エディ・ヴァン・ヘイレン生涯最大のヒットとなった大代表曲「Jump」。かの名曲に焦点を充てた超傑作ドキュメンタリーがリリース決定です。そんな本作に収められているのは、某衛星放送局の名物音楽番組。その「Jump」特集です。当店では数々の傑作に本放送をアーカイヴしておりますが、そのほとんどが公式映像や海外制作の番組に独自色を加えて放送するもの。しかし、この番組は違う。日本制作による完全独自版組で、ある1曲にスポットを絞り込み、制作された背景や意図、影響力を幅広く掘り起こすもの。しかも単に珍しいのではなく、完成度が極めて高い。本作の「Jump」特集も独自インタビューも多用した内容が世界的に話題となり、vhnd.comや海外の音楽ニュース・サイトでも取り上げられたほどでした。本稿に目を留められる方なら名盤を特集するドキュメンタリー・シリーズ“CLASSIS ALBUMS”もご存じだと思いますが、その「1曲版」とでも言えばいいでしょうか。単なる音楽番組の次元を超え、このままDVDとして一般リリースできるほどに面白いのです。そんな傑作番組が放送されたのは“2013年3月20日”。初回放送は2012年の来日公演に沿ったものでしたが、エディの大腸憩室炎により延期。仕切り直しの日程にも合わせて再放送されたわけです。時代が時代ですので、画質音質に関しては言わずもがなの「完全オフィシャル級」とだけご記憶いただき、早速内容に入りましょう。この番組は「Jump」がテーマではあるものの、決して1曲しか出てこないわけではなく、切り口は多彩。大雑把に言って三部構成になっていますので、順にご紹介していきましょう。 【第一部:「Jump」解析その1】まずは導入……なのですが、いきなりディープで超面白い! このセクションの主役は完全にデイヴ。日本語も交える日本独自インタビューで「Jump」について語るのです。これが深いわ、意外だわで凄い。まず、「Jump」のビート。「128bpmの完璧なダンスビートだ。今はどのクラブでも128bpmの曲がかかっているが、俺が身を持ってこのビートを試したお陰なんだ」と切り出す。「(俺の)お尻は正直。お尻でビートを聴いて女の子にやさしい完璧なダンスビートは完成した。片手に持ったグラスのビールかシャンパンがギリギリこぼれない程度のリズムのことなんだ」と、デイヴ節で畳みかけ。アレックスでもマイケルでもなく、デイヴがあのノリ創始者だったわけです。もちろん、彼の本職であるヴォーカルについても実際の歌詞を挙げながら解説。「Bメロは歌詞だけ聴くと深刻すぎて顔が曇る。それをお気楽ハッピーに歌うことで歌詞とのバランスが取れる。芸術とは様々な熟考を観る人・聴く人に促すものなんだ」と至言が飛び出す。ただ底抜けに陽気なイメージでありつつ、それも彼一流の芸術館に裏打ちされたものだと明かすのです。そんなマジメな話の間にもクラブ風リミックスの「Jump」に合わせて軽快に踊り、マイケル・ジャクソンの物まねで本人を笑わせたエピソードを披露し、「お力添えいただき、ありがとうございます。私に出来る事があれば、遠慮なくお申し付けください。ください、ください、さい、さい、ください。私はデイヴィッド・ロス!」と日本語で爆笑を誘う。ほんの序盤にもかかわらず、ここで書き尽くせないほどショウマン・デイヴの魅力全開なのです。 【第二部:VAN HALEN結成から『1984』へ】CMを挟んで番組のムードは一転。先ほどまでコアな話ながらデイヴ話芸で聴かせてしまいましたが、ここからは初心者にも優しいバンド・ヒストリー。GUITAR WORLD氏の編集長ブラッド・トリンスキーが登場し、メンバー同士の出逢いや結成の逸話、クラブ時代の現場、タッピングの衝撃等々、生々しく語っていく。もちろん、デイヴも引き続き登場。「エディの燃えるギターは『マバユクテ刺激的』だった。ぶっ飛んでいて『信ジラレナイ』」と、日本語混じりに当事者ならではの生証言を語ってくれます。そして、いよいよテッド・テンプルマンが登場。“スターウッド・クラブ”での出逢い、一瞬にしてエディのギターに惚れ込んだ事、レコード会社との契約、『炎の導火線』や歴代名盤の制作現場などなど……。私たちの知るVAN HALENの姿でありつつ、その裏側を詳らかにしてくれるのです。 【第三部:「Jump」解析その2】駆け足ながらアルバム1枚ずつを追っていき、遂に『1984』へ到着。ここで再び「Jump」の話題が主役に返り咲きます。冒頭ではデイヴだけがしゃべり倒していましたが、ここではアレックス&エディのヴァン・ヘイレン兄弟も参加。3人の語り合いを軸に名曲を多角的に解説していきます。ブラッドによる当時のシーン状況も面白いですが、やはり興味深いのはエディやテッドによる名曲の誕生秘話でしょう。あの歴史的なシンセ・リフがどんな着想だったのか、あのサウンドを生み出すための苦労、シングル発売後のシンセには最初からあの音色がプログラミングされるようになった等々……。さらに、ビデオクリップのくだりでは実際の映像を流しながら自主制作の現場を明かし、歌詞の話では原詩と対訳を併記しながら込められたメッセージを説明していく。さらには、ギターソロ。天才エディがどうやって歴史的なソロを生み出すのか? これについては、実際にご覧頂いてのお楽しみにしておきましょう。意外というか、やっぱりというか……という答えを教えてくれます。VAN HALENの代名詞ともなった大ヒット曲「Jump」。彼らを1曲だけで語り尽くせるわけはありませんが、1曲だけでも約1時間の番組になってしまうほど濃密な名曲でもありました。珍しい日本制作でありながら、世界で話題になったほどの超傑作であり、本来であれば公式リリースして頂きたいほどのドキュメンタリーです。さらに合間合間には3ヶ月後に迫った(最後の)来日公演の告知が入り、番組中に先行電話予約まで実施される。そんな時代感まで含め、隅から隅まで見逃せない1枚。今だからこそ、1人でも多くの方に触れていただきたい「VAN HALEN番組の最高傑作」です。 Broadcast Date: 20th March 2013 (*6月の来日に合わせての再放送)(52:49) 1. Intro 2. Jump 3. Jump Whitenoiz Remix 4. David Lee Roth Interview 5. VJ Talk 6. David Lee Roth Interview 7. Jump Brian Evans Remix 8. VJ Talk 9. CM 10. Brad Tolinski (Editor-in-Chief of Guitar World) Interview 11. David Lee Roth Interview 12. Brad Tolinski Interview 13. David, Eddie, Alex Interview 14. Starwood Club / Ted Templeman Interview 15. Brad Tolinski Interview 16. Sunset Sound Studio 17. David, Eddie, Alex Interview 18. You Really Got Me / Ted Templeman & Brad Tolinski Interviews 19. Van Halen II (Dance The Night Away) 20. David, Eddie, Alex Interview 21. Women And Children First / Fair Warning / Diver Down / 1984 22. CM 23. 5150 Studio 24. Jump / Interviews 25. Guitar Solo 26. CM 27. Video Clip / Interviews 28. CM 29. US Tour 2012 30. David Lee Roth Interview 31. Jump 32. Japan Tour 2013 Advert PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.53min.