
BLACK SABBATHが世界に羽ばたいた1970年。その秘宝リール・マスターが登場です。本作に収められているのは「1970年11月7日ポートランド公演」。その現場を体験させてくれる極上オーディエンス録音です。1970年と言えば、歴史的な大名盤『BLACK SABBATH』『PARANOID』が発売され、『MASTER OF REALITY』も制作された革命の年。そのうち、本作は“PARANOID TOUR”の一幕です。まずは、サバス初のワールドツアーからショウのポジションをイメージしてみましょう。
【1970年】《9月18日『PARANOID(UK)』発売》・9月11日-10月26日:欧州#1(25公演)・10月30日-11月28日:北米#1(30公演)←★ココ★・11月29日-12月20日:欧州#2(8公演)【1971年】《1月1日『PARANOID(US)』発売》・1月7日-23日:欧州#3(11公演)・1月31日:MYPONGA POP FESTIVAL出演
《2月5日『MASTER OF REALITY』制作開始》・2月6日-4月4日:オランダ+北米#2(39公演)・4月14日-26日:欧州#4(11公演)
これが“PARANOID TOUR”の概要。『VOL.4』以降は「アルバム制作→ツアー」のローテーションが整いますが、この頃はツアーの最中にも絶え間なくアルバムを作る忙しないスケジュール。そのうち「北米#1」は、サバス初のアメリカ・ツアーでもあり、本作のポートランド公演はその5公演目にあたるコンサートでした。そんな初々しさ溢れる本作は、極めて素晴らしいヴィンテージ・オーディエンス。1970年というと、デビューから間もない事もあってオーディエンス録音は極少。しかも、そのほとんどが厳しいクオリティの物ばかりです。しかし、そんな中で本作は貴重すぎる例外。近年になって発掘されたマスター・リールからダイレクトにデジタル化されており、その鮮度は究極的。わずかに空間感覚があるためサウンドボード間違えこそしませんが、真っ直ぐに届く演奏音は極めて端正で、どこまでもクリア。骨太な芯が逞しく、ダビング痕のまるでない肉厚の鳴りも美しい。そして何よりも艶やか。ヴィンテージならではの琥珀色のサウンドでありながら、その艶がノイズに汚されずたっぷりと流れ出るのです。しかも、その演奏や歌声を邪魔するものが何もない。アメリカ大陸上陸から5公演目ということもあってか、まだまだ熱狂を巻き起こすほどの人気には至らず、オーディエンス・ノイズもほとんど気にならない。名盤『PARANOID』を創り上げたバンド・ポテンシャルを隅々まで味わう事ができるのです。まさに奇跡としか言いようのないマスター・リールだけに、その発掘には世界中のマニアが驚喜。これまで“PARANOID TOUR”のベスト・オーディエンスだった『ETERNAL VOID OF DOOM: THE LEGENDARY MASTER』と並ぶ傑作と絶賛を受けました。しかし、奇跡的ではあっても完璧ではなかった。「War Pigs」「Fairies Wear Boots」にテープチェンジがあり、全体的に音量が不安定。さらに致命的だったのはラストの「Fairies Wear Boots」。それまでの艶やかさが損なわれ、ブツブツとしたノイズが入っていたのです(逆に言えば、欠点があっても“ベスト”と言われるほど基本クオリティが高いのですが)。そこで、本作は奇跡のリール・サウンドをさらに細心マスタリングでブラッシュ・アップ。もちろん、見目麗しいヴィンテージの鳴りを損なうような無粋なマネはせず、正確なピッチも当たり前。その上で不安定な音量を(不自然にならない範囲内で)可能な限り補正し、「Fairies Wear Boots」のブツブツしたノイズも徹底的に修正しました。さすがにテープチェンジの欠けは如何ともし難いものの、貴重な1970年の薫りに約46分間、心ゆくまで浸りきれるライヴアルバムに仕上げました。そのサウンドで描かれるショウの素晴らしさは、言葉を失う。先述した通り、この「北米#1」は彼らにとって初のアメリカ・ツアー。初めて体験する新大陸の文化に圧倒されつつ、若干21歳のオジー・オズボーンが吠え、22歳のアイオミが革命的なヘヴィ・リフを轟かせる。その若々しい勢いはドラッグで倍加されながらも破綻を起こさず、凄まじい混沌を紡ぎ出す。彼らのアメリカ・ツアーは冒頭の数公演が噂となって全米を駆け巡り、終盤には凄まじい人気となっていった。本作は、そんな“噂”を引き起こした現場。古今無象のヘヴィ・サウンドに圧倒される観客の息吹もリアルな1970年のドキュメントなのです。とにもかくにも、1970年の極上ヴィンテージ・サウンドが美味すぎる1枚。欠点があってもツアー・ベストと呼ばれた超・名録音を磨き上げ、史上最高峰クオリティに引き上げたライヴアルバムの大傑作です。これまで1970年のハイクオリティ録音と言えばサウンドボードしかなく、現場の本生100%体験はできませんでした。しかし、その歯がゆさも本作で終止符。ブリュッセル公演(かつてパリ70と呼ばれていたもの)にも匹敵するサウンドでありながら、現場に立つ臨場感も絶大な1本。まさに“英国ロックの歴史遺産”以外の何物でもない銘品中の銘品。
Sullivan Gymnasium, University Of Southern Maine, Portland, ME. USA 7th November 1970 (46:09)
01. Intro 02. Paranoid 03. N.I.B. 04. War Pigs 05. Behind The Wall Of Sleep 06. Iron Man 07. Hand Of Doom 08. Fairies Wear Boots