ジミヘンの1969年ロイヤル・アルバート・ホールと言えば大好評な『ROYAL ALBERT HALL 1969 2ND NIGHT COMPLETE』に集約されている感があります。おまけにアナログLPの時代から出回っていた有名音源でもあった。その点RAH初日に関しては1990年代に入ってオーディエンス録音が発掘。確かにこの時代のライブでAudが残されているというだけでも貴重な訳ですが、悲しいかな69年のAudの限界とも言うべき音質であったのも事実。それがまたジミのRAHと言えば二日目という定評を揺るぎないものとしていた訳ですが、それまで存在すら確認されていなかった初日のステレオ・サウンドボード録音が発掘されたのは2018年のこと。このAudすらありがたがられてきたというのに、サウンドボードとなれば衝撃は計り知れないものがあったのですが、その音質が非常に良好だったものだからマニアは色めきだったもの。ステレオでそのまま公式でリリースできそうなくらい音質がイイ。さっそくEat A PeachやMoonchildといったレーベルからリリースされたのでした。これらのリリースで世界中のマニアが衝撃を受けたRAH初日のステレオ・サウンドボードの発掘から早5年以上の歳月が経過。改めて海外のマニアから送られてきたRAH初日のファイルはいざ蓋を開けてみれば2018年当時のマスターよりも明らかに音質がイイ。一番の違いは今回のバージョンと比べると2018年版は「Foxy Lady」や「Purple Haze」といったミッチ・ミッチェルのシンバルが目立つ曲になると圧縮されたシュワシュワ感が漂っていた。それ以上に今回のバージョンは圧縮されていない状態が故に、音質そのものが一皮むけたような自然でクリアーな音の広がりを感じさせてくれる。これはイコライジングなどによるものではなく、明らかに音源そのものの状態の良さから生まれたもの。正に上位マスターと呼ぶに相応しい。こうなるといよいよ公式でリリースされたとしても何ら遜色のないステレオ・サウンドボード。また本ステレオ・サウンドボードは曲間のカットがみられ、2018年バージョンは音源が登場した時点で既に該当部分に例のオーディエンス録音がパッチされていました。つまり音源所有者によって「圧縮」された上に「補填」された上で流通したという訳です。ところが今回は圧縮されていないナチュラルでクリアーな状態な上に、Aud補填もされていない。こんなところからも2018年流通時のような手が加えられる前の状態であることは明白。今回のリリースに際して曲間カットにおけるAud補填は敢えて行っていません。というのも、あのAudは遠くてモヤっとしていた上にヒスノイズも耳障りな音の悪い録音。それと今回の音質向上したステレオ・サウンドボードの前では音質の差が多すぎる。おまけに補填されたのは演奏と関係のない個所、それどころか音が出ていない場面も少なくない。今回はこうした小細工を敢えて省いたことで、音源の違和感なく全編が最高のステレオ・サウンドボード・アルバムとしてじっくり聞いていただける仕上がり。そして日によってまったく違う表情を見せるジミのライブの面目躍如と言うべきか、RAH二日目とはまるで別のライブとなっている。そこでは撮影も入っていたことから「派手めなナンバーを盛り込んだ構成」かつ「映画公開を見据えてのゲスト参加」などが盛り込まれていましたが、この日の方はいい意味で通常営業のセットリスト。「Tax Free」から始まるお得意のパターンでじっくりと盛り上げてくれる。撮影カメラがないというのも関係あるかと思われますが、明らかにジミが演奏に集中している感が伝わってくる。そして「Spanish Castle Magic」の頃になるとジミはエンジン全開。この曲が4分を過ぎたところで演奏がブレイク。そこでジミがおもむろに弾き出したのは「Message To Love」の草稿!Audの時から有名な場面でしたが、こうして公式レベルのステレオ・サウンドボードで聞くとスリリングで鳥肌モノ。Royal Albert Hall, London, UK 18th February 1969 STEREO SBD(from Original Masters) UPGRADE!!! DISC:1 (45:06) 1. Introduction 2. Tax Free 3. Fire 4. Hear My Train a Comin' 5. Foxy Lady 6. Red House DISC:2 (39:52) 1. Drum Adjustment 2. Sunshine of Your Love 3. Spanish Castle Magic / Message To Love 4. The Star-Spangled Banner 5. Purple Haze 6. Voodoo Chile (Slight Return) Jimi Hendrix - Guitar, Vocals Noel Redding - Bass, Vocals Mitch Mitchell - Drums STEREO SOUNDBOARD RECORDING