“US + THEM”のオセアニア・レッグ。その現場から生まれた超極上映像がリリース決定です。6年ぶりとなるオセアニアから速報アルバム『SYDNEY 2018』を始め、今週も『MELBOURNE 2018 2ND NIGHT』といったライヴアルバムが登場。本作は、それに続く映像編です。そんな本作が撮影されたのは「2018年2月2日+3日:シドニー公演」。屋内競技場QUDOS BANK ARENAでの2日連続コンサートですが、本作は2公演分収録しているわけではありません。2回のコンサートから生まれた超極上の素材を組み合わせ、1公演分の映像として組み上げられたオーディエンス作品です。その最大のポイントは、オセアニアでの光景とマイナーチェンジした“US + THEM”の映像体験コレクション……と思いきや。それどころではありませんでした! 真に凄まじいは強烈極まるクオリティ。実のところ、大きく3つに別れているのですが、そのどれもが超絶にして最高の映像なのです。
【ショウ前半(2月3日映像)】
先述の通り、本作は2日分の映像を使用しており、前半はシドニー2日目(2月3日)の映像。これがもう、とにかく素晴らしい。スペック的に言いますと「ステージ正面からほとんど固定のオーディエンス・ショット」となるのですが、この言葉からイメージされるものとはまったく違うのです。撮影者の意図は明らかに「スクリーンを録る」に集中しており、カメラもほとんど動かさず、ただただ淡々と全景を映す。しかし、これが本当に凄い。何よりも素晴らしいのは“ステージ中央の真正面”という角度でしょう。斜めに歪むこともなく、最新CGとアニメーションと正対できるのです。そこに最新機材による超美麗デジタル画質が加わることで、本当にハリウッドの大作映画を観ているようなスペクタクルを存分に味わえるのです。この映像美の勝因は、無欲かも知れません。スクリーンメインのオーディエンス・ショットでも、ついついロジャーの姿を直写したくなるものですが、その欲を完全に捨てきっている。ベストアングルを求めて左右に少し動かしはしますが、それ以外に撮影技術を見せびらかしもせず、ズームもしない。ロジャーやメンバーの直写はスクリーンしたの米粒シルエットくらいなのですが、それが返って巨大な会場のスケール感をさり気なく表現しており、無意識下に大きさを感じられるくらいなのです。これまでも“US + THEM”の映像演出を捉えたショットはいくつかありましたが、ここまで美しく、ここまで壮大な映像はなかったかも知れません。
【ショウ後半(2月2日映像)】
そんな正面ショットは「Another Brick in the Wall Part 3」まで。後半はシドニー初日(2月2日)の映像に切り替わります。その理由は、もちろん会場縦断する巨大なスクリーン幕が下りてくるからに他ならない。正面ショットでは捉えきれないT字型の立体スクリーンをステージ左側のスタンド席から見事に映しきっているのです。そして、こちらの撮影も完全に“スクリーン”に集中している。立体構造だけに完全固定では入りきらず、多少会場を見回しもしますが、それでもステージと縦断スクリーンを中心に安定感バツグン。しかも、角度がほぼ45度であり、T字型のスクリーンをベスト・アングルで見つめられる。前半と同じように無理にズームしないので、トランプ大統領をコケにした映像も、その前を悠然と横切るブタの風船も、これまで以上に分かりやすく把握できます。そのクオリティで描かれる“US + THEM”の壮大なこと。ダイナミックな音楽にシンクロした複雑な映像が止めどもなく流れ、プロジェクション・マッピングまで駆使して立体的に交差する……マルチカメラ・プロショットでも味わえないであろう特等席のスペクタクル体験が画面いっぱいに広がるのです。大事な事を書き忘れていましたが、前半・後半共にサウンドも極上。音声もさまざまな記録から厳選してンクロされており、ズバ抜けた高音質。演奏や歌声はもちろん、ブタの鳴き声もサラウンドに立体的でありながら極めてオン。光景も音声も“作品”としての品格まで漂う超ハイクオリティなのです。
【アンコール(2月3日映像)】
縦断スクリーンが役目を終えるメンバー紹介以降は、再びシドニー2日目の正面ショット。再び映画のような光景でアンコールの「Mother」「Comfortably Numb」が描かれます。
それにしても素晴らしい。これだけ素晴らしい素材が揃っていたら、さぞやマルチカメラ仕様に編集したくなったことでしょう。しかし、そうはせずにショウを「正確に」描いた。撮影技術も編集センスもひけらかさず、ただ無欲無心に“US + THEM”のスクリーン芸術を捉えきった名作です。“オセアニアの光景”が観られるのは事実ですし、世界各国の映像コレクションの1つとなるのも間違いない。しかし、本作の価値・クオリティはそれ以上。これがどの国であろうと、どの会場であろうと関係なく、「“US + THEM”の傑作記録」として記憶されることでしょう。恐らくは“US + THEM”を生体験できないであろう私たち日本人にとって、最も必要な特等席体験の銘品。
Qudos Bank Arena, Sydney, Australia 2nd & 3rd February 2018 AMAZING SHOT (138:08)
1. Speak to Me / Breathe 2. One Of These Days 3. Time 4. Breathe (Reprise) 5. The Great Gig in the Sky 6. Welcome to the Machine 7. Deja Vu 8. The Last Refugee 9. Picture That 10. Wish You Were Here 11. The Happiest Days of Our Lives
12. Another Brick in the Wall Part 2 13. Another Brick in the Wall Part 3 14. Battersea Power Station Rising 15. Dogs 16. Pigs (Three Different Ones) 17. Money 18. Us and Them 19. Smell the Roses 20. Brain Damage 21. Eclipse 22. Band Introductions 23. Mother 24. Comfortably Numb
COLOUR NTSC Approx.138min.