
アメリカン・プログレハードの雄にして、RUSHと共に“新大陸にプログレあり!”を知らしめたKANSAS。その極上ライヴ・イン・ジャパンがまさかの発掘です。本作が記録されたのは“KANSAS GREATEST HITS JAPAN TOUR 2001”。現在に至るまでの最新作『SOMEWHERE TO ELSEWHERE』のリリースから約半年というタイミングで行われ、彼らの来日史上でも最多となる全7公演で列島を沸かしました。まずは、その日程を見てみましょう。
・1月16日:大阪IMPホール 【本作】・1月17日:名古屋BOTTOM LINE・1月18日:長野・松本Mウィング・1月20日:東京厚生年金会館・1月21日:横浜ベイホール・1月23日:Zepp仙台・1月24日:青森・八戸市公会堂(中止)・1月25日:Zepp札幌
本来全8公演の予定でしたが、青森公演のみ中止。本作は、その初日でもあった「2001年1月16日・大阪IMPホール」公演のオーディエンス・アルバム……なんですよね? これ?………いきなり失礼いたしました。いや実際、本作は「オーディエンス録音」なのです。記録したのは、デヴィッド・ボウイ『A REALITY IN OSAKA: THE LAST CONCERT IN JAPAN(Wardour-169)』やプリンス『ONE NITE ALONE IN OSAKA』の録音家であり、現場の空気を吸ってきたオリジナル・マスターをダイレクトに使用している。ボウイやプリンスで証明されてきた通り、聴く前から相当なものとは分かっていたのですが……それにしても度を超えているのです。オリジナル・マスターから流れ出してきたのは、おおよそ“客席録音”のイメージとはかけ離れたサウンド。各楽器の間近感、ダイレクト感は、ほぼ卓直結サウンドボード。よく「まるでサウンドボード」と表現しますが、むしろ「え? サウンドボードじゃないの?」と疑う次元。全体のバランスからすると、ややヴォーカルが小さめかな?とも思いますが、全楽器が猛烈にオンで、耳にプラグを差し込んでいるかのよう。観客のリアルな喝采も収録してはいるのですが、それよりバンドの方が遙かに近いくらいなのです。このサウンド、音楽家集団KANSASだからこそ殊更に嬉しい。なにしろ1楽器の1音に至るまで克明で、ギターのピッキングニュアンスやシンバルの揺れまで感じられるほどにビビッド。しかも、それが距離感ゼロで直接耳に流し込まれる。見事に分離しながら複雑なアンサンブルを見事に編み上げていき、彼らならではの“複雑だからこそノリが良い”というビートも極めて鮮烈に味わえるのです。実際、『SOMEWHERE TO ELSEWHERE』に参加したケリー・リヴグレン、デイヴ・ホープこそいませんが、その穴を埋めて余りあるスティーヴ・ウォルシュ、ビリー・グリアーの活躍も見事。特にスティーヴは歌いながら2人分のキーボードをこなし、フットスイッチで頻繁に音を切り替えていく。ライヴアルバムの本作からは表情は分かりませんが、当日見た方によると手元も見ずに弾ききっていたそう。RUSHのゲディ・リーばりの大活躍を超詳細に体験できるのです。そんな極上サウンド&超アンサンブルで繰り広げられるのが、KANSASの大代表曲の数々。2大名盤『LEFTOVERTURE』の3曲、『POINT OF KNOW RETURN』の4曲を軸としつつ、『SONG FOR AMERICA』『MASQUE』『AUDIO-VISIONS』の人気曲をこれでもか!と畳みかける。新作『SOMEWHERE TO ELSEWHERE』からも2曲だけ演奏されますが、これもまた素晴らしい。特に「Icarus II」のカラフルな演奏は、正しくKANSAS。終盤には「さぁ、1976年に還ろうか!」の一言で「Icarus (Borne On Wings Of Steel)」へと鮮やかに繋がっていく……。この時期というとオフィシャル盤『DEVICE-VOICE-DRUM』もありますが、そこでは聴けない「Mysteries and Mayhem」「Paradox」「Hold On」「Not Man Big」もたっぷりと披露してくれるのです。とにかく、“異常な音のベスト・イン・ジャパン”。それに尽きます。「オフィシャル級」と呼ぶには生々しい感触が全面に出ており、やはり「卓直結サウンドボード級」が相応しい。元祖アメリカン・プログレハードの精緻にして卓越したアンサンブルを本生100%で味わえる音楽盤。「オリジナル・マスターは凄いね」「良い音ってイイ」などという当たり前のことに改めて気づかされ、さらに「凄い演奏」「良い曲」まで揃った完璧な1本。音楽的に極めて高度なライヴアルバム、どうぞたっぷりとお楽しみください。
Live at IMP Hall, Osaka, Japan 16th January 2001 ULTIMATE SOUND(from Original Masters)
Disc 1(43:02)
1. Intro 2. Mysteries and Mayhem 3. Paradox 4. Miracles Out Of Nowhere 5. Icarus ?6. Icarus (Borne On Wings Of Steel) 7. Song For America 8. Hold On
Disc 2(40:50)
1. Cheyenne Anthem 2. Not Man Big 3. Portrait (He Knew) 4. Point Of Know Return 5. Dust In The Wind 6. Carry On My Wayward Son
Phil Ehart - drums, percussion Rich Williams - guitars Billy Greer - bass, vocals Steve Walsh - keyboards, synthesizers, percussion, vocals Robby Steinhardt - violin, vocals