazed and Confused
Disc 3 (65:58)
01. MC 02. Stairway to Heaven 03. Moby Dick 04. Happy Birthday Bonzo 05. Heartbreaker 06. Whole Lotta Love (incl. Let That Boy Boogie) 07. The Ocean 08. Communication Breakdown