
これほどのライヴ・アルバムをどうご紹介すればいいのでしょう……。とにかく衝撃。最初にマスターを聴いたとき、頭には「!?」ばかりが並んでしまいました。本作は、イタリアン・プログレの至宝PFMの本国ライヴを真空パックしたアルバム。伝説の初来日公演の3ヶ月前にあたる「1975年8月10日リミニ公演」で、ベナルド・ランゼッティが加入する直前です。つまり、「甦る世界」を創り上げた黄金期の5人(フランツ・ディ・チョッチョ、フランコ・ムッシーダ、フラヴィオ・プレモーリ、パトリック・ジヴァス、マウロ・パガーニ)によるライヴなのです。「筆舌に尽くしがたい」という言葉は、言葉を尽くす努力を怠った証拠だ……そう考えてきましたが、このアルバムを聴いて、どうご紹介していいのか途方に暮れています。本当に「凄い」「素晴らしい」で埋め尽くすしかないんじゃないか……。まず、絶頂期にある黄金の5人が本国イタリアで演奏している。この事実だけでもライヴの凄味はご想像いただけると思いますが、それを捉えたサウンドもまた凄い。マスターをかけた最初の驚きは、「まさか、PFMのラジオ放送!?」だったのですが、どうやらそうではなく本作はオーディエンス録音らしいのです。いや、“らしい”ではありません。「ステージ上でマイク録音した」と明言されていますから、確実にライン録音ではない。しかし、聴いているとあまりにサウンドボード(しかも、見事にミックスされた放送音源)のようで、“らしい”と付けずにはいられないのです。残念ながらマスター・リールの現物は失われてしまったらしく、1stジェネ・コピーをデジタル化したものなのですが、ビビッドな音の鮮度たるやマスター・リールがどんな音だったのか想像すらできません。冒頭のバンド紹介からサウンドボードにスタジオ歓声を被せたラジオ放送のようですが、チューニング中にうっすら聴こえるハウリングやアンプのノイズまでダイレクト感がある。その後、イタリア語で挨拶して演奏に入っていきますが、そこでもまるでライン。各楽器がいかに複雑なフレーズを絡ませようとも1音1音までハッキリと分かり、ドラムの打音もキットの構成まで主張してくるようなクリアさなのです。細かく延々と絡みあう「Il Banchetto」の鮮烈さと言ったら!そのサウンドで奏でられるのは、PFMの頂点たる大充実ライヴです。同じくイタリアの至宝AREAのデビュー作で気を吐いたジヴァスが加入し、“黄金の5人”がそろって、ほぼ丸2年。さらなる飛躍を期す黄金期の勢いはそのままに、円熟味までまとい始めた一番美味しい時期。そこにホームグラウンドならではの自信と貫禄までも漂わせているのです。それもそのはず、当時のPFMは国内随一の大物バンドであるばかりか、国際デビューを果たして意気上がる“イタリアの英雄”。支え続けたファンは誇りを持って自分たちの英雄を見つめ、バンドもそれに全力で応えるパフォーマンスなのです。オフィシャルのライヴ・アルバム「COOK」はもちろん問答無用の名盤ですが、「あれは世界に挑むアウェイの戦いだったのか」と今さら思い知らされてしまいました。特に大迫力の「Celebration (E festa)」で幕を開けるディスク2は空前絶後。PFMというと優雅な繊細さが真っ先に思い浮かびますが、複雑精緻に突き進むアンサンブルのなんとパワフルなことか! さらに、千変万化なジャムやドラムソロを大胆に取り込んで24分半に伸長された「Impressioni di Settembre」が続く。この激しい起伏と縦横無尽な旋律……1970年頃のDEEP PURPLEやBLACK SABBATHさえも霞むエネルギーです!PFMの名盤中の名盤と言ったら「READING FESTIVAL 1973」です(beatleg誌 vol.89の「イタリアン/ユーロ・ロック特集」の「イタリア ブートベスト10」で1位に選出)。本作は、あれ以来の衝撃。いや、“名手ジヴァスの存在”“ホームによる演奏”“フルスケールの2枚組”も勘案すると、あの超名盤さえ凌いでしまいかねません。2015年は、ライヴ当日から40年。まさに“40年に一度”の超傑作が登場してしまいました。あまりの凄まじさに、喜びさえ麻痺してしまう1本。ぜひ、今すぐ体験していただきたい。
L'Altro Mondo, Rimini, Italy 10th August 1975 TRULY PERFECT/ULTIMATE SOUND
Disc 1(75:54)
1. House Announcer 2. La Carrozza di Hans 3. La Luna Nuova 4. Il Banchetto 5. Dove… Quando (pt.I) 6. Guitar Solo (Mussida) 7. Dolcissima Maria 8. Mr. 9 Till 5 9. Alta Loma 5 Till 9 (Jams & Solos incl. William Tell Overture)
Disc 2(31:24)
1. E Festa 2. Impressioni di Settembre 3. Jam 4. Drum Solo 5. Impressioni di Settembre (reprise)
Franz Di Cioccio: drums, vocals Patrick Djivas: bass Franco Mussida: electric guitar, acoustic guitar, vocals Mauro Pagani: flute, violin, vocals Flavio Premoli: keyboards, vocals