1984年に放送されたジョン・レノンの日本特番が登場です。本作は某民放局の音楽番組『スーパーステーション』で、ジョンの銅像を建立する活動基金を呼びかける特番でした。本作を記録したのは、国内の洋楽録画マニア。当店では、このマニアが録画した素材を多数ご紹介していますが、そのクオリティは異常。時代時代のハイエンド機材を使い、保存状態も完璧。毎度「レーザーディスクか? 放送局マスタ?か?」と疑ってしまうほどのハイクオリティ映像で日本の洋楽史をアーカイヴし続けている。本作は、そんな秘蔵コレクションの1本なのです。本作は、そんなコレクションでも強烈な1作。なんと言っても番組が凄まじい。当時、リアルタイムで見ていた方からも苦笑いと共に名前が上がる伝説の番組でして、演出がとにかく“寒い”。「テレフォンブース」や「テレックスブース」が設置され、恐らくはなにも分かっていない女性スタッフ5名(呼称は「クルー」)が海外の最新情報を収集(?)するという設定。その1人ひとりが「私たちが探ります!」と言わんばかりのテンションで挨拶していきつつ、それでもカンペをガン見しながら噛みまくるというお粗末ぶり。「L.A.のリズからの情報ですが……」などと口走る度に「それ何モンだよ?」「お前ら科学特捜隊か?」と突っ込みたくなる。英単語だけ妙に流暢なルー○柴調ながら笑わせようとはしていない空気も微妙なら、背後に並べられた奇妙な白いマネキンも「?」。番組としては「アートっぽい」つもりなのかも知れませんが、どう見ても局の美術部門から拝借しただけの低予算が丸出し………。しかも、この放送回は銅像建立の寄金呼びかけということもあって“超安い24時間テレビ”のようなムード。基金に参加すると銅像に名前が刻まれるという運動で、銅像を制作したアーティストや“ファンの代表”とされる一般人も出演させてやたらと煽る。この一般人も緊張しているのかジョンの魅力を訊かれて「私は眼鏡が好きでした」「彼が持つ雰囲気ですね」と答えるのが精一杯。そんな一般人に銅像の話を振り、「ぜひ(運動に)参加したいです」「ニューヨークにいつでもジョンに逢えると思うととっても嬉しいです」「この銅像に自分の名前を彫ってもらえたら凄く嬉しいです」と言わせ、「この運動はレノンファンだけでなくて、すべての音楽ファンにとって魅力的なものですね!」と畳みかける。もう、ほとんど深夜の通販番組ノリ。誰だよ、この台本書いたの……。ここで念を押しておきますと、この銅像を制作したブレット・L・ストロングは、ハリウッド俳優やセレブをモチーフにした作品を手がける人物ですし、この翌年には実際にセントラル・パークにストロベリー・フィールズが開設されます(設置されている銅像は別の模様)。決して怪しい運動ではない(ハズ)なのに、本作を観ていると「本当にストロベリー・フィールズと同じ運動なの?」との疑念が頭をよぎってしまう。素晴らしいプロモ・クリップの数々も流されるのですが、そこにも「記念碑にあなたのお名前を刻む費用と、大理石等の購入費として5,000円の協力金で……」のテロップが微妙な気分にさせる………。そんな乱高下にかき乱された心にトドメを刺すのが消費者金融のスポンサー表示。いや、別に年中基金を募っている番組ではないし、スポンサーはいつもと変わらない。別に怪しくない。たまたまだ。怪しくはないんだ………そう自分に言い聞かせてしまうほどハマっているのです。何とも言えない“1984年ならでは”・“この番組ならでは”の強烈なムードが爆発する1枚。日本メディアのズレっぷりとジョンへの想いがすれ違う傑作映像。この心くすぐり、背筋がむず痒くなる気持ち。
Broadcast in Japan 1984 (24:49)
1. Introduction (feat. Woman) 2. Slippin' and Slidin' 3. Imagine 4. I'm Stepping Out 5. The People's John Lennon Memorial Movement 6. Telex from George Harrison 7. Nobody Told Me 8. The People's John Lennon Memorial Movement 9. Talk with fans 10. Grow Old With Me 11. Stand By Me
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.25min.