
2016年12月に帰らぬ人となってしまった希代のシンガー、グレッグ・レイク。その魅力が最大限に発揮された極上ライヴアルバムが登場です。オリジナルKING CRIMSON、EL&P、GREG LAKE & GARY MOORE、ASIA、EL&POWELL、EMERSON & LAKE……思い返せば、常にスーパーバンドや達人たちに囲まれていたグレッグのキャリア。そんな中で、彼の“歌声”と“メロディ”だけが主役となり、その魅力が最大限に輝いたのは2005年のソロツアーでした。グレッグのソロはあまり注目されず、あまり知られているとは言い難い。まずは、ソロのツアー・キャリアを総括してみましょう。
・1981年8月-11月:英国(20公演)・1981年11月-12月:北米(9公演)ー24年後ー・2005年10月-11月:英国(20公演)←★ココ★ー6年後ー・2012年4月-5月:北米(26公演)・2012年11月-2013年4月:欧州(19公演)・2013年6月15日-18日:日本(3公演)
この他にもベネフィット・コンサートへの参加など、細かいライヴはいくつかありますが、おおよそグレッグのソロ・ツアーは「1981年」「2005年」「2012年-2013年」の3つに大別される。そのうち、本作が記録されたのは「2005年」。再編EL&Pが1998年に終わり、リンゴ・スターとの“ALL STARR BAND 2001”への参加から4年を経てのソロ活動だったのです。この「2005年」というのが、特別。先述した通り、グレッグの音楽人生は達人たちとのコラボレーションがほとんどで、「1981年」のソロですらゲイリー・ムーアを率いていた。その反動か、晩年の「2012年-2013年」はカラオケ・テープをバックにした独り舞台でした。ところが「2005年」はそのどちらでもなく“グレッグ本人が主役+生バンド”。つまり、彼の人生で唯一の“ソロ・シンガーらしいツアー”だったわけです。本作は、そんな「2005年」を伝える特級の大傑作。録音したのは、当店でお馴染みの“英国の巨匠”。ポール・マッカートニーやTHE ROLLING STONES、デイヴ・ギルモア、デヴィッド・ボウイ、WISHBONE ASH等々など、さまざまなアーティストで傑作を連発している名手で、最近ではSOFT MACHINEの『MILTON KEYNES 2016(Amity 372)』が大好評を賜りました。本作は、そんな彼のコレクションでも特級の1本。「2005年11月6日バーミンガム公演」のオーディエンス・アルバムなのです。“巨匠サウンド”と言うと、DAT録音の暖かみとクリアさの両立が旨み。本作にもその個性は力強く息づいているものの、いつに増して「クリアさ」に天秤が思いっきり傾いている。実際、本作のサウンドは「まるでサウンドボード」と呼ぶに相応しいもので、距離感がまるでないダイレクト感が凄まじい。“巨匠サウンド”のファンには「空気感が足りない」と思われてしまうかも知れませんが、逆に「サウンドボードしか聴かない」という方には存分に楽しんでいただけることでしょう。とは言え、ただの「サウンドボード級」でもない。PA出力されたサウンドは音楽的に完成されたバランスを誇り、伸びるヴォーカルに極わずかに感じられる会場音響は、鳴りの美しさと見事な統一感を醸す。下手なサウンドボードの白々しさえもなく、それこそ精緻にミックスされた公式盤かのような音楽美。もう「オフィシャル級オーディエンス」とでも呼ぶしかない強烈なサウンドなのです。その激しいクリア・サウンドで描かれる“シンガー:グレッグ・レイク”の世界がまた、絶品。ソロとは言ってもKING CRIMSONの「The Court Of The Crimson King」「21st Century Schizoid Man」を要所に配しつつ、ほとんどがEL&Pナンバーで占められている。このツアーからは公式ライヴ盤『GREG LAKE』も出されていますが、そこではカットされている「From The Beginning」「I Believe In Father Christmas」「Love You Too Much」「Footprints In The Show」も含め、フルショウの一部始終をたっぷりと味わえるのです。演奏メンバーはセッション畑のキャリア組がほとんどですが、その中で光っているのはJETHRO TULL/IAN ANDERSON BANDでお馴染みのフロリアン・オパーレ。イアン・アンダーソンの来日公演でも見せてくれたセンスで塗り替えられたKING CRIMSON/EL&Pナンバーが実に素晴らしい。しかし、本当の要はオパーレではなく、バンマスを務めるキーボーディスト、デヴィッド・アーチ。鍵盤主体のEL&Pナンバーが多いだけあって、彼の独自アレンジが光っている。アコースティック・ギターを大胆にフィーチャーした「Take A Pebble」、ストリングシンセの感動的なオーケストラレーションで壮大に響く「I Believe In Father Christmas」……。告白しますと、“クラシックスだらけ”&“スタープレイヤー抜き”のイメージから、聴く前から懐メロ大会のヌルいショウを想像しておりました。しかし、それは完全な間違いだった。隅々まで考え抜かれ、それでいて“シンガー:グレッグ”を輝かせることに焦点を絞り込んだアレンジの完成度……。ライヴ・プレイヤーとしても素晴らしく、唯一のソロナンバーは「Love You Too Much」でも猛烈なロックンロール・ピアノを聴かせてくれます。そして、主役グレッグの歌声がまた、本当に素晴らしい。もちろん、70年代ほどの透明感ではないものの、再編EL&Pから微塵の衰えも感じさせない……いえ、むしろ良くなっているほどです。キース・エマーソンやカール・パーマーもEL&Pナンバー主体のソロ活動を行っていましたが、これほどエンターテインメントとして完成度の高いショウはグレッグだけではないでしょうか。成功とはほど遠い成果しか残せず、歴史の闇に忘れ去られる宿命のソロ・ツアー。そこにはスタープレイヤーの妙技もなければ、エゴのぶつかり合いもありません。ただひたすら、“グレッグ・レイク”を焦点に磨き上げられた名曲群があり、“彼の声”を演奏で輝かせる職人たちがいた。希代のシンガーの歌声を、そして彼が生み出してきた名曲群の数々を味わうには最高の逸品です。決してロック史の表舞台で語られる事はない、2005年の一夜。人知れず、ひっそりと、それでいて芳醇なプログレッシヴ・ロックが輝いていた夜。その現場を極上サウンドでお届けする1本。
Live at Alexandra Theatre, Birmingham, UK 6th November 2005 ULTIMATE SOUND(from Original Masters)
Disc 1(46:21)
1. Intro Tape (The Dance Of The Puppets) 2. The Court Of The Crimson King 3. Paper Blood 4. From The Beginning 5. Touch And Go 6. Take A Pebble 7. I Believe In Father Christmas 8. Farewell To Arms
Disc 2(60:04)
1. Fanfare For The Common Man 2. Love You Too Much 3. Footprints In The Show 4. Lucky Man 5. 21st Century Schizoid Man 6. Band Introduction 7. Pictures At An Exhibition 8. Karn Evil 9 1st Impression Part 2 9. Finale
Greg Lake - Guitar, Vocals David Arch - Keyboards Florian Opahle – Guitar Trevor Barry - Bass Brett Morgan - Drums Josh Grafton – Keyboards Bekki Carpenter - Backing Vocals Jai Ramage - Backing Vocals