ファンの夢を叶えた“MASTERWORKS TOUR 2000”。その模様をマルチカメラ・プロショットで収めた傑作がリリース決定です。このツアーは、まさに“プログレの夢”でした。何しろ、演奏されるのはクラシックYESの大曲のみ。それも『サード・アルバム』から『リレイヤー』まで、YESが真にプログレッシヴだった時代の超名曲“だけ”を徹底的に演奏するのですから。しかし、その一方で“泡沫の夢”でもありました。本来であれば、そのまま全世界を巡って作品も残すべきだったのですが、わずか2ヶ月弱の北米ツアーのみで終了。結局、日本公演はおろか、フルスケールの公式作品も残されませんでした。さらに儚さが募るのは、このツアーだけの特別ラインナップであったこと。ツアー前にはビリー・シャーウッド&イゴール・コロシェフを迎えた“6人YES”だったわけですが、“MASTERWORKS TOUR”を前にビリーが離脱。“イゴール入りの5人”という編成だったのです。ここで、当時の流れを確認してみましょう。
《ビリー&イゴール参加》・1997年10月-1998年5月: OPEN YOUR EYES TOUR・1998年6月-10月: 30TH ANNIVERSAY TOUR 《THE LADDERリリース》・1999年9月-2000年3月:THE LADDER TOUR 《ビリー離脱》・2000年6月-8月:MASTERWORKS TOUR ←★ココ★ 《イゴール離脱/トム・ブリズリン参加》
・2001年7月-9月:THE YESSYMPHONIC TOUR 《MAGNIFICATIONリリース》
このように“MASTERWORKS TOUR”終了後にイゴールも離脱。YESは専任キーボーディスト不在のまま、『MAGNIFICATION』へと歩みを進めていったのです。セットリストもアンサンブルも貴重ながら、記録の乏しい“MASTERWORKS TOUR”。本作は、その悔しみを晴らすフルショウのプロショット映像なのです。そんな本作に収められているのは「2000年6月21日コンコード公演」。全30公演の“MASTERWORKS TOUR”でも2公演目となる極初期コンサートです。本作のクオリティは素晴らしいプロショットながらも、実に個性的。マルチカメラではあるのですが、いわゆる公式作品や放送番組とはニュアンスがかなり異なる。恐らく、会場スクリーン用の映像が流出したものと思われ、カメラの切り替えもラフでメンバーのドアップがたっぷり。フロント3人(スティーヴ・ハウ/ジョン・アンダーソン/クリス・スクワイア)のアップが多いのですが、特にクリスとハウは手元まで超ズーム。会場客にとっては現場のムードやステージ全景は目の前にあるわけで、遠方席のためにメンバーの表情や手元こそが重要。それらが存分にフィーチュアされたカメラワークであり、精緻な演奏ぶりが手に取るように分かる。サウンドもまた、その光景に相応しい。商品用でも放送用でもない音声は、未加工ゆえの生々しさが凄い。すべての演奏が1音までも超克明なまま、サウンドボード卓から脳ミソへ直結サウンドで流し込まれるのです。そんなクオリティで描かれる“MASTERWORKS TOUR”は、まさにプログレッシヴ・パラダイス。70年代前半の各アルバムでも目玉となった大曲がズラリと並び、ジョンが「24年ぶりだよ」と語る「Gates Of Delirium」も圧倒的。手慣れ感も流し感もなく、1曲1曲に集中しながら演奏を重ねる。アレンジはオリジナル重視ではあるものの、演奏はノスタルジア重視ではないのです。さらに“イゴール入りの5人”だからこそタイト感も素晴らしい。脱退したビリーには申し訳ないですが、“90125YES”の曲がないセットにはセカンドギターが入り込む余地はなく、5人で必要十分。イゴールはオリジナルに十分な敬意を払いながらも現代的な音色でカラフルに仕上げる。もちろん、リック・ウェイクマン本人こそが最上ではあるものの、似て非なるからこそ“特別感”も滲む。この“純プログレ感”と“特別感”の両立は、それこそ『リレイヤー』時代以来のアンサンブルなのです。泡沫に終わった“プログレの夢”。それをマルチカメラ・プロショットで収めきった逸品中の逸品。“公式代わり”とはちょっと違うものの、だからこその生々しさで迫る大傑作映像です。極めてレアかつ素晴らしいアンサンブルで描かれる“大作主義の極地”。細部まで極名名プロショットでたっぷりと味わい尽くしてください。
Live at Concord Pavillion, Concord, CA. USA 21st June 2000 PRO-SHOT
1. Young Persons Guide To The Orchestra 2. Close To The Edge 3. Starship Trooper 4. Gates Of Delirium 5. Leaves Of Green 6. Heart Of The Sunrise 7. Ritual 8. I've Seen All Good People 9. Roundabout
Jon Anderson - Vocals Steve Howe - Guitars Chris Squire - Bass Alan White - Drums Igor Khoroshev - Keyboards
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx. 121min.