本作が録音されたのは「1995年10月12日ケベック公演」。1991年夏に再びASIAを脱退したウェットンはソロ活動を開始。名作『VOICE MAIL』や日本公演のライヴアルバム『CHASING THE DRAGON』を発表、さらにスティーヴ・ハケットの『GENESIS REVISITED』などに参加し、90年代前半をすごしました。そんな活動の一環として行われたのが、アンプラグドのミニツアー。1995年10月5日から14日にかけ、アコースティックギターを片手に単身、北米を回っていたのです。本作のケベック公演は、その一幕なのです。そんな本作は、実に暖かみのあるオーディエンス・サウンド。恐らく現場はホテルのバーだと思われるのですが、とにかく親密感が素晴らしい。ギター1本が透明感たっぷりに響き、ウェットンの美声がしっとりと降り注ぐ。文字通り「同じ部屋にいる」感が溢れ出すサウンドなのです。そのサウンドで描かれるショウは、彼のキャリアを総括する名曲・美メロディの宝庫。ASIAやソロは装飾が取り除かれ、KING CRIMSONやU.K.はアンサンブルに頼らずに、メロディと歌声の美しさだけが丸裸になって光り輝く。当時ならではの「You're Not The Only One」や、アコースティックバージョンの「Only Time To Tell」「Don't Cry」も素晴らしいですが、特に感動的なのはKING CRIMSON。このツアーにはオフィシャル盤『AKUSTIKA - LIVE IN AMERIK』もありますが、そこでは聴けない「Easy Money」「Starless」「Lament」「Exiles」がたっぷりと演奏されるのです。オリジナルでは緊張感溢れるインプロヴィゼーションの緩衝材として機能していたメロディが本来持っていた“美”。それだけに焦点を絞りきり、最大限に引き出されているのです。そう、ここにいるのは“プログレの勇者”ではなく、“ベースの匠”でもない。1人の美声シンガー、ジョン・ウェットンです。彼のジェントルな歌声に浸りきり、プライベート感たっぷりに同席できる。なんとも贅沢な時間をくれる1枚。
Live at Bar le D'Auteuli, Quebec, Canada 12th October 1995 Remastered(Upgrade) (67:44)
1. Heat Of The Moment 2. Book Of Saturday 3. Hold Me Now 4. Easy Money 5. Thirty Years 6. Only Time Will Tell 7. Starless 8. Lament 9. Exiles 10. You're Not The Only One John WEtton 11. Battle Lines 12. Don't Cry 13. The Smile Has Left Your Eyes 14. Rendez-vous 6:02