
ルー・リードが鬼籍に入ったのが2013年。今となってはボウイもルー・リードもこの世にはいない。ボウイが演劇という別分野の素養を備えていたのに対し、ルー・リードは詩作の素地があった。詩作の素養は彼のポップな音楽の中に陰翳と知性を加えたといえる。人間の暗部を深遠に見つめる世界観はボウイを始め各界に多大な影響を及ぼしたと言える。ルー・リードとボウイのお互いの世界は親和性が高かったのであろう、ルー・リードのアルバム『トランスフォーマー』はボウイとミックロンソンの共同プロデュース作品として手掛けるなど、古くから交流を深めていた。そのルー・リードがボウイのステージに飛び入りして一緒に演奏することは自然の流れであろう。 ボウイが終生の代表作であり分身である『ジギー・スターダスト』をリリースしたのは1972年6月の事である。『世界を売った男』で試みたギター・サウンドは、このアルバムで開花したと言ってもよいだろう。それは「弾ける」ギタリストのミックロンソンの存在も大きい。ミックロンソンとの邂逅がボウイをこのような方向性に強く向かわせたはずである。このジギースターダストはアルバムを通して物語となっているが、そのコンセプトにおいても当時としては斬新なアイデアが盛り込まれており、ロック史上において最も重要なアルバムのひとつとされている。そしてアルバム『ジギースターダスト』に伴うツアーはアルバムのリリースに先立つ1972年1月から既に始まっていた。 ツアー当初はアルバム・ジャケットで着用している格子柄のツナギのような衣装を着てシンプルな演出で行なわれていたが、ツアーが進むにつれ演出は華美に変貌していき、濃い化粧を施したユニ・セックスふうのボウイは、奇抜できらびやかな衣装に身を包み各会場を異世界に誘うようなものとなっていった。足掛け2年に渡るツアーであっただけに、セット・リストは変化に富み、いまだその全貌は解明されていないが、音源として残されているだけでも、ビートルズの「This Boy」を始め様々なカバーやスタンダード・ナンバーが演奏されていたことが知られている。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Waiting For The Man」も、この時期ステージでボウイが好んで採り上げたカバー曲である。 本作は1972年11月25日オハイオ州はクリーヴランド公演を収録している。日程的にはおおよそツアー折り返し地点に位置する公演である。セットリストは「君の意思のままに」から始まり「ロックンロールの自殺者」で終わる定型であるものの、珍しいところでは「The Superman」や「Andy Warhol」、そして「John I’m Only Dancing」などが挙げられる。そして先述の「Waiting For The Man」も、この日セットリストに加えられている。この日が特別な日であるのは、この「Waiting For The Man」にルー・リード本人が飛び入りしてボウイと一緒に演奏に加わっている点である。裏ジャケットに当日の写真が使われているが、ボウイの横でルー・リードがギターを弾いて共演しているステージなのである。あらゆる世代を超えて影響を与えた二人の貴重な共演ステージはマニアならずとも必聴であろう。 1972年11月25日クリーヴランド公演を高音質で収録。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカバー曲「Waiting For The Man」をルー・リードと共演するという、ジギースターダスト・ツアーの中でも特別な日となったクリーヴランド公演である。
PUBLIC AUDITORIUM CLEVEOLAND, OHIO U.S.A. November 25, 1972
01. Hang On To Yourself 02. Ziggy Stardust 03. Changes 04. The Supermen 05. Life On Mars? 06. Five Years 07. Space Oddity 08. Andy Warhol 09. Drive In Saturday 10. The Width Of A Circle 11. John, I'm Only Dancing 12. Moonage Daydream
13. Waiting For The Man with Lou Reed 14. The Jean Genie 15. Suffragette City 16. Rock'n'Roll Suicide