デビューから8ヶ月でリリースされた追撃の名作『HOTTER THAN HELL』。その50周年を祝うリミックス・アルバムがリリース決定です。音楽のプロが作り込んだダイナミック版HOTTER THAN HELL 本作の正体は、海外マニアが独自制作したリミックス・アルバム。本家本元の『HOTTER THAN HELL』をAI技術で解体し、KISS本来のライヴ・サウンドを目指して組み直した換骨奪胎アルバムなのです。「なんだファンメイドか」と思われるかも知れませんが、制作したマニアがただ者ではない。先日はコンセプト作『エルダー:魔界大決戦』の拡張完全版『A WORLD WITHOUT HEROES Expanded ELDER Redux』をご紹介しましたが、本作も同じ人物による作。単に最新技術に精通しているだけではなく、長年ミュージカルを手掛けてきた本物のプロ。KISSとの公式ライセンスはないのでしょうが、センスも技量もノウハウもそんじょそこらの「作ってみた」とは異なる完全プロ・レベルの作品なのです。実際、そのサウンドは聴いて一発、ド級の生まれ変わり盤です。KISSの初期3作は音がスカスカと言われがちですが、本作は思いっきりワイドでダイナミック、そしてパワフル。ただし、決して「現代的ではない」ところがミソ。本作を制作したマニアは70年代KISSの世界観をこよなく愛しており、伝統の名盤を現代バンドのように作り替える気はさらさらない。そうではなく、当時のKISSがステージでブチかまされていながらスタジオ作品では再現できていなかったダイナミズムを注入することだったのです。緻密すぎる作業が生み出した新たなる大名盤実際、制作手法からもその意図が感じられる。本作はAI技術でオリジナル『HOTTER THAN HELL』をマルチ・トラック(ヴォーカル/ギター×2/ベース/ドラム)ごとに分解してリミックスしているわけですが、単にバランスを変えているわけではありません。各楽器それぞれにトリートメントを加えていますし、テイクを差し替えているケースもあります。特に凄まじいのがドラム。バスドラとタムはオリジナルの『HOTTER THAN HELL』テイクを(調整した上で)使用していますが、それ以外は作り直している。例えば、ハイハットやライドは『ALIVE!』のテイクから抜き出して1ピースずつ同期。『ALIVE!』にない曲や他のドラムについても様々な作品のピーターの打音をサンプリングして再構成。あくまでピーターが慣らした本物の打音に拘りつつ、1曲1曲を完全に作り直しているのです。他の楽器はドラムほど凝ってはいませんが、やはり精緻に整えられている。特に効果的なのがベース。少しディストーションを加えただけなのですが、これがヘヴィネスを大幅に強化している。前述しましたが、本作を制作したのは音のプロ。初期3作のスタジオ録音がライヴに及ばなかった最大の要因を分析し、最小限の加工で的確な効果を生み出しているのです。ギターやヴォーカルもイコライジングをかけ直した程度ですが、こちらは曲によって個別の処理も行っている。例えば「Comin' Home」では他の音源から(ポール自身の)アコースティック・ギターが重ねられていますし、「Goin' Blind」にはさらにヴォーカルにリバーブやディレイもかけられている。「Parasite」のラストには『ALIVE!』と同じようになコーラスを加えられていますし、「Got To Choose」もハードなエンディングが追加されています。個性的なお楽しみ別リミックスもボーナス収録こうして生まれ変わった『HOTTER THAN HELL』全曲だけでも胸いっぱいですが、本作にはさらにコンセプトが異なる別リミックスも3曲追加されています。それぞれ個別にご紹介していきましょう。長尺版「Let Me Go, Rock 『n』 Roll」 オリジナル版をベースとしながらデモ・バージョンや『ALIVE!』のテイクも活用して拡張した長尺版。単に長いのではなく、当時のライヴ・アレンジを再現しており、ソロやベースブレイクも盛り込まれています。アコースティック版「Goin' Blind」 オリジナルのドラムとベースを使用しつつ、アコースティック・ギターをフィーチュアしたリミックス。ただし、ソロだけはエレクトリックなので完全なアンプラグドというわけでもありません。ジーンのアンプラグドヴォーカルをシンフォニー・ヴォーカルとダブルにしているらしく、シンフォニー・バージョンのオーケストラも加えられているようです。エースがメインで歌う「Parasite」「もし最初からエースが歌っていたら」というIfをカタチにしたもの。エースのヴォーカルは『ORIGINS VOL.1』のテイクが採用されており、そこにジーンのオリジナル・ヴォーカルがブレンドされています。以上、全13テイクによる「新たなるHOTTER THAN HELL」。単に現代的な迫力稼ぎではなく「もし当時のKISSがライヴ・サウンドをスタジオに持ち込めていたら」という深い洞察によって組み荒れた「本来はこうしたかったのでは」版です。50周年の最新技術だからこそ生み出し得た大名盤の新たなる魅力。2ndアルバムの50周年特別バージョンがリリース。音楽を本職にしているKISSマニアが制作したリミックス盤で、AI技術を駆使して当時のライヴ・サウンドで『HOTTER THAN HELL』を再構築しています。KISS - HOTTER THAN HELL: 50TH ANNIVERSARY REMIX (46:15) 1. Got to Choose 2. Parasite 3. Goin' Blind 4. Hotter Than Hell 5. Let Me Go, Rock and Roll 6. All the Way 7. Watchin' You 8. Mainline 9. Comin' Home 10. Strange Ways Bonus Tracks 11. Let Me Go, Rock and Roll Extended Version 12. Goin' Blind Acoustic Version 13. KISS Parasite Ace Vocal Version