3度目の来日公演を収めた驚異的プロショット『PRINCE in JAPAN '90』がリリースされる今週。“1990年のプリンス”を一層深く感じられるテレビ番組がリリース決定です。本作に収められているのは、“NUDE TOUR”での来日が決定した時期に放送された日本のプリンス特番。関西圏の放送だったらしく、甲子園球場の貴重な告知CMが2パターンも見られる。肝心の番組内容は“ROCK TREND KEYWORD”と題され、「A」から「Z」までのキーワードで紹介していくもの。例えば、「D」なら「Dome」で東京ドーム公演の告知が行われ、「G」なら当時の新作『GRAFFITI BRIDGE』と映画が紹介されるといった具合。これまた『PRINCE in JAPAN '90』と同じコアな映像マニアが秘蔵していた録画コレクションで、画質も保存状態もバツグンの1本です。その番組内容もまた、“1990年の日本”ならではの豪快さ。「E」でファミリーのシーラEや「F」で「First Avenue」を紹介し、「A」の「Audience」として当時の人気ぶりを見せてくれる。もちろん、それこそが貴重で最大の魅力なのですが、中にはちょっと無理なネタも含まれており、「C」では「Check」と題してコンサート・セキュリティの話になったり、「T」の「Ticket」では窓口のお兄ちゃんをインタビュー。さらにはエリック・クラプトンやラリー・レヴァン、マイルス・デイヴィスにプリンスを褒めさせるという強引さも見せます。それでもまだプリンスに関係しているうちは良いのですが、だんだん「プリンスと同じように人気だよ」の口実でジャネット・ジャクソンやローリング・ストーンズも紹介し始め、後半にはいよいよネタに詰まったのかU2やVAN HALENまで登場してしまう。特にU2のくだりは傑作で、他のネタはなんとかこじつけプリンス解説をつけるものの、これだけはどうにもできなかったのか終始無言でPVが流れるだけ。なんとか「A to Z」を完成させようと頭をひねった番組スタッフのギブアップが透ける瞬間なのです。さらに「Y」の「Yeah」も「Alphabet St.」の冒頭が流れるだけ……もはやギャグなのか、ヤケなのかさえ分からなくなります。さらに深読みすると面白いのは、ロンドンとパリのロケ・シーン。どうやら番組スタッフが「1990年6月16日パリ公演」「1990年6月20日ウェンブリーアリーナ公演」を現地取材しているようなのですが、これがもうグダグダ。せっかく縁のある日本人歌手まで連れて行っているのに、サウンドチェックに潜り込むのが精一杯(もの凄く貴重ではあるのですが)で、結局プリンスには逢えずじまい。セキュリティとモメたり、路上のファンやそっくりさんにインタビューしたりといったシーンが多く、プリンスとの最接近が走り去るリムジンを眺めるだけという体たらくなのです。しかも、そのシーンが妙に感動的な演出なのがまた可笑しい。必殺の「Purple Rain」が流れる中、洋楽番組ではお馴染みの渋声ナレーションが「彼はそのプライベートな一面を、決して他人に見せることはない。だが、その態度に不満を持つファンは1人もいないだろう。なぜなら素顔の彼を知らなくとも、ステージの上のプリンスを見るだけで十分に満足することができるのだから。十分に夢を見ることができるのだから……」と語り、街中に消えていくリムジン。いや、分かりますよ。その気持ちにも言いたいことにも反対するつもりはありませんが、だったら、なんであんたらヨーロッパくんだりまで出かけて行ったんですか……。このように画面には出てこないドジッ子スタッフの奮闘記に付き合わされるわけですが、それがなんとも憎めないのは、プリンスの魅力を精一杯、形にしようとしているからでしょうか。「O」でシネイド・オコナーを紹介するにしても「この曲もプリンスの作曲なんですよ!」と語り、数々のPVや貴重なライヴシーンもできるだけ盛り込む。チケット係へのインタビューはいかにもマヌケですが、裏を返せば、そうまでしても人気ぶりを伝えようと工夫しているわけです。決して安くはないであろう渡航費・取材費を費やしてまで完成した、チープな、それでいて愛情たっぷりな日本特番。こんな番組が作れてしまったのも、バブル末期の時代ならでは。プリンスならではなのです。そんな時代感覚にむせ返る傑作映像。どうぞ、この機会に存分にお楽しみください。
Broadcast Date: 9th August 1990 (40:52)
1. CM for Osaka Concert (2nd September 1990) #1 2. Intro 3. A: Artist / Audience 4. B: Batdance / Bobby Brown 5. C: Check 6. D: Dome 7. E: Eric Clapton / Sheila E. 8. F: First Avenue / Fan Club 9. G: Graffiti Bridge 10. H: House Music 11. I: Interview 12. J: Jazz FM / Jannet Jackson 13. K: Kiss
14. L: Live 1999 (Wembley Arena, London June 1990) 15. M: Madonna / Movie / Miles Davis 16. N: Nude 17. O: Sinead O'Connor 18. P: Prince / Paisley Park Studio 19. Q: Quincy Jones 20. R: Rolling Stones / Randy Newman 21. S: Stage 22. T: Time / Ticket / Thieves In The Temple
23. U: U2 24. V: Van Halen 25. W: Women (Sheila E. / Sheena Easton / Apollonia / Vanity/ Cat / Madonna / Kim Basinger 26. X: XTC 27. Y: Yeah / Yokohama 28. Z: Zoom In (After Show Wembley Arena, London June 1990) 29. CM for Osaka Concert (2nd September 1990) #2
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.41min.