
少なくとも、1973年までのZEPにとって聖地はLAフォーラムよりもマディソン・スクエア・ガーデンでした。その証拠に「永遠の詩」の舞台となった73年ツアー最終公演が同地だったのです。1969年を通して精力的にアメリカをツアーした甲斐があり、70年春のツアーでZEPはアメリカのアリーナを回るグループにまで成長を遂げました。春のアメリカでは3月に初めてのLAフォーラム公演が実現したのですが、これはあくまでもツアーの一環でしかなく、ZEPとしても同会場に対するスペシャルな感情を抱くには至りません。むしろグループとしても憧れていた会場がMSG。既にクリームやローリング・ストーンズといったビッグ・グループがライブを行っていたことで、同会場にはロックの殿堂たるステイタスが存在していたのです。1970年3月から4月にかけてのツアーは全米においてより大きな人気を獲得するに十分な役割を果たしました。そこですぐさま6月の27日にMSGで一日二回のショーを行うオファーが舞い込んできたのですが、これは一日のギグの為だけに(バンドの機材も含めて)渡米する費用の問題や、何よりも翌日に出演のオファーが来ていたバス・フェスティバルを優先したことでキャンセルとなってしまいます。逆に言えば、既にこの段階で9月のMSGフィナーレ・ショーのプランが出来上がっていたようなものでした。バス・フェスを終えた後はアルバム「III」の最終作業に時間を費やします。本来であればアルバムの完成とリリースをもって次のアメリカ・ツアーが開始されるべきではありましたが、凝ったデザインのアルバム・カバーの作業が難航したことで、リリースを待たずにツアーが開始されました。それが8月から9月にかけてのアメリカ・ツアー。まだアルバムがリリースされていないという状況だったにもかかわらず、このツアーはアメリカでの人気爆発を決定づける重要なツアーとなったのです。もちろん、別な意味でも重要なツアーとなりました。そう、あの名盤「LIVE ON BLUBERRY HILL」がリリースされたのです。その音質はもとより、信じられないほどハイエナジーなパフォーマンスを真空パックした上に、ここで初めてLAフォーラムでの名演を残したZEPの姿が記録されていたという点があまりにも大きい。ZEPのLAフォーラム伝説のスタート地点がそこにありました。しかし、このツアーではそれ以上に待たれていたニューヨークでのフィナーレが用意されていたのです。6月に実現できなかったMSGでの公演が遂に実現。これにはZEPのメンバーも自分たちの成功を自覚せずにはいられなかったはず。そうなれは、この日に限って一日二回公演の重労働も厭わない…間違いなくMSGのステージに上がれることを喜んでいたことでしょう。ただし69年ならまだしも、70年のZEPは一ステージの演奏時間が長くなっていましたので、一日二回のショーという形態からは卒業していたのです。例外的に9月6日のホノルル公演だけ一日二回が行われていました(当店が「HONOLULU 1970」でリリース済)が、そこでは数曲カットしたショート・セットによって二回のステージをこなしていましたが、ここMSGでは通常スケールのセットで二回のショーを行うというハードなもの。それを押してもMSGでZEPがショーを行うことに大きな意味があったことは簡単に想像できること。こうしてアメリカでビッグになったZEPが70年アメリカ・ツアーの千秋楽を飾るにふさわしいMSGフィナーレが実現した訳ですが、その全貌は意外にもベールに包まれていました。これは一重にアフタヌーン・ショーの音源だけしか流通していなかったことが大きい。おまけにイブニング・ショーの音源が発掘した現在だから解ることですが、やはりアフタヌーンは一回目のショーということもあり、力を温存気味。このショーだけを聴いたらブルーベリー・ヒルにはかないません。そんな温存ショーでありながらも、それでいてボルテージが余裕の高さを保っているところが1970年ZEPらしいところ。やはりオープニングからプラントのスクリーム・ボイスが炸裂していますし、前半のハイライトと呼べる「Bring It On Home」でのフットワーク抜群なペイジとボンゾの駆け引きは本当に素晴らしく、また「Since I've Been Loving You」のコンパクトにまとまった展開がお見事。この頃のペイジは本当にギター・プレイがなめらかですね。この回がイブニングと比べて大人しく映ってしまうもう一つの要因としては、ジミ・ヘンドリックスの訃報が挙げられるでしょう。この日二回のショーそれぞれにおいてプラントが哀悼の意を表しているのですが、この回で「What Is And What Should Never Be」の前に述べたコメントからは悲痛さすら感じられるほど。メンバー各人がジミ突然の死にショックを受けているであろう様子が伝わってくるのです。二回のショーはそれぞれが別のテーパーによって録音されたモノラル・オーディエンス録音なのですが、音像のオンな度合という点においてはこちらの方が上。さらに二種類の音源が存在しており、ショーの大半を占める「recorder 1」は周期的に音像が変わってしまうのが玉に瑕ではあるものの、ペイジのギターの音が生々しくも大きく捉えられた状態が魅力で、それがこの時代の彼の流麗なプレイをリアルに伝えてくれるのです。「Immigrant Song」と「Whole Lotta Love」以降に使われた「recorder 2」は「recorder 1」と比べて粗い音質ながらも余裕で聴き込めるレベル。イブニング・ショーが発掘されたのは2004年。ZEPの強烈すぎるハイ・ボルテージ・パフォーマンスはもちろん、オープニングから観客もアフタヌーンよりはるかにヒートアップした状態の凄まじいショーが世界中のマニアに大きな衝撃を与えたものです。これこそがMSGという大舞台に相応しいハイパー・パフォーマンス。それはもう、オープニングの「Immigrant Song」からしてプラントのスクリーム・レベルが段違い。