
アクセル・ローズやSKID ROWも敬愛する伝説のロックンロール・バンド、HANOI ROCKS。その彼らが悲劇と立ち向かいながらロックし続けていた“1985年”を極上クオリティで伝えるプロショットがリリース決定です。HANOI ROCKSと言えば、その影響力と共に語られるのが非業の宿命。特にラズルを失った交通事故は決定的で、彼らを解散に追い込むには十分すぎる出来事でした。しかし、ラズルを失った彼が即座に解散したのかというと、そうではありません。悲劇に立ち向かいながら、一度はラズルの魂に応えるようにロックンロールを続ける決意をしていました。本作に収められているのは、そんな悲劇と解散の合間である「1985年1月4日」。故郷ヘルシンキでのライヴを極上マルチカメラで捉えきったプロショット映像なのです。ここでラズルの死去から解散までの流れを振り返ってみましょう。
・1984年12月8日:ラズル死去 ・1984年12月:テリー・チャイムズ加入・1985年1月:故郷ヘルシンキでライヴ活動再開 【本作】・1985年3月:サミ・ヤッファ脱退→レネ・ベーグに交代 ・1985年5月:ポーランドでミニツアー→公式ライヴ盤『ROCK & ROLL DIVORCE』
・1985年6月17日:HANOI ROCKS解散 ・1985年6月21日:ラズルに捧げられたMOTLEYの『THEATRE OF PAIN』が発売
以上が悲劇にまつわる出来事の概要。本作に収められた「1月4日」は再始動2公演目にあたるショウでした。このコンサートはテレビ収録され、翌5日に世界的に放送。フィンランドの国民490万人(1985年当時)に対し、この放送を見たのは全世界2億人に及んだそうです。本作は、そんな歴史的放送の史上最高峰クオリティ版。デジタル時代の再放送をマスターにしており、その画質たるや現代でも特級の美しさ。30年以上前のアナログ撮影なのは間違いないのですが、とてもそうとは思えない。まさに「完全無欠のオフィシャル級」としか呼べない超・美麗な光景が全編で繰り広げられる逸品なのです。そのクオリティで描かれる“1985年のHANOI”こそが胸に迫る。マイケル・モンローはいつものようにグラマラスに暴れまくり、元CLASHのテリー・チャイムス(ちなみに彼はこの後にBLACK SABBATHへも加入します)は善戦。しかし、いつものようなエネルギーに届かない。実際、それも無理はないのです。何しろラズルの悲報から約1ヶ月であり、再始動2公演目。冒頭の「Back To Mystery City」でもラズルについて捧げるMCを口にしますが、それ以上にモンローの表情に浮かぶ吹っ切れない影。暴れれば暴れるほど、エネルギーを絞り出すほどに砂を噛む感覚に襲われるライヴなのです。まさに、終わりの始まり。決定的な悲劇に狂った運命に全力で抗いながら、その渦に飲み込まれていくHANOI ROCKS。ラズルは決してオリジナル・メンバーではありませんし、ハタから見れば「悲劇を乗り越えるバンドもいっぱいいるじゃない」と言いたくもなる。しかし、それを目指しながらやはり無理だったのが無言のうちに伝わる映像。ロックが、バンドが生き物なのだと思い知らされる極上プロショットなのです。誤解しないで頂きたいのは、本作に詰まったロックンロールがダメなわけではない事。運命を跳ね返さんとする気迫は凄まじく、まさに“熱演”の見本。これから全盛期を迎えようとしていたHANOI ROCKSの名曲群がタップリと味わえる極上ライヴ作品です。しかし、強烈な完成度だからこそ、灼熱の熱演だからこそ、悲しみも去来してしまう歴史的大傑作。そんな幾重にも感情の波が押し寄せる1枚。
Kulttuuritalo, Helsinki, Finland 4th January 1985 Original Broadcast Date: 5th January 1985 (39:29)
1. Back To Mystery City 2. Boulevard Of Broken Dreams 3. Motorvatin' 4. Underwater World 5. Tragedy 6. Malibu Beach Nightmare 7. Taxi Driver 8. Million Miles Away 9. Up Around The Bend
Michael Monroe - Vocals, Saxophone Andy McCoy - Guitar, Keyboards Nasty Suicide - Guitars Sam Yaffa - Bass Terry Chimes - Drums
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.40min.