
旧WHITESNAKEでブルース色の源泉だったバーニー・マースデン、ミッキー・ムーディ、ニール・マーレイ。彼ら3人がWHITESNAKEの名曲を演奏するプロジェクト“M3(3人の頭文字から命名)”の極上レア・プロショットがリリース決定です。古き良きWHITESNAKEの復刻プロジェクトと言えば、THE SNAKESやTHE COMPANY OF SNAKESといった名前も聞いたことがあると思います。こうしたバンド群は名前こそ違えど、コンセプトは同じ。さまざまな名シンガー達を迎えつつ、バンド名を変えていった一連のシリーズでもありました。良い機会ですので、ここで、そのプロ記録とシンガーの変遷を整理してみましょう。
【THE SNAKES (1998-1999)】●スタジオ作『ONCE BITTEN(1998年)』●ライヴ盤『LIVE IN EUROPE(1998年)』Vo:ヨルン・ランデ【THE COMPANY OF SNAKES (1999-2002)】●ライヴDVD『LIVE AT ABBEY ROAD(2000年)』Vo:ロバート・ハート
●ライヴ盤『HERE THEY GO AGAIN(2001年)』●スタジオ作『BURST THE BUBBLE(2002年)』Vo:ステファン・ベルグレン(注:この他、ゲイリー・バーデンも在籍) 【M3 (2003-2006)】●ライヴ盤『CLASSIC SNAKE LIVE(2003年)』Vo:トニー・マーティン
●ライヴDVD『ROUGH AN' READY(2004年)』Vo:ステファン・ベルグレン&ドゥギー・ホワイト●本作(2005年)Vo:ステファン・ベルグレン
……と、このように約9年間にわたって活動していました。上記はほぼ公式作品ですが、唯一の例外が本作。最後のバンド“M3”でももっとも後期にあたる「2005年1月26日ロルシュ公演(ドイツ)」のマルチカメラ・プロショットです。初の非公式プロショットが発掘されたわけですが、そのクオリティは公式品に迫るもの。ドイツのロカールTVで収録されたようなのですが、テレビ用と言うよりは、いかにも“録って出し”な流出っぽさが匂い立つ感じ。クラブ以下の狭い狭い会場のわりにカメラの台数は多く、ドアップは表情どころか顔が画面に収まりきれず、手元もハミ出すほどに近い。ショウケースの素材用だったのか、ホームビデオ寸前の手作り感と、いかにもプロショットなハイクオリティが両立した映像美なのです。そのクオリティで描かれるブルースロックは……もう、絶品! わずか5曲・40分ほどの短いプロショットなのですが、中身は特濃。とにかくディープで、芳醇なブルースが滲み出す。先述の通り、かなり荒っぽく、ややチープなプロダクションなわけですが、これがまるで50年代ブルースのような深みを滲み出している。どうもロックバンドはブルースでもやたら分厚くてゴージャスな音にしたがる傾向にありますが、むしろ“生”をムキ出しにしてくれた方がブルースらしい。シカゴブルースの歴史的大名盤『AND THIS IS MAXWELL STREET』から雑踏感だけを抜いた感じと言いますか……とにかく、えらくリアル。本家を含めても、ここまでWHITESNAKE曲の根底に流れるブルース色を濃厚に感じさせてくれるサウンドは思いつきません。また、ショウ自体も実に素晴らしい。まず、シンガーのステファン・ベルグレン。歴代シンガーで一番カヴァデールに似ていたのはヨルン・ランデですし、有名なのはドゥギー・ホワイトやトニー・マーティンでしょう。しかし、ベスト・シンガーは間違いなくステファン。彼もまたカヴァデールと同系統ではあるのですが、“モノマネ感”がなく、バツグンに巧い。変に「どこまで似ているか」が気にならず、それでいて違和感ゼロのディープヴォイスで名曲をたっぷり聞き込めるのです(ちなみに、歌唱力と黒人度なら元BAD COMPANYのロバート・ハートが一番だと思われますが、残念ながら彼はあまりWHITESNAKEナンバーに馴染みがなかったようです)。そして、わずか5曲ながらセットも美味しい曲の塊。特に「Ain't No Love In The Heart Of The City」「Crying In The Rain」「Take Me With You」の3曲は貴重すぎる。「Ain't No Love In The Heart Of The City」「Crying In The Rain」は公式映像『ROUGH AN' READY』にもありましたが、前者はステファンとドゥギーのデュエット、後者はドゥギーが歌っていた。正直なところ、ドゥギーとWHITESNAKEナンバーは相性が悪く、ブルース色がすっかり落ちてモロのハードロックになっていました。しかし、本作では全編ステファン。「Crying In The Rain」では本家カヴァデールさえも凌駕するブルースを滴らせ、「Ain't No Love In The Heart Of The City」もボビー・ブランドのオリジナルに肉薄する。さらに最後の「Take Me With You」は『HERE THEY GO AGAIN』『ROUGH AN' READY』でも聴けなかったレア・ナンバーであり、21世紀WHITESNAKEよりも遙かに“白蛇っぽい”サウンドを轟かせてくれるのです。たとえ新曲を書かずとも、新作を出さずとも、永遠に続けて欲しかったCLASSIC SNAKEの復刻プロジェクト。その“準公式”とも言える1本です。錚々たるシンガー達が名を連ねる中で、なぜ「ステファンがベスト」と言われるのか。その理由を千の言葉よりも雄弁に物語る大傑作プロショット。旧WHITESNAKEでもブルースの源泉だったバーニー&ミッキーだけが引き継いだ“本物の旨み”。
Live In Lorsch, Germany 26th January 2005 PRO-SHOT (40:06)
1. Ready An' Willing 2. Ain't No Love In The Heart Of The City 3. Crying In The Rain 4. Fool For Your Loving 5. Take Me With You
Bernie Marsden - Guitar, Vocal Micky Moody - Guitar, Vocal Neil Murray - Bass Stefan Berggren - Vocal Jimmy Copley - Drums (RIP)
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.40min.