それに何といっても凄まじいのが「Whole Lotta Love」以降のショー後半。まず同曲に挿入されたメドレー選曲からしてアフタヌーンとは別次元すぎる展開に唖然とさせられることでしょう。特に「Lawdy Miss Clawdy」以降はスクリーム全開のプラントがバンドをひっぱって怒涛の展開となり、挙句の果てにはオークランドに次いで「The Train Kept A Rollin'」が始まるという強烈さ。それにしても久しく演奏していなかった曲な割に、プラントが歌い始めるとメンバーがあっという間に演奏を合わせてくるのは、やはり69年に何度も演奏して体が曲を覚えているからでしょうか。イブニング・ショーの発掘によってもたらされたもう一つの衝撃は「Out On The Tiles」二つ目のライブ・テイクの登場でしょう。かのブルーベリー・ヒルことLAでの演奏が唯一だと思われていましたが、そこでの演奏と違いプラントが全編通してシャウトで歌っている点がまた衝撃的。とどめは「Communication Breakdown」へと雪崩れ込み、この曲の中でプラントが「Gallows Pole」歌い始める…もう凄すぎます。70年のZEPはスペシャルなステージに限ってアンコールで単体のオールディーズ・メドレーを披露していますが、ロイヤル・アルバート・ホールやバス・フェスの時がそうだったように、ここでもリトル・リチャードの曲、今回は「Girl Can’t Help It」から始まるオールディーズ・メドレーを披露。ただしアドリブ気味な演奏に乗ってプラントが歌っており、最後はあっけなく終わってしまいます。それでもまだ体力が有り余っている70年のZEPらしいところで、フィナーレはバス・フェスでの演奏を最後としてレギュラー・レパートリーの座から落ちていた「How Many More Times」を復活させて長い一日を締めくくっています。この曲の途中で「Blueberry Hill」が演奏されているのも衝撃的な展開でした。イブニング・ショーの音源は久々に登場したZEPビンテージ・ライブ期の音源ということから2004年の登場時には数多くのアイテムを生み出したものですが、当時の時代背景が反映されて大なり小なりイコライズが施されたアイテムばかり。その中には原音とかけ離れた仕上がりも少なくなかった。そこで今回はマニアにイブニング音源のベストと称されたファン制作の「One More For Road」バージョンを元に、余計なイコライズを施さず、特にライブの中盤以降でランダムに狂っていたピッチを丁寧にアジャストしています。これによって過去のアイテムより格段に正確な状態での再生を可能としました。アフタヌーンに関してはマニアに最も評価の高かったEddie Edwardsバージョンを収録。二種類の音源の編集センスによってベストとされていたもので、こちらも放置されていた「Communication Breakdown」におけるピッチの狂いをアジャスト。そして今回の限定のプレスCDリリースに相応しく、どちらも非常にナチュラルな状態での収録が実現しているという点で1970年MSG二ショーのベスト・バージョンと呼べる仕上がりであることを断言します。何しろ二回のショーの雰囲気がまるで違うので、是非とも聴き比べをベストな状態のリリースにて楽しんでください。
Madison Square Garden, New York, NY. USA 19th September 1970 Afternoon & Evening Show
Afternoon show
Disc 1 (68:37)
1. Introduction 2. Immigrant Song 3. Heartbreaker 4. Dazed and Confused 5. Bring It On Home 6. That's Way 7. Bron-Yr-Aur 8. Since I've Been Loving You 9. Organ Solo 10. Thank You
Disc 2 (43:28)
1. What Is and What Should Never Be 2. Moby Dick 3. Whole Lotta Love (medley incl. Let That Boy Boogie, For What It's Worth, Honey Bee) 4. Communication Breakdown
Evening Show
Disc 3 (70:28)
1. Introduction 2. Immigrant Song 3. Heartbreaker 4. Dazed and Confused 5. Bring It On Home 6. That's Way 7. Bron-Yr-Aur 8. Since I've Been Loving You 9. Organ Solo 10. Thank You
Disc 4 (74:36)
1. What Is and What Should Never Be 2. Moby Dick 3. Whole Lotta Love (medley incl. Let That Boy Boogie, Dust My Broom, Bottle Up and Go, Lawdy Miss Clawdy, Some Other Guy, Train Kept a Rollin', I'm a King Bee, Baby Don't You Want To Go, C.C. Rider)
4. Out On The Tiles 5. Communication Breakdown (incl. Gallows Pole) 6. The Girl Can't help It (medley incl. Talking About You, Twenty Flight Rock) 7. How Many More Times (medley incl. Cadillac, Blueberry Hill)
IMPORT TITLE