クリス・スクワイア最後のコンサートとなった前回の来日から2年。遂にYESが日本に戻ってきました。その速報となるライヴセットの登場です。今、YESはまさに最新のジャパンツアーの真っ最中。この駄文が公開される頃には、まだ最終公演が終わっていないであろうタイミングです。そんな最速リリースとなる本作が録音されたのは「2016年11月21日・22日:オーチャードホール公演」。まずは、ジャパンツアーの全体像から振り返ってみましょう。
・11月21日:オーチャードホール 【本作ディスク1・2】 ・11月22日:オーチャードホール 【本作ディスク3・4】 ・11月24日:大阪オリックス劇場 ・11月25日:Zepp Nagoya ・11月28日:オーチャードホール ・11月29日:オーチャードホール
このように、2年ぶりの日本ツアーは全6公演。東京2日間→大阪・名古屋→東京2日間の流れで行われています。そのうち、本作は最初の東京2日間をディスク2枚ずつに収めた4枚組なのです。もちろん、最速と言えど、クオリティに怠りなし。現在、連日の録音が次々と報告されており、それを1本1本細部まで精査中。そのために「ツアーNo.1」とは断言できないのですが、間違いなくトップクラスのハイクオリティ録音を揃えました。実際、本作から流れ出るのは見目麗しいクリア・サウンド。実のところ、本作を手がけた録音家は、いつもならプレスCDにする名手でして、今回もその名声に相応しいもの。しかし、最速の第1報のためにあえてCDRでのご提供となったのです。特に初日「11月21日」を収めたディスク1・2は、目も覚めるような鮮やかさ。「まるでサウンドボード」と呼ぶにはややドラムサウンドに遠近感もあるものの、逆を返せばそれ以外の楽器は強烈にダイレクト。複雑・繊細なアンサンブルが“スキマ”さえも感じさせるほど鮮明に記録され、美メロディの欠片がキラキラと輝くよう。そして、そこにほんのりと被る会場音響がまた美しい。常々、「YESミュージックはオーディエンスが似合う」と繰り返しておりますが、その確信は強まるばかり。優しいメロディは暖かみを、色とりどりの音色は艶やかさを、降り注ぐコーラスやオルガンは荘厳さを増している。しかも、その音響の主がYESであり、名会場“オーチャードホール”なのですから、その美しさも想像できようものです。輝くような初日に対し、2日目「11月21日」を収めたディスク3・4は豊かな“鳴り”にトロけそうな名録音。特に芳醇なのが低音域。ドラムもディスク1・2よりグッと前に出ていますが、何よりも素晴らしいのはゴリゴリとしたベース・サウンド。1音1音の粒までも分かるほどに克明であり、なおかつ会場の壁や床を震わせるヴァイヴレーションまで体感できる。もちろん、それだけの低音であってもまったくビビることもなく、その豊かさを突き抜けて届く中高音も申し分なし。まさにリッチ・サウンドと呼ぶに相応しい重厚感なのです。そんなサウンドで描かれる最新YES。すでに各所で「ここ5年で一番」と大絶賛されていますが、その評も納得の素晴らしさ。その要因は主に2つ、セットリストと演奏。まず、セットリストですが、今回のショウは2部構成になっており、1部・2部はさらに2つに細分できる。整理しますと……
・第1部a:『ドラマ』パート3曲 ・第1部b:『イエスソングス』パート4曲 ・第2部a:『海洋地形学の物語』パート2曲+α ・第2部b:アンコールの定番2曲
……と、このようになっています。海外公演では『ドラマ』の完全再現が行われたわけですが、日本では3曲に抑えられ、『イエスソングス』パートが設けられました(招聘会社のリクエスト?)。やはり注目は海外公演でも目玉だった『海洋地形学』パート。2つの大曲「神の啓示」と「儀式」がフルで演奏され、その合間を「古代文明」からの「Leaves Of Green」で繋ぐという構成で、このパートだけで約1時間ある。2つの大曲はこれまでのキャリアで度々演奏されており、さしてレアなわけではないのですが、これらの大曲が日本で演奏されるのは今回が初。まさに“待望の1時間”をたっぷりと味わえるわけです。2つ目は演奏。2年前の来日公演を最後にクリス・スクワイアが亡くなり、今回が“クリスのいないYES”の初来日でした。しかし、その後任として加入したビリー・スクワイアが大好評。元メンバーだけに楽曲・アンサンブルのツボを隅々まで知り尽くし、クリスへのリスペクトも十二分。まるでクリスが乗り移ったようにオリジナルを尊重しつつ、独特のニュアンスをスパイス程度に加えるセンスを聴かせる。さらにはコーラスでも大活躍。来日する度に“アンダーソン化”が深化するジョン・デイヴィソンとも相まって、ビリーこそが“世界一の適役”だと証明するかのような演奏を聴かせてくれるのです。もう1人のキーマンがアラン・ホワイトの代役を務めるジェイ・シェレン。元HURRICANE、BADFINGER、ASIA、GPS等といった経歴が並ぶ実力派であり、アランが手術のために休養している間、北米ツアーでも代役を務めていました。その確実にして引き締まったリズムワークは絶品で、今回の充実感の要。ビリー&ジェイのビシッとしたリズムによって、複雑な展開がいつも以上に鮮やかに決まる。今回は御大スティーヴ・ハウの好調も大好評ですが、それも鉄壁のリズム隊がキッチリ支えているからではないでしょうか。そんなジェイからアランにバトンタッチするのが「儀式」のパーカッション・パート。北米ツアーは全公演欠席だったアランですが、本作のディスク3は、彼の復帰初演にあたる。状況を理解していたファンの喝采を受けつつスツールに座り、あのパーカッション・パートへと突入する。正直なところ、まだまだ本調子とは言えないようですが、やはりこのパートはアランだからこそ嬉しい。彼はその後のアンコールでもドラムをこなしています。兎にも角にも、最速の第1報。
Bunkamura Orchard Hall, Tokyo, Japan 21st & 22nd November 2016 PERFECT SOUND(from Original Masters)
Live at Bunkamura Orchard Hall, Tokyo, Japan 21st November 2016
Disc 1(65:59)
1. Onward (Chris Squire tribute) 2. The Young Person's Guide to the Orchestra 3. Machine Messiah c4. White Car 5. Tempus Fugit 6. Steve Howe Introduction 7. I've Seen All Good People 8. Perpetual Change 9. And You and I 10. Heart of the Sunrise
Disc 2 (77:19)
1. The Revealing Science of God 2. Leaves of Green 3. Ritual 4. Member Introduction 5. Roundabout 6. Starship Trooper
Live at Bunkamura Orchard Hall, Tokyo, Japan 22nd November 2016
Disc 3 (66:18)
1. Onward (Chris Squire tribute) 2. The Young Person's Guide to the Orchestra 3. Machine Messiah 4. White Car 5. Tempus Fugit 6. I've Seen All Good People 7. Steve Howe Introduction 8. Perpetual Change 9. And You and I 10. Heart of the Sunrise
Disc 4 (78:11)
1. The Revealing Science of God 2. Leaves of Green 3. Ritual 4. Member Introduction 5. Roundabout 6. Starship Trooper
Steve Howe - guitar, vocals Geoff Downes - keyboards, vocals Alan White - drums Jon Davison - vocals, acoustic guitar, percussion Billy Sherwood - bass, vocals Jay Schellen – drums