
ストーンズの最新「NO FILTER」ツアー、今週のリリースはまず9月12日のミュンヘン公演から。そう、既にリリースされたハンブルク公演に次いで行われたショーとなります。現在も進行中(それにしても、ツアー進行中に音源やアイテムが登場するのが当たり前な時代となりましたね…凄いものです)の「NO FILTER」ツアーですが、結果としてツアー序盤のステージは彼らがライブの勘や調子を取り戻す過程をドキュメントするのがリリースされるアイテムの使命と化してきた感があります。実際にハンブルク公演はツアーの初日であったことに加え、いよいよ高齢のメンバーが「どっこいしょ」とばかりにステージに戻ってみせた姿を、別格のクオリティを誇るオーディエンス録音が捉えたドキュメントであったと。それに以前と違って現在のストーンズはその年齢の現実の一方、それ以前にロック界における随一のビッグネームであることから過去のような詰まったスケジュールのツアーは行わなくなり、ゆとりのある行程(それで採算が取れるのも大物の証でしょう)のライブ・スケジュールとなって現在に至っています。前のハンブルクから今回リリースされるミュンヘンまでの間にも二日間のオフが設けられています。 それでもさすがはストーンズ、この日の演奏からはハンブルクでみられたツアー初日的な硬さかが取れているのは事実。まだまだ演奏はスローな部分が多いのですが、初日と比べると肩の力がとれつつあることが伝わってくる。その証拠にショー序盤の「It's Only Rock 'n Roll」はハンブルクほどのもたつき感はありません。さらに、これは見過ごされていると言っても過言ではないかと思われるのですが、この日も「BLUE & LONESOME」からの二曲が抜群に素晴らしい。現在もニューアルバムが進行中と伝えられるストーンズが往年のようなロック・アルバムを作り上げる前に「BLUE &〜」のような円熟味のあるブルース・アルバムをリリースすることは必然であったように思えてなりません。それにこれらの二曲でのいきいきとした演奏はハンブルク公演でも冴えを見せていたものですが、ここではさらにいい感じの演奏へと仕上がっています。同じく素晴らしいのが何と言ってもレパートリー復活二度目の演奏となる「Dancing With Mr. D」。ハンブルクでは復活のインパクトが大きかった一方でミックとキースそれぞれがミスを犯してしまった。ところが今回は遂に危なげのない演奏を披露。こんなところからも硬さが取れてきたストーンズの様子が伺えます。それに何と言ってもバーナードとサーシャのバックコーラスがとてもいい雰囲気。もちろん、久々の演奏でハチャメチャさが漂っていたハンブルクでの復活も非常に魅力的なものだったのですが。ミュンヘンの前半はテンポの速いレパートリーがまったくないライブ構成が吉と出ており、この日のファンからのリクエスト・ソングも「Beast of Burden」だったのは結果として絶妙な選曲だったと言えるでしょう。演奏も中々の出来栄えを示していたのですが、唯一イントロでキースがまったく見当違いなフレーズを弾いてしまった点だけが汚点かと。この演奏を皮切りとして、キースの演奏のムラが目立つのもこの日の別の側面かと言えるかもしれません。「Paint It Black」からは今回のツアー序盤におけるストーンズのスロー・ローラーズぶりが見え隠れしていますし、同曲のようなテンポ速めな曲になるとハンブルクと同じようにもったりとした演奏となってしまう。おまけに「Happy」では歌い出しで思いっきり歌詞を間違えてしまい、キース自身が吹き出しそうになりながら歌う有様。その点、ミックは相変わらずの絶好調。ライブが終盤を迎えても息切れするどころかステージを縦横無尽に走る姿はもちろん「Satisfaction」では懐かしの「GOT LIVE IF YOU WANT IT」を彷彿とさせるような「ガッタ!」の連発が頼もしい限り。彼がミュンヘンで60年代からコンサートを開いてきたことに触れているのも面白い。それにキースのまったりプレイとミックのはつらつパフォーマンスの間に隠れがちではありますが、随所でロニーが頑張ったプレイを聞かせてくれている点は再評価してあげたいところ。ましてや本人が手術を終えて初のツアーであることを考えればなおさら。そして今回リリースの元になったオーディエンス録音ですが、それはハンブルクに負けないクオリティを誇るものとしてネット上に現れたもの。質感はそれと比べてよりマイルドなものなのも魅力的ですが、ここでも十分にオンなバランスの音像が素晴らしい。ダイナミックな迫力と言う点においてはハンブルクを好む方も多いかと思われますが、この丸みを帯びた録音状態もまた多くのマニアに好まれるものではないかと。もっとも、たまに曲間でマイクが風の通過音を拾ってしまうことがあり、さらには「You Can’t Always Get What You Want」の最中ではテーパーが話しかけられてしまう一瞬があり(ホントに一瞬で済んだの幸いでした)、いくつかのマイナス・ポイントが散見されますが、それらも全体的には微々たるもの。さらに細かい音質面の問題に関しても、抜かりないアジャストを加えていますので、この辺りは別記を参照ください。全体的にギターのバランスが大きく捉えられているのも今回の音源の魅力であり、ハンブルクとはまた違った迫力に圧倒させられることでしょう。中でも、先に触れたロニーのプレイの冴えなどは見事なクリアネスにて捉えられている。そして今回同時リリースとなるチューリッヒでの絶好調を予見させてくれる、ツアー序盤の緊張から解かれたストーンズの演奏を最高の音質にて封じ込めました!
Live at Olympiastadion, Munich, Germany 12th September 2017
Disc 1 (77:36)
1. Intro. 2. Sympathy for the Devil 3. It's Only Rock 'n Roll 4. Tumbling Dice 5. Out of Control 6. Just Your Fool 7. Ride 'Em on Down 8. Dancing With Mr. D 9. You Can't Always Get What You Want 10. Beast of Burden 11. Paint It Black
12. Honky Tonk Women 13. Band Introductions 14. Happy 15. Slipping Away
Disc 2 (67:20)
1. Midnight Rambler 2. Miss You 3. Street Fighting Man 4. Start Me Up 5. Brown Sugar 6. Satisfaction 7. Gimme Shelter 8. Jumping Jack Flash