本作は、海外マニアが制作したマルチカメラ映像。映像には“THE LAMB LIES DOWN ON BROADWAY TOUR”に残された貴重な8ミリフィルムをメインに繋ぎ合わせ、足りないパートにはイメージカットも活用。そこにステレオ・サウンドボード音声をシンクロさせ、可能な限り長く、美しく“THE LAMB LIES DOWN ON BROADWAY TOUR”の視角化に挑んだ映像作品なのです。使用された8ミリは4公演分で、ロチェスター公演(1974年12月17日)、グランドラピッズ公演(1975年2月2日)、ベルン公演(1975年3月29日)、リバプール公演(1975年4月19日)。使用サウンドボードはロサンゼルス公演(1975年1月24日)が採用されています。そのクオリティは絶品。もちろん、当時の8ミリフィルムらしいヴィンテージ感覚たっぷりではあり、4公演分だけにクリティにバラつきはある。しかし、その鮮度が極めて素晴らしく、ほとんどのシーンで色あせやフィルムヨレもなく、鮮やかな発色は当時そのものの光景を伝えてくれるのです。しかも、視点が凄い。4公演分のショットはさまざまな方向から撮影されており、えらくバラエティ豊か。70年代の8ミリと言うと、暗闇に小さくメンバーが浮かぶようなものが多いのですが、本作はピーター・ガブリエルの表情ドアップまでたっぷりとある。同じシーンの繰り返しもなくはないものの、それも極少なのです。また、当時の8ミリの特徴と言えば、短さ。現代のように長時間の撮影は望むべくもなく、数秒から十数秒ほどのカットばかり。本作に採用された8ミリも短いのですが、それが次々と繋がれることにより、逆にプロショットのようなマルチカメラ感になっている。さすがに全曲・全長の再現はできなかったものの、主要曲を押さえた1時間以上もの映像作品に仕上がっているのです。そんなクオリティで描かれる『眩惑のブロードウェイ』の物語ショウの素晴らしいこと……。やはり目を惹くのはピーター・ガブリエルでしょう。序盤では革ジャンに身を包み、主人公レエルになりきって歌うわけですが、その歌詞世界をアクションで表現していく演技力は当代随一。そして、彼の本領が発揮されるのはショウ中盤。「The Waiting Room」ではバックスクリーンに怪人のシルエットが浮かび上がって怪しく踊り狂い、「The Lamia」では回転するカーテンの中で歌う。そして、全身タイツのパントマイムから伝説の肉球の怪物スリッパーマンへ変身する「The Colony Of Slipperman」へ……。その異様な姿に加え、くねくねと奇っ怪な動きまでハッキリと、アップで体験できる極上映像は、まさに“THE LAMB LIES DOWN ON BROADWAY TOUR”の真骨頂。もちろん、「The Musical Box」では老人も登場します。海外マニアが膨大な時間と執拗な手間、そして底知れぬ愛情で組み上げた傑作映像作品です。残念ながら“THE LAMB LIES DOWN ON BROADWAY TOUR”のフル映像とはならないわけですが、それでも1時間以上という長尺で『眩惑のブロードウェイ』の世界に浸りきれる。そんな至福の刻をくれる銘品。
Audio: Shrine Auditorium, Los Angeles, CA. USA 24th January 1975 (Stereo Soundboard) (62:28)
01. The Lamb Lies Down on Broadway 02. Fly on the Windshield 03. Broadway Melody of 1974 04. Cuckoo Cocoon 05. In The Cage 06. The Grand Parade Of Lifeless Packaging 07. Back in NYC 08. Hairless Heart 09. Counting out Time 10. The Waiting Room 11. The Lamia
12. The Colony of Slipperman 13. Riding The Scree 14. In The Rapids 15. It 16. The Musical Box
COLOUR NTSC Approx.63min.