
同時リリースとなるロンドン・スタジアム二日間はどちらも同一テーパーによるオーディエンス録音であり、そのリリースが「LONDON STADIUM 2018」でした。その時にも触れましたように、二日間の中では5月25日、二日目の音源の方が迫力ある音質が魅力の録音です。あるいはクリアーな初日と迫力の二日目だと例えれば良いでしょうか。どちらもそれぞれに聞きやすいクオリティを誇ることは間違いないのです。しかし音質自体は若干ながら濁った印象を与えるのがロンドン・スタジアム二日目の弱点かもしれない。そこで今回のリリースに当たっては、抜けをよくするイコライズを敢行、元々の迫力やオンな音像もより活かした仕上がりのアッパー版へと進化させました。さらにこの日のテーパーは22日よりも周囲が盛り上がるエリアで録音したのでしょう、随所で合唱が盛り上がる場面が見受けられますが、幸いにも嫌味がないバランスで捉えてくれています。その時よりも周囲が賑やかでありながら、それでいて至近距離で騒ぐ輩がいないのがまた幸い。唯一、耳障りな個所を挙げるとすれば大声で騒ぐような代わりに、低い声でキースの「The Worst」を一緒に歌っている人物かもしれません。この曲をずっと一緒に歌い続ける様は大したものですが、そのねっちょり低音ボイスがビミョーかも。一方、ストーンズの演奏はロンドン初日よりもはっきり調子を上げてくれているのが実に頼もしい。まずオープニングが今度は「Jumping Jack Flash」。結局これを書いている時点で「Sympathy For The Devil」から始まったのはダブリンだけとなっており、毎回のオープニング・セレクトから目が離せない状況が楽しませてくれています。それが「Jumping Jack〜」ともなれば、ストーンズは余裕の演奏ぶり。ただし、初日と違ってこの日は序盤で演奏に勢いが足りない曲も散見されました。それが「Let's Spend The Night Together」と「Dead Flowers」という、どちらも今年のツアーでは初登場のレパートリー。こなれた「Jumping Jack〜」と比べて勢いが足りない感がいなめません。それら以外の曲はどれも好調であり、その辺りが昨年とはっきり違うところ。しかし「Wild Horses」はただでさえダブリンを上回る出来であり、さらにフローレス・ウェルチが加わってミックと一緒に歌い上げたことでいよいよ素晴らしいバージョンとなりました。実際にこの曲からストーンズはエンジンが全開となったようで、次の「You Can't Always Get What You Want」はロンドン初日をはるかに凌ぐ素晴らしい演奏が聞かれます。そのキー・パースンはロニー。やはり今回のツアーでは体調を回復したロニーの頑張りが演奏を素晴らしいものへと導いてくれる。おまけにエンディングはリプライズ。
先に触れた「The Worst」に次いでキースが歌った「Happy」は本ツアー初登場。昨年の同曲は演奏の勢いが足りないのは仕方ないとして、曲の構成を見失って演奏がグダグダなところまで堕ちる場合も少なくありませんでした。確かに、ここでも演奏の勢いは足りないのですが、昨年のようなグダグダ感がないのが今回らしいとこかと。どうやら「Sympathy For The Devil」はこの日を境にショー中盤で演奏されるのが定番となりそうな気配ですが、オープニングで演奏される時よりも演奏が白熱しているのは事実。特にキースのギターの激しさには違いがはっきりと。その勢いを引き継いだ「Midnight Rambler」ですが、これはもはや名演の域。なかなかの演奏だったロンドン初日をも軽く上回ります。ロニーは「You Can't Always Get What You Want」に次いで爆裂ギターを弾いていますし、ミックに至っては久々にロバート・ジョンソン「Come On In My Kitchen」の一節を口ずさむ。今回のツアー前半における「Midnight Rambler」最高の演奏だと断言いたしましょう。ところが、このまま絶好調でショーを突き進むかと思いきや「Start Me Up」から突如としてミックのテンションがガクンと落ちてしまう。既にマニアが指摘していたように、ミックは歌うのが辛そう。この不調がアンコール前まではかなり顕著で、音質が良いからなおさらリアルに伝わってきます。そんなハプニングを含めても全体を通して充実の演奏が聞かれる日であるのは事実ですし、ミックの変調もある意味では聞きどころだと呼べるはず。いずれにせよロンドン二日間はそれぞれに聞きどころがあるショーである一方、既にこれだけの演奏を聞かせてくれるのだから、今回の「NO FILTER」ツアーはこれからも本当に楽しみ!
Live at London Stadium, London, UK 25th May 2018 PERFECT SOUND(REMASTERED)
Disc 1 (64:29)
1. Intro 2. Jumping Jack Flash 3. Let's Spend The Night Together 4. It's Only Rock 'n Roll 5. Tumbling Dice 6. Just Your Fool 7. Dead Flowers 8. Wild Horses (With Florence Welch) 9. You Can't Always Get What You Want 10. Paint It Black 11. Honky Tonk Women
12. Band Introductions 13. The Worst 14. Happy
Disc 2 (53:40)
1. Sympathy For The Devil 2. Miss You 3. Midnight Rambler 4. Start Me Up 5. Brown Sugar 6. Gimme Shelter 7. Satisfaction