
英国ロックの矜持を刻んだ最後の名盤『SLIDE IT IN (UK MIX)』。その極上デモ・トラックを伝説の“コージー・テープ”から復刻したスタジオ・アルバムが登場です。本作に収められている音源は3種類。『SLIDE IT IN (UK MIX)』のバッキング・トラック5曲分と、歌入りデモ・トラック4曲分。それにアナログ・シングルでリリースされつつ、現在まで公式デジタル化されていない“エディ・クレイマーMIX”2曲です。デモ・テイクというとライヴ以上にピンキリなものですが、本作は「ピン」の方。それも、超の付く極上テイクです。それもそのはず、本作の大元となっているのは故コージー・パウエルが所有していたオリジナル・カセット。いわゆる“コージー・テープ”なのです。実のところ、バッキング・トラックは『PRODUCTION REHEARSALS』、デモ・トラックは『ROCK IN ’85』でディスク化されていた音源。しかし、いずれも10年以上も前にとっくに完売・廃盤でもあり、復刻のリクエストも寄せられてきました。そこで、今回は“コージー・テープ”現物から改めてデジタル化しなおし、「2017年・最良版」として仕上げました。そのクオリティは、そんじょそこらのデモ・アルバムとは次元の違うもの。特に、冒頭5曲のバッキング・トラックはオフィシャル・アルバムにもまったく劣らない超・美麗サウンド。上記のLangley盤も当時の技術を駆使したデジタル化でしたので、見違えるような違いはありませんが、“コージー・テープ”が吸い込んでいたサウンドを機微に至るまで最大限に封じ込めました。そのサウンドで蘇るのは、まさしく名盤『SLIDE IT IN (UK MIX)』の魂。先ほどからさり気なく「UK MIX」を付けていますが、ここが究めて重要なのです。今さらの話ではありますが、『SLIDE IT IN』についてカンタンにおさらいしておきましょう。 『SLIDE IT IN』には、公式に3種類のミックスが存在します。第1は先行シングル(2曲)のみの「エディ・クレイマーMIX」。第2に、当時の欧州・日本でリリースされた「UK MIX」、第3がジョン・サイクス(一部)とニール・マーレイ(全部)が差し替えた「US REMIX」です。現在、世界的にデフォルトになっているのは「US REMIX」なのですが、これは一度完成した「UK MIX」にレコード会社が難癖を付け、カヴァデールやギャレイといった主要メンバー不在で改造したもの。しかも、差し替えにわずか10日間(!)しかなく、リミックスを担当したキース・オルセンが作業中に急病。その結果、サイクスのギターも中途半端で派手なオブリは美味しいものの、チグハグな作品になってしまいました。それ以上に致命的なのがニールのベース。もちろん、ニールは名手中の名手ですが「US REMIX」では彼らしからぬほど無難で没個性。恐らくは、完成したトラックに差し込む不自由さが原因だとは思いますが……。ともあれ、『SLAVES AND MASTERS』のイアン・ペイスばりに「?」が浮かぶ仕上がりでした。それに対し、オリジナルの「UK MIX」は鉄壁。英国ロックの歴戦メンバーが思い描いたビジョン通りに作られており、彼らが目指したブルース・ロックがきっちりとカタチになっている。本作はその制作過程であり、「UK MIX」本来の旨みを再発見するのに最高の1枚なのです。特に素晴らしいのは、冒頭のバッキング・トラック。言ってしまえば、歌なしのカラオケ・トラックなのですが、そこから滲み出すリズム隊の旨みが最高! 単にパワフルなのではないコージーのドラムパターンが詳細に伝わり、そこに挑みかかるようなホジキンソンのベースがゴリゴリと唸る。そもそも、コージーはあまりに強烈な個性的でベースの存在感をかき消してしまいかねないドラマー。にも関わらず、それにピタッと合わせながら「俺のベースを聴け!」と言わんばかりの存在感を醸すホジキンソンはただ者ではない。人間的にはソリの合わなかった2人ではありますが、だからこその鋭い鬩ぎ合いがビビッドに浮き立つリズム・トラックなのです。その一方で、カヴァデールの歌も入ったデモ・トラックは、言わば「SLIDE IT INの別バージョン」。グッと完成形に近づきつつ、仮歌の荒っぽさがスタジオライヴ的でなんともイイ感じ。ここでもリズム隊が強調されたラフミックスになっており、オリジナル・ビートの自然なワイルド感が全開なのです。更に「別バージョン」感溢れるのが、最後に収録された「エディ・クレイマーMIX」の2曲「Guilty Of Love」と「Gambler」。これは“MONSTERS OF ROCK 1983”出演に際してリリースされたシングル『GUILTY OF LOVE』のテイクでして、当時はまだ『SLIDE IT IN』は制作中で、プロデューサーもエディ・クレイマー。その後、マーティン・バーチに交代して完成させるわけですが、この2曲はその前に公になった“クレイマー”段階なのです。現在に至るまで公式にデジタル化されたことがない。本作は極上コンディションのアナログ・シングルから精緻に復刻いたしました。本作は、ただのデモではありません。GEFFENレコードによって塗り替えられる前の“純英国のブルース・ロック”。その最後の大傑作である『SLIDE IT IN (UK MIX)』の旨みを濃縮還元したようなスタジオ・アルバムなのです。「US REMIX」を初めて聴いたとき、カヴァデールやギャレイは「最低だ。英国の魂が消えている!」と激怒したそうですが、その“魂”とは何だったのか。その正体を“コージー・テープ”が証言する極上盤です。「US REMIX」に違和感を覚えた方にはもちろんお薦めですが、逆にあまり違いを感じなかった方でも、本作の後に「UK MIX」を聴けばカヴァデールやギャレイの怒りにも「そういう事だったのか」と得心されることでしょう。その後、カヴァデールは改心?して「US REMIX」のファンになり、WHITESNAKE自身も変わった。そして、二度と戻ることのなかった“英国ブルース・ロックの魂”を丸裸にした1枚。どうぞ、史上最高峰クオリティで存分にお楽しみください。
Taken from the original cassette tape (TDK SA-X60) belonged to Cozy Powell (45:12)
Backing Tracks Demos Recorded at Musicland Studios, Munich, Germany May 1983
1. Spit It Out 2. Give Me More Time 3. Slide It In 4. Standing In The Shadow 5. Slow An' Easy
Demo Tracks with David Coverdale
6. All Or Nothing 7. Hungry For Love 8. Spit It Out 9. Slide It In
Bonus Tracks Eddie Kramer Mix 1983
10. Guilty Of Love 11. Gambler
David Coverdale - Vocals Mel Galley - Guitar, Vocals Micky Moody - Guitar, Vocals
Jon Lord - Keyboards Colin Hodgkinson - Bass Cozy Powell - Drums