2016年の秋を極上のシンフォニック・ロックで染め変えていったYES。その想い出を噛みしめ、永久に残すライヴアルバムがで登場です。今回のツアーは東名阪で6公演が行われましたが、本作に収められているのは2日目。「2016年11月22日オーチャードホール公演」のオーディエンス・アルバムです。最新の来日公演と言えば、何よりもまず実際に足を運ばれた方は“自分が観たコンサートかどうか”が気になると思います。東京公演はすべてがオーチャードホールでもありますので、日程で確認しておきましょう。
・11月21日:オーチャードホール『TOKYO 2016 1ST NIGHT』 ・11月22日:オーチャードホール 【本作】 《1日移動&オフ》・11月24日:大阪オリックス劇場『OSAKA 2016』・11月25日:Zepp Nagoya 『NAGOYA 2016』 《2日移動&オフ》 ・11月28日:オーチャードホール ・11月29日:オーチャードホール
このように、今回のツアーは東京2回→大阪+名古屋→東京2回という構成でした。そんな本作は、実に素晴らしいオーディエンス・サウンドの逸品。このショウは『TOKYO 2016 1ST & 2ND NIGHT』の一部としても速報レポートしましたが、本作は別録音家による別録音。プレスされていることからもお察しの通り、そのサウンドも輪をかけて素晴らしいのです。実のところ、今回のYESは様々な録音家から録音をご提供頂いており、すべてのショウでいくつもの名録音が割拠する激戦区。何人もの名手が競い合うように録音合戦を繰り広げ、1公演ずつが接戦。実際、今週はツアー前半4公演のプレスCDが一挙に登場しますが、これらは全部別の録音家による作品なのです。例えば、今週リリースのス2CD『TOKYO 2016 1ST NIGHT』。これは「東京ベスト」とも言えるハイクオリティ・サウンドですが、その録音家は2日目も録音していました。普段であれば、そのまま丸ごと4枚組にするところなのですが、ここで別テーパーの極上録音が割って入り、「2日目ベスト」の座をかっさらってしまった。コレクション的に同一録音家の統一感も捨てがたかったものの、各日の頂点を残したい……そうして選び抜かれたのが本作なのです。そのサウンドは、速報だったAmity盤4CDR『TOKYO 2016 1ST & 2ND NIGHT』を軽く凌駕する素晴らしさ。空気の透明感は比較にならず、各楽器が綺麗に分離して詳細なディテールまで超・克明。低音の鳴りも豊かなら、中高音も眩しい。キラキラと輝くようなYESミュージックがオーチャードホールの空間に降り注ぐ美麗アルバムなのです。同じ構成のショウを一挙に4日分リリースする都合上、個性をお伝えするために初日2CD『TOKYO 2016 1ST NIGHT』を「東京ベスト」としましたが、極々僅かな違いでしかない。「初日の方がホンのちょっとだけ音響が豊かな……」「でもその分、2日目の方が綺麗とも言えるよな……」と迷いに迷った。それこそ、演奏ぶりや当日の空気感の差に比べたら些細な差でしかない極上の2作品なのです。そして、そんな演奏ぶりがまた素晴らしい。今回の来日は初めての“クリスのいないYES”。当初は不安ばかりが先立っていましたが、フタを開けてみたら「この10年でベスト」という声さえ聞かれる大絶賛になりました。その最大の要因はメンバー。クリスの後任として迎えられたビリー・シャーウッド、アラン・ホワイトの代打として参加しているジェイ・シェレンの2人によるリズム隊が想定外に素晴らしかった。ビリーは元メンバーだけに楽曲・アンサンブルのツボを隅々まで熟知しつつ、まるでクリスが乗り移ったかのよう。それも単なるコピーではなく、独特のニュアンスをスパイス程度にセンス良く加える。さらには歌も巧く、来日する度に“アンダーソン化”が深化するジョン・デイヴィソンとも絡み合うコーラスはYESそのものです。もう一方のジェイも元HURRICANE、BADFINGER、ASIA、GPS等といった経歴が並ぶ実力派であり、その確実にして引き締まったリズムワークは絶品。正直に告白すると、1人またひとりと黄金期のメンバーが消えていくYESに不安もあったのですが、その戸惑いさえ忘れるほどにシャープでありながら違和感もない。鉄壁のリズム隊に支えられ、御大スティーヴ・ハウもいつになく安定して七色の音色を輝かせている。複雑にして美しいシンフォニック・ロックの極地を披露してくれるのです。新たな血を取り込んで、一層鮮やかに蘇ったYESミュージック。2016年はジョン・アンダーソン/リック・ウェイクマン/トレヴァー・ラビンによる「ARW」が活動を開始し、フレッシュなYESソングスを聴かせていますが、本家YESも劣らずプログレッシヴな歩みを進めている。奇しくも、来年4月にはARWも来日しますが、そこでも東京会場は“オーチャードホール”。来るARWでも(恐らくは)美録音が登場するでしょうし、「2つのYES」を同会場の極上サウンドで楽しめる日まで楽しみになる1本。
Live at Bunkamura Orchard Hall, Tokyo, Japan 22nd November 2016 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)
Disc 1 (66:15)
1. Onward (Chris Squire tribute) 2. The Young Person's Guide to the Orchestra 3. Machine Messiah 4. White Car 5. Tempus Fugit 6. Steve Howe Introduction 7. I've Seen All Good People 8. Perpetual Change 9. And You and I 10. Heart of the Sunrise
Disc 2 (78:00)
1. The Revealing Science of God 2. Leaves of Green 3. Ritual 4. Member Introduction 5. Roundabout 6. Starship Trooper