
ジョン・ウェットンを失い、新たな歩みを始めたASIA。その最新・極上ライヴアルバムが登場です。ウェットンは亡くなったのは、今年1月。それ以前からASIAのツアーは決まっており、ウェットンは癌の治療のために不参加の予定でした。2017年の後半にはツアーにも復帰するはずだったものの、その後ウェットンの病状が急激に悪化。ツアーを前にして帰らぬ人となってしまったのです。ASIAは訃報を悼みつつ、当初の予定通りにビリー・シャーウッドを代役に起用してツアーを開始。現在は、北米を巡っています。まずは、その現状を整理しておきましょう。
《1月12日:ウェットンがツアー不参加を表明》 《1月31日:ウェットン死去》 ・3月15日-4月4日:北米#1(13公演)6月5日-7月28日:北米#2(30公演)←★ココ★・11月26日-30日:ウェットン追悼公演(中止)
これが現在までに公表されているライヴスケジュール。一度、11月にスティーヴ・ハウが復帰してのウェットン追悼公演も発表されたのですが、「我々(ASIA)のコントロールを超えた理由のため」中止となりました。さて、本作はそんな“今のASIA”を伝える音のレポート。ディスク1に「2017年6月17日エングルウッド公演」、ディスク2に「2017年6月19日ウースター公演」を配した2枚組オーディエンス・セットです。両公演は、現在進行中の「北米#2」8公演目・9公演目にあたる。まさに最新のライヴアルバムなのです。そんな本作は、目を見張り、耳を疑う極上クオリティ。両公演はそれぞれ別の録音家の作品ですが、両名ともいずれ劣らぬ“現代の名手”。リアルな熱狂にはオーディエンス録音の証が刻まれているものの、極上の楽音/歌声は下手なサウンドボードを蹴散らす素晴らしさ。何と言っても凄いのは、透明感。会場音響をほんのり纏ってはいるのですが、それが極めて透き通っている。よく「楽音のディテールを隠さない」と書いたりもしますが、それどころではない。何と言いますか、会場にたゆたう空気がまるで3000メートル級の高山のような透明感なのです。もちろん、それだけ透き通った空気の中では、楽音も極めて鮮やかでダイレクト。ギターのピッキング1つ、歌詞1語、ベースのゴリゴリに至るまでキラキラと輝くようにビビッドなのです。そのクオリティで描かれる“今のASIA”もまた、輝くようなショウを聴かせてくれる。一番の注目であるビリー・シャーウッドは、予想外の健闘ぶり。もちろん、ウェットンのような“深み”は望むべくもないですし、やや不慣れ感も拭えない。しかし、思いの外しっかりとした歌声はメロディの美しさを損なうことなく、リードシンガーの重責を担うに十分。ベースはさらに素晴らしく、単なる安定感だけではなくゴリゴリ・ビンビンとしたサウンドは存在感バツグン。ウェットンのオリジナルを尊重しながらも……いえ、尊重するからこそ無難では終わらせなていないのです。セットは両公演とも黄金のヒットパレードなのですが、それ以上なのがエングルウッド公演(ディスク1)。この日は“AN EXTRAORDINARY LIFE”と題されたウェットンの追悼公演。ショウの後にはQ&Aコーナーもあった(本作には未収録)ようですが、セットも特別。通常セットのウースター公演と比べて曲数もグッと多く、「Go」「Ride Easy」「Video Killed The Radio Star」「Fanfare For The Common Man」等が追加されている。いずれも今回が初というわけではありませんが、2017年ツアーではこの日にしか演奏していません。極めつけは「Lucky Man」と「Heat Of The Moment」。「Lucky Man」はグレッグ・レイク追悼で取り上げられたのかも知れませんが、この日がASIAとしての初演でした(ただ、ビリーの声域にはあまりに合わず、結構厳しい出来です)。そして、大ラスの「Heat Of The Moment」では、ウェットン夫人リサが登場。サブのドラムセットを叩きながら、カールとのツィンドラムで「Heat Of The Moment」を演奏します。クリス・スクワイアを失ったYESと同じように、名曲たちを歌い継ぐ道を選んだASIA。本作にはそのメロディに酔い、大いに喜ぶ観客達の姿も封じ込まれている。彼らは今を生き、名曲を生かし続けているのです。その是非を下すにしても、まずは音で現実を知らなくては始まりません。躍動する名曲の姿に感謝するか、あきらめて去るか。クリスタル・クリアなサウンドで、その“今のASIA”を体験できる1本。
DCU Center, Worcester, MA. USA 19th June 2017 TRULY PERFECT SOUND
Disc 1(75:51)
Live at Bergen Performing Arts Center, Englewood, NJ. USA 17th June 2017 “An Extraordinary Life” Celebration
1. Intro. 2. Wildest Dreams 3. Sole Survivor 4. Time Again 5. Don't Cry 6. Keyboard Solo 7. Go 8 Ride Easy 9. The Smile Has Left Your Eyes 10. Lucky Man 11. Video Killed the Radio Star 12. Fanfare for the Common Man (incl. Carl Palmer Drum Solo) 13. Only Time Will Tell
14. Heat of the Moment (with Lisa Wetton in addition to Carl Palmer on drums)
Disc 2(44:36)
Live at DCU Center, Worcester, MA. USA 19th June 2017
1. Wildest Dreams 2. Sole Survivor 3. Time Again 4. Don't Cry (incl. Carl Palmer Drum Solo) 5. Keyboard Solo 6. The Smile Has Left Your Eyes 7. Only Time Will Tell 8. Heat of the Moment
Carl Palmer - Drums, Percussion Geoff Downes - Keyboards Sam Coulson – Guitar Billy Sherwood - Bass, Vocal