
スラッシュ四天王の中でもコアな2強、“SLAYER+ANTHRAX”。その両雄をカップリングした強力ライヴアルバムが登場です。2010年の“THE BIG 4”プロジェクト以来、競演の機会も増えた両雄ですが、本作は他とはワケが違う特別中の特別。なんと「同じ日+同じドラマー」という貴重なライヴセットなのです。いきなり「???」と思われるかも知れません。順を追ってご説明していきましょう。
【不運が呼んだ激レアなショウ】
事の起こりは、2012年にチャーリー・ベナンテを襲った不運でした。2月には母親を病気で亡くし、7月には逮捕されて裁判沙汰になり、さらには手や頭を負傷。そうしたゴタゴタでライヴに参加できない事が増え、2013年2月に予定されていたSLAYERとのオーストラリア・ツアーにも不参加となったのです。その際に代打で選ばれたのが、ジョン・デッテ。彼はTESTAMENTの『LIVE AT THE FILLMORE』にも参加し、90年代半ばにはSLAYERの正式メンバーでもあった人物。なかなかレコーディングの機会に恵まれないために無名ですが、業界では知る人ぞ知る実力者でした。そこで次に不運が襲ったのはSLAYER。2013年2月になってビジネス面で不満を持っていたデイヴ・ロンバードが突如ツアーを拒否。そのまま脱退してしまうのです。その2013年2月とは、オーストラリア・ツアーの当月。もちろん、SLAYERの難曲をこなせるほどのドラマーのスケジュールがそうそう空いているわけもなく、曲を覚えるヒマもない。そこで、目を付けられたのがANTHRAXで同行することになっていたジョン・デッテ。先述の通り、彼はかつてSLAYERの正式メンバーで曲を覚えており、ツアーの競演バンドですからスケジュールもぴったり。急遽、デッテがANTHRAXとSLAYERの両方でドラムを叩くことになったのです。ここで、そんなオーストラリア・ツアーの概要もご紹介しておきましょう。
・2013年2月23日:ブリスベン“SOUNDWAVE 2013” ・2013年2月24日:シドニー “SOUNDWAVE 2013” ・2013年2月25日:シドニー 【本作】 ・2013年3月1日:メルボルン“SOUNDWAVE 2013” ・2013年3月2日:アデレード“SOUNDWAVE 2013” ・2013年3月4日:パース“SOUNDWAVE 2013”
以上、6公演。他にANTHRAX単独も2公演ほどありましたが、SLAYERとANTHRAXがダブル出演はこれで全部。四天王の長い歴史上、2つのバンドで演奏したメンバーは何人かいますが「同日・同じメンバー」だったのは、この6公演だけ。そのうち、本作に収められているのは「2013年2月25日シドニー公演」。このほとんどは野外フェス“SOUNDWAVE FESTIVAL 2013”でしたが、本作の「2月25日」だけは“SIDEWAVE”と呼ばれる番外的な屋内公演でした。
【クオリティも極上のライヴアルバム】
そんな本作は、クオリティも絶品。事実としては喝采も生々しいオーディエンス録音なのですが、その骨太&肉厚な楽音は「まるでサウンドボード」と呼ぶに相応しい。会場音響がほとんどないクリアっぷりも素晴らしければ、五臓に響き、六腑を揺さぶる低音の図太さも凄い。上記のように、奇跡のショウは6公演あったわけですが、屋内公演だったのが幸いしたのでしょう。激レア6公演でも最高峰となるライヴアルバムなのです。そのサウンドで描かれるショウこそが、ド肝を抜く素晴らしさ。当時はゲイリー・ホルトやジョナサン・ドネイズが注目されました(この時は2人とも代役扱いで、後に正式加入)が、やはり驚きはジョン・デッテ。名手中の名手、英雄中の英雄である2人“ベナンテ&ロンバード”の代役というだけでも凄まじい重責なのに、それを感じさせない見事すぎるドラミングを見せつける。手技・足技ともに不足なしなのですが、特に凄いのはバスドラ。90年代にSLAYERのメンバーだった頃「強風の野外フェスで綺麗に揃ったバスドラ連打だけが聞こえた」という伝説がありましたが、それも納得の大連打。ダラララララララララ……と、綺麗に粒が揃っていて速く、永遠に続くかと思うほど。中でも「Jesus Saves」「Angel Of Death」の凄まじさと言ったら(もしかしたらポール・ボスタフよりも凄い!?!?)。これだけ凄まじい技術を持ちながら、なぜ未だにデッテがマイナーなのか……まったく信じられません(ANTHRAXでも「Milk (Ode to Billy)」をやってほしかった……)。もちろん、それが克明に突きつけられるほど、本作のサウンドも凄まじいのです。単に四天王の2組が強力サウンドで聴けるだけでも素晴らしいのですが、さらに幻のメンバー:ジョン・デッテまで上乗せ。スラッシュの歴史がいかに長く、世界がいくら広くとも、こんな激レア・苛烈なライヴアルバムは本作しかありません。クオリティ・貴重度は間違いなく永久保存プレス級ながら、さすがにジョン・デッテの存在はマニアックすぎる。だからこそ、1人でも多くの方にデッテの凄さを知っていただきたい。
Live at Luna Park Big Top, Sydney, Australia 25th February 2013 PERFECT/TRULY PERFECT SOUND
Disc 1 (74:43)
ANTHRAX
1. Worship/Caught In A Mosh 2. Fight 'Em Till You Can't 3. Antisocial 4. Indians 5. Hymn I/In The End 6. Deathrider 7. T.N.T. 8. I Am The Law
Joey Belladonna - Vocals Scott Ian - Rhythm Guitar, Backing Vocals Jon Donais - Lead Guitar Frank Bello - Bass Jon Dette - Drums
SLAYER
9. World Painted Blood 10. War Ensemble 11. Die By The Sword 12. Chemical Warfare 13. Spirit In Black
Disc 2 (63:15)
1. Bloodline 2. Disciple 3. Payback 4. Mandatory Suicide 5. Altar Of Sacrifice 6. Jesus Saves 7. Seasons In The Abyss 8. Hell Awaits 9. Postmortem 10. Angel Of Death 11. South Of Heaven 12. Hate Worldwide 13. Dead Skin Mask 14. Raining Blood