本作は、当時リリースされたビデオ作品『RADIO K.A.O.S.』(スタジオ・アルバムと同題のため、通称『RADIO KAOS VIDEO EP』とも呼ばれます)。もちろん、現在では廃盤になって久しいビデオ作品ですが、それを精緻にデジタル化した1本。アルバムから4曲「Radio Waves」「Sunset Strip」「Four Minutes」「The Tide Is Turning」が抜粋で映像化されており、演奏シーンと交互に物語のシーンが繰り広げられる映像作品です。当時よくあった“クリップ集ビデオ”的ではあるのですが、本作の価値はそれ以上。何と言っても難解だったアルバムのストーリーを“目で観る”カタチで伝えてくれる数少ない作品だったのです。その『RADIO K.A.O.S.』のあらすじを簡単にご説明しますと……
南カリフォルニアにある架空のラジオ局「RADIO K.A.O.S.」の人気D.J.ジムと、植物人間でありながら超能力を持つ少年ビリーによる物語。身体障害者でもある主人公ビリーは、双子の兄ベニーに世話されながら英国で暮らしていたが、ベニーが殺人事件に巻き込まれ、カリフォルニアの伯父の元に移住する。そこで生身でラジオ電波を交信できる特殊能力に目覚めたビリーは、D.J.ジムと共に自分たちのラジオ局「K.A.O.S」を開設し、電波で人々をコントロールしようとする権力者と戦うのであった。交信を重ねていくうち、ビリーの超能力はどんどん強力になり、第二次大戦中の原爆開発プロジェクト「マンハッタン計画」やレーガン大統領、サッチャー首相ら、当時の政治家を交えながら、核の脅威が描かれる。物語の終盤では、ビリーの超能力は政府のスーパーコンピュータを操作できるほど強力になり、核兵器を制御して世界の混乱を収め、大団円を迎える。もちろん、たった4曲でこうしたストーリーを語り尽くせるわけがありませんし、演奏シーンもたっぷり。完全な理解というよりは、“イメージ”を伝える作品ではありました。しかし、短いながらも懲りようはさすがロジャー。単に貴重な廃盤映像という以上に、“RADIO K.A.O.S.”の世界をのぞき見ることができる作品です。
(19:31)
01. Intro 02. Radio Waves 03. Jim Ladd talks with Billy 04. Sunset Strip 05. DJs Talk 06. Four Minutes 07. The Tide Is Turning
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.20min.