伝説のコージー・カセットに吹き込まれていた1983年の超絶ステレオ・サウンドボード。その究極仕様となる決定盤が登場です。コージー・カセットに封じ込まれていたのは「1983年2月22日:日本武道館」公演。その卓直結サウンドボード・アルバムです。WHITESNAKEは初来日から大物でしたが、3度目となる1983年にはRAINBOW/MSGの英雄コージー・パウエルを迎えたことで人気が爆発。凄まじい盛り上がりとなりました。まずは、当時の日程から本作のポジションを振り返ってみましょう。
・2月7日+8日:北海道厚生年金会館・2月10日:福島文化センター・2月12日:宇都宮市文化会館・2月14日+15日:大阪フェスティバルホール・2月16日:京都会館・2月18日:大阪厚生年金会館・2月21日:愛知県体育館・2月22日:日本武道館 【本作】・2月23日:日本武道館
以上、全11公演。公演数がグッと増えただけでなく、各地の名会場がズラリ。1997年のフェアウェル・ツアーにも並ぶ、白蛇史上最大のジャパンツアーでした。そんな中でも本作はハイライト公演。WHITESNAKE初の日本武道館でもありました。そんな日本武道館サウンドボードは、まさに伝説呼ぶに相応しい名音源。コージー秘蔵のカセット・テープから起こされ、『1983 BUDOKAN MONITOR MIX』として登場したもの。サウンドボードが存在していた事実自体が衝撃でしたが、中身も超強烈。卓直結サウンドボードは耳元感が目玉ですが、このコージー・テープは常軌を逸していた。例えば、ドラム1つとっても皮に耳をくっつけているような密着感で、ステレオ感ももの凄い幅で左右にパン。それこそ頭自体がドラムキットになり、右から左からスティックが飛んでくるようなシンクロ感。もちろん、ギターもベースもヴォーカルも然り。弦の振動が目の前に見え、鼓膜に向かってデヴィッド・カヴァデールのディープ・ヴォイスが流し込まれるのです。それ以上に強力なのが超生々しいサウンド・ミックス。これがまた思いっきり凶暴。この時期にはオフィシャル映像『MONSTERS OF ROCK ‘83』や西ドイツの極上テレビ放送も存在しますが、そうしたサウンドボードは作品然とした整然としたミックスなのですが、本作はまったく異なる。ギターがバッキングに回れば存在が消えかけるほど下がり、ソロになるとすべてを押しのけて前に出てくる。ヴォーカル・エフェクトも突如として飛び出しては乱れ飛び、余韻もなくサッと消える。近年で喩えるなら、受信状態が超絶に良いIEMsのようなサウンドなのです。
【超絶ステレオ・サウンドボードの究極進化形】
本作は、そんな超絶サウンドボードを大元のコージー・テープから改めてデジタル化。最新のハイエンド機材で史上最高峰を目指した究極盤なのです。実際、そのサウンドはまるで別物。オリジナル盤ではテープ起こしの際に高音にリミッターがかかってレンジが狭くなったり、低音がスポイルされたり。ジョン・ロードのオルガンがハイ落ちするパートまでありました。しかし、今回はそうした欠点を完全解消。大元マスターはカセットでは珍しいほど高い音域(例えばシンバルのチャキチャキした感触など)まで記録していたのですが、それらもすべて、テープ自体が吸い込んでいた原音を完全にデジタル化できたのです。まさに史上最高峰サウンドなのですが、録音自体の欠点はデジタル化だけでは解消できなかった。それは録音漏れ。開演時にはテープが回っておらず、1曲目「Walking In The Shadow Of The Blues」の冒頭部分が未録音。さらにショウ中盤では「Crying In The Rain」のソロ後半や「Soldier Of Fortune」の一部が切れ切れになっていたのです。そこで、本作はオーディエンス録音で補完。もちろん、補完材料も究極を目指し、この日のベストであるMiracle Man録音の『PYTHON MAGNUM』を使用し、全力でサウンドを補正した上でシームレスに繋げました。さすがに超絶サウンドボードと区別が付かないということはありませんが、Miracle Man録音もオーディエンス離れした異様にオンなサウンドのため、違和感はほとんどなくフルショウを楽しめるのです。
【1983年だけの超個性派WHITESNAKE】
