エリック・クラプトンは多作なアーティストのひとりであろう。これほどのビッグ・ネームになると間隔が空いたりする時期があるものだが、60年代から現在に至るまで常に安定的に作品を発表している稀有な存在でもある。様々なバンドでギター・パートを担っていた末にソロ・アルバムを発表したのは1970年の事であった。ファースト・ソロ・アルバム『ERIC CLAPTON』では幾分細い声質であったヴォーカルもアルバムを経るごとに味わい深く熟成されているのが伺える。続く1974年発表の『461 OCEAN BOULEVARD』は全米ナンバー1ヒットとなり現在でもエリックの代表作とされている。このアルバムからボブ・マーリーのカバー「I Shot The Sheriff」がシングル・カットされ、これもシングルとして全米ナンバー1ヒットとなる。この成功に気を良くしたエリックは、この次のアルバム『安息の地を求めて』で大々的にレゲエを採り入れる事になる。 アルバム『NO REASON TO CRY』は1976年に発表された。前作のレゲエ調は色を薄め、ブルースを基本とした軽やかなロックといった趣で、女性コーラスをふんだんに盛り込みポップ色の強いものであった。レコーディングはカリフォルニアにあるシャングリラ・スタジオで行なわれた。陽光降り注ぐマリブの開放的な気候は作品にも色濃く反映されたものとなっている。このスタジオはザ・バンドが所有していたもので、ザ・バンドのメンバー他、ボブ・ディラン、ロン・ウッド、ビリー・プレストンなど、当時の華やかな交流から生まれた豪華なゲストと共にレコーディングが行なわれている。アルバムは大ヒットとは言えないまでも前作を上回るセールスを記録している。本作は、この『NO REASON TO CRY』のレコーディング・セッション音源を収録している。 「Sign Language」はボブ・ディランの提供による楽曲で、ここではエリックよりもディランの方がヴォーカルが目立っている。エリックも素晴らしいヴォーカリストではあるのだが、ディランの存在感の前では一歩譲らざるを得ないといったところであろうか。また同時期ディラン自身『血の轍』の名曲「愚かな風」などをレコーディングしている。またフロントの写真は別テイクで、裏ジャケットに掲載のロンウッドと並んだ写真は、エリックの服装から同じ日に撮影されたものであるのがわかる。多彩なゲストを招いてレコーディングされた『NO REASON TO CRY』セッション音源で残存が確認されているものを全て収録したタイトルである。
DISC ONE
ERIC CLAPTON
01. Sign Language 02. All Our Past Time 03. Country Jail 04. Carnival 05. Tried To Make The Devil Mad 06. Won’t Somebody Tell Me 07. Big River ERIC CLAPTON with BILLY PRESTON 08. Right Now 09. Right Now BILLY PRESTON 10. It’s Eric’s Birthday
BOB DYLAN 11. Adios Mi Corazon 12. The Water Is Wide 13. Idiot Wind
DISC TWO
VAN MOSSISON 01. Who Do You Love 02. Stormy Monday RICHARD MANUEL 03. What Would I Do #1 04. What Would I Do #2 05. What Would I Do #3 RICK DANKO 06. Hard Times YVONNE ELLIMAN and MARCY LEVY 07. Tenho Sede LEVON HELM 08. Steppin’ Out
INSTRUMENTAL 09. Jam #1 10. Jam #2