1986年9月1日、マーク・ボールズ在籍中にも拘らずジェフ・スコット・ソートをステージに立てて行われた貴重なノースダコタ州マイノット公演の極上映像「Minot 1986」。"86年9月1日、ジェフ・スコット・ソート"・・と聞いて「おや?」と思われるファンも多いと思いのではないでしょうか。というのは、この時期はマーク・ボールズがまだバンドに在籍中だったからです。しかしここで歌っているのは間違いなくジェフで、マークがまだ在籍しているのに、この日はジェフがステージで歌っている訳です。勿論マークはまだ解雇されていませんから本作公演以降も9月20日までの公演についてはマークが歌っている音源が現存しており、その様子は既発の名タイトル『MARK BOALS YEARS VOLUME 2 』でも確認する事が出来ます。史実を振り返るとこうしてジェフがマーク在籍中にステージに立った記録は9月29日にも確認されますが本作もそのひとつで、これは86年晩夏の時点でマークを解雇する事がほぼ決定していた事を裏付ける決定的な証と言えるでしょう。勿論マークとジェフも認識していたと思いますが、イングヴェイやマネージメントの思惑は本公演の前日(8月31日)から始まった大々的なツアー開始と同時にジェフを実際のステージに何度か立たせる事で、10月のTRILOGYリリース時期には時間的ロスの無いツアー・シンガーとしての引き継ぎが既に完了しているという狙いがあったと思われます。しかしそれだけにこの映像は非常に貴重なドキュメンタリー映像ともなっており、そのレアな公演が極上AUDショットとして映像収録されている訳ですから、これは熱心なファンであればこそ見逃せない必見映像となっているのです。カメラは会場後方、ステージに向かって中央やや右側からのショットで、画質と音質はこの時代のものとしては最良の部類に入る素晴らしいものです。柵か何かにカメラを固定しているようで映像ブレも殆ど無く、ロングでは会場全体を程好く見渡し、アップではかなり近いショットとして鮮明な映像が映し出されるというバランス感抜群の映像なのも魅力でしょう。しかもこうしたAUD映像にありがちな経年劣化の色の滲みがほぼ皆無なため、まるでつい先日収録したかの様な鮮度の良い画質を保っている点も特筆されます。演奏面も興味深く、例えば「I'll See The Light, Tonight」ではギターソロ直後にブレイクが入る86年夏独特のスタイルとなっていますが、この日は3回もブレイク・ポイントを入れるという異例の演奏です。このブレイクを入れる様子は前述の既発タイトル『MARK BOALS YEARS VOLUME 2』で聴ける周辺の他日音源でも確認出来ますが、ツアー序盤は日によってそれぞれブレイクを入れるタイミングと回数が異なっているのが特徴で、スタイルがまだ完全に固まっていません。だからこそこの位置とタイミングで3回も入れているのは極めて珍しいケースですし、それが映像として確認出来る点も研究素材としての面白さと価値を際立たせています。またこの時期の公演はまだ大物バンドに帯同してのショート・プログラムだった為に「キーボード・ソロ」→「Icarus' Dream Suite Op.4」も約3分程度の短いメドレーとなっていますが、実はこの部分も大きな見どころです。このシーンは他日の公演でもCDタイトルで音のみを聴くと何となく通り過ぎてゆくシーンですが、映像としてこの部分を観てみるとイングヴェイとイェンスという2人の音楽的中心人物にまずスポットを当て、その上でタフな「I Am A Viking」を続けて演奏する事でバンドのパワー・バランスや楽曲の大きさをより強くアピールする為の"視覚に訴える為の3分間"だった事に気付かされると思います。そしてそこから更に、ショート・プログラムである事を逆に利用したショウ全体の巧みな構成もじんわりと感じ取れるのではないでしょうか。勿論イングヴェイのソロも大きな見どころで、ソロ突入時の高速フレーズをネックに両手を添えながらハンマリングのみでやっている様子も興味深いですし、ピッキングの途中に素早くライトハンドを交えながら進むギター捌きも鮮明に記録されています。中には「Eruption」をこの日は歯で弾くという大道芸もありますが、しかしそうした大技シーンであっても音楽そのものには全く隙が無いという、最後まで目を離せないソロ・シーンが満載となっています。マーク在籍中だった為に恐らくジェフとのリハーサルはそう多くはこなしていないと思われますが、しかしその僅かな期間で新曲の構成やアピールの仕方を完全に自分のモノにし、米国ツアー開始直後にこれだけ完成度の高いショウをこなすジェフのフロントマンとしての高い能力に驚かされるでしょう。勿論バンドの演奏能力の高さやイングヴェイのギター捌き、そしてその響きに圧倒されること請け合いの映像です。86年の夏の終りにあったシンガー再交代時期の貴重な公演を、当時の映像としては稀に見るこの素晴らしい音質と画質を誇る本作で是非御堪能下さい!!
Live in Minot, North Dakota, USA 1st September 1986 AMAZING SHOT (47:44)
1. Intro. 2. I'll See The Light, Tonight 3. Queen In Love 4. Far Beyond The Sun 5. Fire 6. Keyboard Solo 7. Icarus' Dream Suite Op.4 8. I Am A Viking 9. Guitar Solo 10. You Don't Remember, I'll Never Forget 11. Black Star
Yngwie J. Malmsteen - Guitar Jeff Scott Soto - Vocals Jens Johansson – Keyboards Wally Voss - Bass Anders Johansson - Drums
COLOUR NTSC Approx. 48min.