そんな究極仕様で甦ったショウこそが素晴らしい。とにかく圧倒的なのは1983年だからこそのアンサンブル。とにかく鮮烈なのは新加入のコージー&コリン・ホジキンソンによるビートで、特にホジキンソンのベースが凄い。通常、コージーのバカデカ&パワフルなドラミングはどのバンドでもベースを食ってしまいますが、ホジキンソンは真っ向勝負。ジャズロックの名バンド、BACK DOORそのままの黒くハネるビートを提供し、アタックも強烈なら鳴りも艶やか。コージーの補佐に回ることを拒絶し、豪腕同士の火花散るビート合戦になっているのです。この姿勢は相棒然としたニール・マーレイとは真逆。コージーのキャリアでも、ここまで激しくぶつかったのはデニー・ボール(BEDLAM)かジャック・ブルース(OVER THE TOP)くらいではないでしょうか。しかも、激しいだけではない。サイクス時代にはメタリックに突っ走り気味でしたが、ここではあくまでもブルースロック。ホジキンソンはジャズロックだけでなく、ロバート・ジョンソンの弾き語りカバーを十八番にするほどブルースに造詣も深い。アップテンポでもロバジョン譲りのウォーキンベース感覚を貫き、実にブルージー。コージー自身はもっと自分の言いなりになるベーシストを好んでいたようですが、真剣勝負だからこその豪腕グルーヴが美味しいのです。そんなリズム隊に乗るメル・ギャレイとミッキー・ムーディ、ジョン・ロードも実に素晴らしい。TRAPEZEでファンクロックを追及したメルのカッティングとエルモア・ジェイムズをこよなく愛するミッキーのスライドは、共に黒人音楽への憧れが素直に現れながらもキャラクターが違いが鮮烈。ジョン・ロードも「今までの日本公演で一番だ」と断言していただけにノリノリで無限のインプロヴァイズを聴かせてくれる。もちろん肝心要のMR.ディープ・ヴォイスも、後の絶叫とはまったく違う漢臭い咆哮を轟かせる。そのすべてが超絶サウンドボードで脳みそに直接流し込まれるのです。ブルースロックからメタル、AOR寄りまで実は幅広く表情を変えてきたWHITESNAKE。その歴史でも類を見ない個性派集団だった1983年白蛇とシンクロする超極上サウンドボードです。同じショウを吸い込んだコージー・テープとMiracle Manテープ。その双方を現代技術でデジタル化し直し、フルショウに仕上げた史上最高峰盤です。1983年・日本武道館を究極クオリティで描ききるライヴアルバムの大傑作。
Live at Budokan, Tokyo, Japan 22nd February 1983 STEREO SBD(from Original Masters)*UPGRADETaken from the original cassette tape(TDK SA-X 90) belonged to Cozy Powell
Disc 1 (41:37)
1. Intro. ★全部aud補填 2. Walking In The Shadow Of The Blues ★0:00 - 1:08 aud補填 3. Rough An' Ready 4. Ready An' Willing 5. Don't Break My Heart Again 6. Here I Go Again 7. Lovehunter 8. Micky Moody Solo 9. Colin Hodgkinson Solo 10. Micky Moody Solo (reprise) 11. Lovehunter(reprise)
Disc 2 (56:55)
1. Crying In The Rain incl. Mel Galley Solo ★7:27 - 最後まで補填 2. Soldier Of Fortune ★0:00 - 1:59 補填 ★2:36 - 2:52 sbd/audを交互に複雑に補填 3. Jon Lord Solo 4. Cozy Powell Solo feat. 633 Squadron & 1812 Overture 5. (Ain't No Love) In The Heart Of The City
6. Fool For Your Loving 7. Thank You 8. Wine, Women An' Song 9. We Wish You Well
David Coverdale - Vocals Mel Galley - Guitar, Vocals Micky Moody - Guitar, Vocals Jon Lord - Keyboards Colin Hodgkinson - Bass Cozy Powell – Drums