
ボウイの『Let’s Dance』というアルバムは、その音楽性に従来のボウイ・ファンを大いに戸惑わせた。もちろんボウイが時代に即して自らを変えていった歴史は知っていたが、常に時代の先を見据えての変化であった。しかし『Let’s Dance』は明らかにディスコ・ブームに乗った時代迎合の音楽であった。しかし皮肉にも、このアルバムはセールス的に大成功し、一躍ボウイをメジャーに押し上げたのである。悪魔に魂を売ってポピュラリティを入手したように従来のファンには映ったのである。とかく古くからのファンには評判の良くない『Let’s Dance』であるが、ボウイの慧眼が光るものとしては、レコーディングに当時まだ無名だったスティーヴィー・レイ・ヴォーンを起用した点であろう。ボウイが初めてスティーヴィーの演奏を見たのは1982年のモントルー・ジャズ・フェスティバルであった。この時の演奏を気に入ったボウイは、次のアルバムに参加を要請することになる。ダンサンブルな曲調のアルバム制作にブルース・ギタリストを起用しようというアイデアが面白いではないか。それが『Let’s Dance』を単なる時代迎合ではなくボウイのニューアルバムたらしめているギリギリのラインを維持した要因ではないかと思うのだ。そして『Let’s Dance』の世界的なヒットを受けて、1983年、ボウイは4年ぶりのツアーに出ることになる。残念ながらスティーヴィーはツアーに参加はしていないが、それでもリハーサルの時点ではボウイのツアー・バンドと一緒に演奏をしている。本作は、そのシリアス・ムーンライト・ツアーに向けてスティーヴィー・レイ・ヴォーンも参加している1983年4月27日ダラスで行なわれたツアー・リハーサルを収録している。ツアー初日が5月18日ベルギーなので、まさにツアー直前のほぼ完成されたセットでのリハーサルであることが伺える。既にリハーサルを繰り返し充分に練度が上がった状態なのか、ボウイは非常にリラックスしている様子で、「Station To Station」ではいきなり、トンチンカンな歌詞で歌い出して笑いを誘っているのがわかる。リハーサルといってもゲネプロに近く、ほぼワンステージ通りに収録されているのも特徴である。本作は、スティーヴィー・レイ・ヴォーンが参加した1983年4月27日ダラスにおけるツアー・リハーサルの様子を高音質のサウンドボードで完全収録している。ツアー本編と異なりレコーディング通りのスティーヴィー・レイ・ヴォーンが参加しているのも聴きどころなら、いわゆるボウイ・クラシックスの楽曲もレイ・ヴォーンが演奏しているのである。
LOS COLINAS SOUNDSTAGE, DALLAS TEXAS U.S.A. April 27, 1983
DISC ONE
01. Star 02. Heroes 03. What In The World 04. Look Back In Anger 05. Joe The Lion 06. Wild Is The Wind 07. Golden Years 08. Fashion 09. Let's Dance 10. Red Sails 11. Breaking Glass 12. Life On Mars 13. Sorrow 14. Cat People 15. China Girl 16. Scary Monsters
17. Rebel Rebel 18. I Can't Explain 19. White Heat, White Light
DISC TWO
01. Station To Station 02. Cracked Actor 03. Ashes To Ashes 04. Space Oddity 05. Young Americans 06. Soul Love 07. Hang On To Yourself 08. Fame 09. TVC15 10. Stay 11. Jean Genie 12. Modern Love #1 13. Modern Love #2