
『トリロジー』時代の特級ライヴアルバムがまさかの新発掘です。本作に収められているのは「1972年6月6日ベルリン公演」。この日の録音は存在だけはコア・コレクターには知られていたものの、ライヴアルバムとして登場したことはありませんでした。ところが、最近になってコア・コレクターの秘蔵品が出現。いわゆる“秘蔵品”と聞いてイメージするものとは次元の違うクオリティに世界中のマニアが騒然となっている録音なのです。そのコア・コレクターとは“Per-Erik”。北欧の名テーパーとしても名声を轟かせている人物ですが、その逸品録音をトレードの武器にしてかき集めたコレクションは圧倒的。現在はそのコレクションが少しずつ公開されており、たとえ有名音源でもジェネレーションが若かったり、完全収録だったりと「Per-Erik collection」が半ばブランド化されているほど。本作は、そんなブランドを一層高める傑作なのです。実際、そのサウンドは実に素晴らしい。観客がほとんどなく3人のアンサンブルが図太く真っ直ぐに届く様は、まるでサウンドボード。もちろん、1972年のヴィンテージな空気感もあるにはあるのですが、輪郭もクッキリと際立った楽音が乱射され、その1音1音が距離感もほとんどなく飛び込んでくるのです。全部が綺麗に録られていますが、特に申し上げたいのはベース。ビンビン・バキバキと粒立ちがめちゃくちゃ綺麗。70年代というと、花形キースのキーボードは克明でもベースがくぐもってボワボワしてる録音が多い。ところが、本作は、キースやカールと同等以上に鮮やかなのです。このサウンドは、キーボードトリオには理想的。もともと打弦楽器を祖とするキーボードトリオは1音1音の立ち上がりが鋭く、ギター主役のロックバンドよりもビートが強烈なもの。その反面、ベースがボヤけがちなオーディエンス録音はあまり向かないことも多いのです。しかし、本作のサウンドはその欠点自体が丸っきりなく、生々しい客録の旨みだけを美味しく味わえるのです。残念ながら「展覧会の絵」冒頭の「Promenade」に4秒ほどのカットがありましたが、本作では2公演前となる“6月4日エッセン公演『ASSAULT YOUR SENSES』”で補填。シームレスにお楽しみ頂けるように仕上げました。それにしても、名盤『ASSAULT YOUR SENSES』の極上サウンドで補填しても違和感がないとは……。これほどの名録音が秘匿されていた事自体が驚きです。そのサウンドで描かれるEL&Pがまた、とんでもなく素晴らしい。“1972年”というだけで充実の演奏は約束されたものですが、さらに日程まで踏み込むと凄味がより分かりやすい。良い機会ですので、ここで『トリロジー』時代をおさらいしてみましょう。
《1972年1月『トリロジー』完成》 ー約2ヶ月後ー ・1972年3月:カーディフ(1公演)・1972年3月-4月:北米#1(35公演) ー約1ヶ月後ー ・1972年6月:欧州#1(13公演)←★ココ★ 《1972年7月『トリロジー』発売》 ・1972年7月-8月:日本+北米#2(27公演)ー約1ヶ月後ー ・1972年9月-12月:UK(23公演)
ー4ヶ月後ー ・1973年3月-5月:欧州#2(22公演) 《1973年6月『恐怖の頭脳改革』制作開始》
これが『トリロジー』完成から『恐怖の頭脳改革』への歩み。70年代の記録にはあやふやな点もあるので厳密ではありませんが、おおよその活動概要は把握していただけるでしょう。そして、本作のベルリン公演は伝説の初来日直前の「欧州#1」3公演目にあたる。このポジションが絶妙でして、『トリロジー』完成からたっぷりと北米を回ってアンサンブルはこなれまくり、さらに約1ヶ月のオフを挟んで疲れもナシ。その上に来て、これからまさに『トリロジー』が世に問われようというテンション。デビュー時から演奏している曲に加えて「Hoedown」や「Tarkus」まで役者が揃いつつ、不慣れ感ゼロ。それでもなお、馴れ合いには至っていない絶妙南敷の鋭い演奏がこれでもか!と繰り広げられるのです。
伝説の初来日そのままのバンド・ポテンシャルがホームグラウンドのヨーロッパで爆裂ライヴアルバムの大傑作です。『恐怖の頭脳改革』に向けて全力疾走が加速するEL&Pが、マニア秘匿の極上サウンドで広がる1本。
Live at Deutschlandhalle, Berlin, Germany 6th June 1972 TRULY AMAZING/PEREFCT SOUND
Disc 1(37:51)
1. Hoedown 2. Tarkus 3. Epitaph 4. Aquatarkus 5. Take A Pebble 6. Lucky Man
Disc 2(48:30)
1. Piano Improvisation 2. Pictures At An Exhibition 3. Rondo 4. Drum Solo 5. Rondo(reprise)