LP「SLAUGHTER IN THE AIR」。それはデヴィッド・ボウイの1978年”Isolar II” アメリカン・レグ最初期の模様を伝えてくれた名盤中の名盤。ツアー開始三日めである4月4のLAフォーラムでのステージを極上の音質で捉えた音源は「これぞサウンドボード」と呼びたくなるような究極の高音質、2019年の今なお色褪せないハイクオリティ・オーディエンス・アルバムでした。あまりに別格のクオリティかつLAフォーラムでのゆえ、2000年代に入ると「マイク・ミラードによる録音か?」という推測が飛んだほど。ところが実際にはTMOQやTAKRLといったレーベルの名の下で活動を続けていた人物(=ケン・ダグラス)からのリリースであり、音源も彼が独自に入手したものだったのです。そもそもミラードの音源がブートレグとしてリリースされるのは1980年代に入って、かの「LISTEN TO THIS EDDIE」がリリースされてからのこと。そんなケン・ダグラス絡みの音源は後に元のテープが発掘される場合が多いのですが、この「SLAUGHTER IN THE AIR」はレッド・ツェッペリンの「GOING TO CALIFORNIA」と並んで元のテープソースがどうしても見つからないまま今に至ってしまいました。そこで今から10年以上前、この名盤のミント・コンディションLPを丁寧にトランスファーしてCD化してみせたところ、「誰もがCDで聞きたかった名盤が遂に」と大好評を博してしまいます。その後ネット上には本盤のテープソースを騙ったバージョンが現れもしましたが何のことはない、LPをイコライズしてピッチを正したというだけに過ぎなかったのです。おまけにイコライズ過剰のせいで元の音の鮮度が落ちてしまったというお粗末さ。こうして21世紀に入っても価値がまったく色褪せないビンテージLP「SLAUGHTER IN THE AIR」は永遠に不滅なのか?思っていたところ、この11月に衝撃的な発掘が世界中のマニアをアッと言わせました。何と正真正銘マイク・ミラードによる4月4日のオーディエンス録音テープがネット上に現れたのです。今回は彼の最高傑作「LISTEN TO THIS EDDIE」のベスト・バージョンがリリースされますが、奇しくも彼の知られざる傑作録音が同時にリリースされるだなんて!「SLAUGHTER IN THE AIR」ソース(以下「LPソース」と称します)は音像が異様な程オンなバランスであり、1978年当時であればAMラジオ放送か何かと誤解されてもおかしくないほどでした。その反面、オーディエンス録音らしかぬ臨場感の希薄さを覚える箇所があったのです。ところが、さすがはミラード録音。LPソースで足りなかった当日の空気をたっぷりと吸い込んだ臨場感のリアリティは抜群。おまけに「エディー」から一年にも満たない時期で同じくLAフォーラムで敢行してくれたオーディエンス録音ということもあり、質感などもそっくり。永遠の名作「エディー」の、あの感じでボウイの78年フォーラムが楽しめるというだけでもマニアに大きな衝撃を与えることでしょう。演奏の輪郭をサウンドボードまがいなレベルで伝えてくれたLPソースは本当に素晴らしい音質でしたが、それに比肩しうる驚異のニュー・オーディエンス。
そして何と言っても嬉しいのが、LPソースで未収録だったオープニングの「Warszawa」からばっちり収録された、初の4月4日完全収録音源であるということ!”Isolar II”ツアー収録盤であれば、それから始まらないとお話にならない。これこそLPソースにおける最大の欠点でした。さらにLPで未収録だったメンバー紹介、わずかに欠けていた「Rebel Rebel」の出だしも今回はもれなく収録。さすがはミラード、ボウイでもいい仕事してくれます。「SLAUGHTER IN THE AIR」がこれほどまでに名盤扱いされたのには、当初リリースされたオフィシャル「STAGE」が同じ”Isolar II”アメリカ・レグ終盤での収録ながら、実際のステージとはかけ離れた編集が施されてリリースされてしまったのに対し、LPは実際のステージ通りに収録していたという点も挙げられます。今でこそ「STAGE」はリミックスされた上に実際のコンサートに沿ったニュー・バージョンがリリースされていますが、当時の録音された楽曲順に並ばれた編集は何とも違和感がありました。それ以上に重要だったのは、同盤が”Isolar II”ツアー序盤の自由かつ“攻め”なステージングを見事に捉えてくれていたということも大きい。そこへミラード音源ならではのきめ細やかな臨場感と音像の近さが加われば、これはもう鬼に金棒。もともと”Isolar II”ツアーは前半がベルリン楽曲、後半がジギー楽曲という非常に解りやすい構成あった反面、前半でインストも含む当時の新曲がまとめて演奏されるという、これぞ“攻め”構成となっており、それを締めくくるのが大ヒット「Fame」でした。ところが、この後のヨーロピアン・レグから「Fame」が前半のラス前へと移り、これによって「新曲立て続け」というハードルが少し低くなったのでした。それ以上に特筆すべきは、この時点では78年を代表するカバー曲「Alabama Song」がまだレパートリーに加えられておらず、代わりに「Rock 'n' Roll Suicide」が演奏されていたのです。1974年には毎晩のフィナーレとして、まるで消え入るかのように歌われていたこの曲が、コカインの渦から抜け出したボウイによって、今度は力強く歌われている。ここでの熱唱ぶりをミラードならではの最高音質で楽しめるというのも魅力的。逆にいうと、この時点でセット後半のジギー色が強くなりすぎてしまったきらいがあり(何しろリアルタイムでは取り上げられなかった「Star」まで演奏されているのだから)、オフィシャル「STAGES」収録ライブの時点でからセットリスト落ちしてしまったのも納得のレパートリーかと。そしてLPソースでは、まるでオーディエンスが固唾を飲んで聞き入っているかのように映った前半のベルリン・コーナーも臨場感に長けたミラード音源で聞くと、もっと盛り上がっていたことが分かって面白い。ところ変われば品変わる…とはこのことか。LPソースは当然ギフトとして配布いたしますので、どちらも極めてハイレベルなオーディエンス・アルバムでありながら、まるで違う音の感触を聞き比べていただけるでしょう。また、既にご紹介済みの名盤「MADISON SQUARE GARDEN 1978 FINAL NIGHT」でアメリカン・レグのスタートとフィニッシュを聞き比べるのもイイ。 (リマスター・メモ)半音の20%程度速いピッチを修正。
The Forum, Inglewood, Los Angeles, CA, USA 4th April 1978 PERFECT SOUND
Disc 1(49:31)
01. Warszawa 02. "Heroes" 03. What In The World 04. Be My Wife 05. The Jean Genie 06. Blackout 07. Sense Of Doubt 08. Speed Of Life 09. Breaking Glass 10. Beauty And The Beast 11. Fame
Disc 2(55:21)
01. Band Introductions / Five Years 02. Soul Love 03. Star 04. Hang On To Yourself 05. Ziggy Stardust 06. Suffragette City 07. Rock ’n’ Roll Suicide 08. Art Decade 09. Station To Station 10. Stay 11. TVC15 12. Rebel Rebel
David Bowie: Vocals / Guitar Adrian Belew: Lead Guitar Carlos Alomar: Rhythm Guitar / Backing Vocals Dennis Davis: Drums / Percussion George Murray: Bass / Backing Vocals Roger Powell: Keyboards / Synthesizer / Backing Vocals Sean Mayes: Piano / Backing Vocals Simon House: Electric Violin





























