
『嵐の使者』時代の貴重なライヴアルバムが登場です。この時代はオフィシャル盤『MADE IN EUROPE』『MK III: THE FINAL CONCERTS』でも有名ですが、本作はそれよりも少し前。「1974年11月20日ロングビーチ公演」のオーディエンス・アルバムです。まずは、短かった“STORMBRINGER TOUR 1974-1975”全体の概要から俯瞰してみましょう。
《1974年11月『嵐の使者』発売》・1974年11月-12月:北米(19公演)←★ココ★・1975年1月25日:豪州(1公演)《1975年2-3月『銀嶺の覇者』制作》・1975年3月-4月:欧州(12公演)《リッチー・ブラックモア脱退》
以上、全32公演。ひと口に“STORMBRINGER TOUR 1974-1975”と言うと2年に渡る巨大なワールドツアーを想像してしまいますが、実態は極少数のショウだけ。本作のロングビーチ公演は、その5公演目。『嵐の使者』のリリースから4日後となるコンサートでした。 そんなショウを記録した本作はアンコールが未収録の上、「Burn」後半などテープ残量を気にしたようなカットもある不完全版。しかし、それだけでも異様に貴重な録音のすべてなのです。実のところ、「STORMBRINGER TOUR:1974年編」は、これまで長らく“歴史の闇”だったのです。何しろ、これだけ短いツアーですから記録自体が少なく、出てきてもほとんどがリッチー・ブラックモア最末期の「1975年」録音ばかり。“STORMBRINGER TOUR”の1974年と言うと、これまでミルウォーキー公演くらいしかなかった。本作は、そんな歴史の闇を晴らすライヴアルバムなのです。単に貴重なだけでなく、本作はクオリティも素晴らしいヴィンテージ・オーディエンス。もちろん、「まるでサウンドボード」と呼べるタイプではないのですが、70年代にしては見事なほど逞しい楽音が真っ直ぐ届き、ノイズや歪みも見当たらないクリア・サウンド。しかも、マスター鮮度も素晴らしく、ダビングや経年による劣化がほとんど感じられません。そのクリアさは、各楽器の鮮やかな分離感からも実感できる。4人の楽器隊+2人のヴォーカルが総がかりの熱演を炸裂させても綺麗に分かれて聞こえ、グレン・ヒューズのゴリゴリした感触が1粒までハッキリ。録音環境は知る由もありませんが、オーディエンス・ノイズもほとんどない。リッチーはピアニッシモでつま弾いても、その機微に至るまで鮮明に聞こえる……そんな繊細な録音なのです。そのサウンドで描かれる「STORMBRINGER TOUR:1974年編」がまた素晴らしい。あの伝説のカリフォルニアジャムから約半年、再びアメリカに戻ってきたDEEP PURPLEは勢いも自信もたっぷり。リッチーには何かと不満もあったわけですが、一度ステージに上がってしまえば何をやっても上手くいく大成功期の輝きに満ちている。さらに耳を惹くのは新曲「Stormbringer」「The Gypsy」「Lady Double Dealer」。現在までに残る最初期のライヴパフォーマンスなわけですが、そのせいもあってか丁寧で熱い演奏ぶり。第2期のような爆発力とはまたひと味違っていながらフレッシュな演奏がたっぷり味わえるのです。ここにいるのは、ロニー・ジェイムズ・ディオとのセッションを経験する前のリッチー・ブラックモア。運命が変わるとも知らず、“DEEP PURPLEのギタリスト”以外の何者でもなかった時代の最後期を伝える貴重なライヴアルバムです。
Live at Long Beach Arena, Long Beach, CA. USA 20th November 1974 (58:51)
1. Intro 2. Burn 3. Stormbringer 4. The Gypsy 5. Lady Double Dealer 6. Mistreated 7. Smoke On The Water 8. You Fool No One