1999年の暮れ、35年ぶりに“キャバーンクラブ”に帰ってきたポール・マッカートニー。オフィシャル作品『LIVE AT CAVERN』ともなっているスペシャルショウの日本放送バージョンがリリース決定です。本作に収められているのは公式映像と同じ「1999年12月14日キャバーンクラブ公演」。ビートルズの原点となるクラブに300名の限定ファンを迎えて行われた特別ライヴです。もちろん、オフィシャルDVDのコピーではなく、当時日本放送されたバージョン。当店では、国内のコアな録画マニアの記録をDVD化しておりますが、本作もそのひとつ。今までの傑作群と同様に、当時の極上マスターを精緻にデジタル化しています。日本放送だけに、ポールのMCや曲の由来を(マニアックに)解説するテロップも流れるのですが、そのフォントの美しさと言ったら、デジタル大全盛の現代の眼にもディテールが際立つ映像美です。とは言え、あくまでも18年前のエアチェック。公式で究極のオフィシャルDVD化が済んでいるライヴだけに、本作はクオリティ面では流石に及びません。では、なぜこうしてご紹介するに至ったか……それは取りも直さず、世紀末が歩み寄る“1999年の薫り”なのです。ライヴ本編の前にはポールと“キャバーンクラブ”の由来を語る特番風コーナーが加えられ、今から始まるショウの特別さを際立たせる。その構成、語り口はロック放送とビートルズへの理解が進んだ“1999年の日本”の姿が浮かび上がるのです。それ以上に強力なのが、合間合間に挟まるCMの数々。「1999年なんて最近じゃないか」と思いきや、18年という時間は意外なほど重い。携帯電話のCMでは「256色カラー画像」「最大3000文字メール」「3音声メロディ」「動画再生」が誇らしげに謳われ、とうに絶滅して久しい小さい画面がまるで巨大モニターかのように喧伝される。そのCMのイメージキャラクターは、昨年歌舞伎役者と再婚した大物女優で、まだ芸人と初婚すらしていないフェロモンを振りまくのです。さらに90年代に音楽業界を席巻した某音楽企業のCMも入りまくり、ガン黒がパラパラを踊るわ、ゲットワイルドな鍵盤奏者が忍び寄る不幸も知らずに微笑むわ、沖縄出身の女性猿顔シンガーが人間に進化したばかりだわ……。もうこれだけで降参したいところですが、本作はまだまだ容赦なし。「Z-1」なる謎のアイドルグループに今をときめく大物女優の姿があったり、ドリームキャストが現役だったり、フィギュアスケートのCMに知ってる顔が1人もなかったり、もう内容も忘れた「cdmaOne」に「2」が誕生したり、シュワルツェネッガーが政治家になる前だったり……そんな猛攻の中で、スーパーヒトシくんが今と全く変わってなかったり。ハンパに記憶が新しい分、もう脳ミソがしっちゃかめっちゃかになる。そんな時間の重みが要所要所で挟まるからこそ、当時57歳だったポールや53歳デイヴ・ギルモアの若々しさも際立って見えるのです。リンダが亡くなって約1年半。再び立ち上がったポールの決意が滲んでいたライヴ・アット・キャバーン。ポールの人生を振り返るだけならば、オフィシャルDVDだけで十分です。しかし、その時、その瞬間を私たちも生きていた。私たちの側から時代を感じ、その空気の中でポールを見つめていた自分と対面する。本作は、そんな1枚なのです。この郷愁は日本放送だからこそ、日本の放送でしか味わえない。18年前に歩んでいたご自身の人生ステージと共に、ポールの勇姿に再会していただきたい。そんな想いを込めた傑作ギフト。
Live at Cavern Club, Liverpool, UK 14th December 1999
1. Opening/Biography 2. Introduction 3. CM 4. Honey Hush 5. Blue Jean Bop 6. Brown Eyed Handsome Man 7. CM 8. Fabulous 9. What It Is 10. Lonesome Town 11. Twenty Flight Rock 12. CM 13. No Other Baby 14. Try Not To Cry 15. Shake A Hand
16. All Shook Up 17. CM 18. I Saw Her Standing There 19. Party 20. End Credit 21. CM
Paul McCartney - Vocal, Guitar David Gilmour - Guitar Ian Paice - Drums Mick Green - Guitar Pete Wingfield - Keyboards Chris Hall - Accordion
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.56min.