
その正体については、今まさに世界中のマニアの間で激論が交わされている真っ最中なために断言できません。しかし、恐らくは(生中継だったとも言われる)初回放送のエアチェック・マスターという説が有力になっています。本作は、その新発掘マスターをマスタリングしたもの。もちろん、マスター本来の“鳴り”には一切手を加えず、ネットで出回っているマスターはわずかに狂っていたピッチを正確に整え、「I Ain't Got You」と「Mother Popcorn」間にあったギャップ重複音を整理しただけ。あくまでも「ライヴそのもの」に近づけた止まりであり、それ以外はまったく手を付けていない“発掘音”そのものをお楽しみ頂けます。そのクオリティは、正しく特級のステレオ・サウンドボード。本来、ローカル・バンドには到底許されないはずの美麗・ド直結ぶり。しかも、44年の時間を超えたとは信じがたいフレッシュなマスタ?・サウンドがたっぷりと聴けるのです。耳を澄ましていると「あ、マスターが変わったな」と気づく。それがまた“放送違い”の分析ポイントにもなりますが、本作は一貫録音のためになんの引っかかりもなく当時の“空気”・“匂い”に浸りきれるのです。その“匂い”の主が1973年のAEROSMITHだからこそ、凄い。若々しくも濃厚に汗臭いサウンドがスピーカーから飛び出し、部屋中に充満する。当時はデビュー直後でもあり、ロックの怪物もまだ無名。それにも関わらず、ラジオからいきなりこんな激熱ロックが流れてくるのですから、さぞや当時のリスナーはビビッたことでしょう……。ライヴアルバムは時空を超えた旅を味わわせてくれますが、本作はライヴの現場だけでなく、44年前のアメリカの日常へも連れて行ってくれるラジオアルバムなのです。本作から発散される1973年の薫りは、すなわち歴史的発掘という事件が起きた2017年の薫りでもある。そんな“今”を味わい尽くす1枚。
Live at Paul's Mall, Boston, MA. USA 20th March 1973 (50:05)
1. Make It 2. One Way Street 3. Somebody 4. Write Me A Letter 5. I Ain't Got You 6. Mother Popcorn 7. Movin' Out 8. Walkin' The Dog 9. Train Kept A Rollin' 10. Mama Kin