
マニアでなくともご存知かと思われますが、ビートルズのファイナル・アルバム「LET IT BE」には公式のモノ盤が存在しません。既にオーディオの時代がステレオへと移行してしまったことを反映していた結果でした。よってこのアルバムと「ABBEY ROAD」はモノラルのミックスが存在しない。ところが意外なところで「LET IT BE」のモノがイギリスで存在していたのです。本アルバムがリリースされた1970年当時にはカセットによるアルバムリリースが普及しておらず、代わりにテープ・フォーマットのリリース用に使われていたのがオープンリール・テープ。「LET IT BE」に限らずビートルズの各アルバムはリアルタイムでリールテープがリリースされていたのですが、本アルバムに関しては面白いことにモノラル化されたリールテープ・タイトルがリリースされていました。モノラル化、要するにかつてのビートルズのアルバムのようなモノラルのミキシングが行われたのではなく、ステレオの音をモノラルに落としたという代物。よって正式なモノ・ミックスとは呼べないのですが、これまたビートルズのアルバムではおなじみ「疑似ステレオ」とは反対の行為だと考えれば面白いではありませんか。さらにホワイト・アルバムのリールテープ・バージョンでも見られた現象ではありますが、テープへの収録に際し、曲目が勝手に変えられてしまっているのがまた面白い。こと「LET IT BE」に関しては二曲目から順番の変動が炸裂。「Two Of Us」に次いで「I Me Mine」が来てしまうのを皮切りとして、アルバムのB面までめちゃくちゃな曲順(「Let It Be」前後が一番まとも)には笑いをこらえきれません。これではほとんど別のアルバムだと言っても過言ではないでしょう。特に「The Long And Winding Road」に「I've Got A Feeling」が来るだなんて!そして、いかにもアナログ・テープ然とした音質が魅力的。現行のリマスターCDとはまるで質感が異なっており、単純な優劣ではそれに敵わないものの、典型的なビンテージ・フィーリングに溢れたアナログ音質が大いに楽しめます。ビートルズのオフィシャル・リリースにおけるアナザー・サイドとも言えるモノラルのリールテープ。それでいて忘れ去られた「LET IT BE」モノ・バージョンとしても貴重。
Reel-To-Reel, 3 3/4 ips (Apple Records, TA-PMC 7096) (35:20)
1. Two Of Us 2. I Me Mine 3. One After 909 4. Across The Universe 5. Dig It 6. Let It Be 7. Maggie Mae 8. Dig A Pony 9. The Long And Winding Road 10. I've Got A Feeling (★箱は I Got A Feeling 表記) 11. For You Blue 12. Get Back