80年代の名作クリップを集成したオフィシャルの怪作『STORYTELLING GIANT』。物語(?)に欠かせない字幕も完備した日本独自バージョンがリリース決定です。『STORYTELLING GIANT』は、まさに時代が生んだ怪作。1988年に発売された映像作品で、『REMAIN IN LIGHT』から『TRUE STORIES』までの80年代クリップを集成したもの。それだけなら普通なのですが、そこに詰め込まれたクリップの時代感と編集のクセが強烈なのです。まず何よりも個性的なのが編集。本作には10曲のビデオクリップが収録されており、それらを語りで繋いだ構成。問題(?)なのはこの語りでして、メンバーでもなければ関係者でも俳優でも何でもない一般人が次々と登場し、彼ら自身の体験談を話していくのです。しかも、その内容がブッ跳んでる。例えば、序盤でいきなり老婦人が出てきたかと思うと人生の愚痴と色気づいた若い頃の思い出話を始め、そこから「Once In Lifetime」へと繋がっていく。次はビジネスマン風の中年や田舎臭い若者がワイルドなパーティについて語り、「Wild Wild Life」が始まる……といった具合です。一応は曲に関係しているかな……と思わせつつ、そうとも限らない。取り留めのないナンパ話、催眠術にかけられたと思ったらタバコで火傷した話、親父の子育て話、ストーカー被害、幽体離脱、「私は犬」と言い出す女……と、曲が進むほどにどんどんアヴァンギャルドになっていくのです。そして、ここで威力を発揮するのが日本語字幕。『STORYTELLING GIANT』は輸入ボックス『ONCE IN A LIFETIME』の一部としてDVD化もされているのですが、本作はそのコピーではなく、初回時代に国内リリースされた日本盤レーザーディスクから起こされたもの。そのため、曲間ストーリー(?)にも完全字幕が付き、内容が直感的に理解できるのです。このようにハッキリ言ってメチャクチャなのですが、それが実にTALKING HEADSらしくもあり、ユーモアたっぷりなクリップ達とシンクロして独特な世界観を深めていくのです。ここで収録曲も整理しておきましょう。 リメイン・イン・ライト(2曲)・Once in a Lifetime/Cross Eyed And Painless スピーキング・イン・タンズ(2曲)・Burning Down The House/This Must Be The Place リトル・クリーチャーズ(4曲)・Stay Up Late/And She Was/The Lady Don't Mind/Road To Nowhere トゥルー・ストーリーズ(2曲)・Wild Wild Life/Love For Sale 有名な懐かしいクリップも多いですが、今の目で見るとチープな味わいが時代のスペクタクル。「シュールなポンキッキ」とでも言いたくなる合成技、意味がありそうでなさそうな珍妙な背景、様々なスターのモノマネ(マイケル・ジャクソンやプリンス、フレディ・マーキュリー、ビリー・アイドル等々……似ているものもあれば、マネてるつもり?程度のものまで雑多なのもいい加減でイイ感じ)等々。こうした映像たちが「だからどうした?」と言いたくなる一般人のコメントとサンドイッチされて流れ出るカオス……これこそが本作の真髄なのです。ビデオ普及期に試行錯誤が繰り返されたロック映像。そんな時代だからこそ生まれ得たシュールなセンス・オブ・ユーモアの怪作です。どうぞ、字幕も完備した日本盤レーザーディスク・バージョンでお楽しみください。Taken from the original Japanese Laser Disc (L050-1122) 1. Opening Logos 2. Introduction「別の時にイカした彼が写真を撮ってくれたの」「これは初デートにはならないね」「私の人生は淋しいものよ。孤独で不幸せな人生だったわ。でも本はたくさん読んだわ。私は30で子持ちの未亡人になったの。だから交際は全くなし。男性とは無縁だったわ。話すことさえもね。ふしだらを恐れたわけじゃないけど…。友人と船旅に出かけたときの事よ。私たちは品のいい物静かな女性だったの。でもその度が私を変えたのよ。魅力的な女であると気づかせてくれたの。同行した男性達が私に見とれてたり、お酒に誘ってくれたりしたわ。そのことが私の女を…目ざめさせたのね」 3. Once In Lifetime「僕らは街の中央にあるホテルに部屋を借りて風呂桶をビールで一杯にしてそっと入るんだ。つまり、それがゲームってわけさ。ゲームに負けると誰かがテレビを外に放り投げたっけ」「俺たちの遊びは洗面所を壊す事だった。パーティへ行くと酒を飲みならまずビールをバカ飲みするだろ? 気分が悪くなったら外へ出て戻ってまた飲む。これだとムダがない。酔っぱったらパーティ好きな家を捜すんだ。誰かの親の家がいい。郊外にあるような。行ったらまずパーティを壊し、酔っぱらう。それから洗面所へ行ってクリームを鏡になすりつけ、毛染め薬を風呂にまいて全て外に放り投げる」 4. Wild Wild Life ★別人「兄貴はいじめっ子だったな」「僕の兄は弁解がましい男でした」5. Stay Up Late ★宙づり「住所は知ってるからそこへ行く。回りを見ても彼女はいないし、家を捜しても見つからない。誰かに道を聞いて心配になってくる。もしかしたらフラレたんじゃないかってね。しばらくして諦めたあんたは酒場に入りピザを頼む。ビデオゲームで遊び、また女の子と知り合う。つまり初デートに逆戻りってわけさ。そしてその彼女と一緒に通りを歩いて行き、偶然に本命の女の子の家が見つかるんだ。彼女達は顔を合わせるとあんたの話を始める。それを聞きながらあんたはこう言うんだ。“畜生、俺は行くぜ”ってね。残された彼女達は一緒に船旅なんかして友達になり、あんたは身軽になる」6. Cross Eyed And Painless ★ロボットダンスの黒人「その男が“催眠術をかける”って言うんだ。“どこにいる?”って聞くから“落葉した森の中の広い野原で…全てか乾燥した美しい場所を歩いている”って答えた。そして煙の匂いがすると“火事じゃないか”って言ったんだ。すると彼はそそのかすように“そうかい?”って。“そうさ、確かに熱くなってきた”と言ったんだ。次に誰かに足を蹴られた感じがした。タバコを吸ってたんだ」「彼は男がゴミの山に近づき、ソーダの缶をこじあけるのを見たんだ。男は残ってるソーダを飲もうとしてた。彼は気分が悪くなり、男に近づいて“4ドルやるから何か食べろ”と言ったんだ。男は受け取ったよ。感謝してたと思うよ。彼が歩き出すと女の子が“見て”と言った。振り返ると男はその金で同じ事をしてたんだ。破いてたんだ。つまり、これは全くニューヨークを象徴してる出来事さ」 7. Burning Down The House「ある日の事、私が男の人の靴をなめてたら、その人びっくりしてたわ。でも私の家族は私が犬だって知ってるから驚かなかったわ。皆は“この子は犬だから当然さ”って言うの。私は2年前から犬。名前はプリッツィ。食事はテーブルの下よ。四つんばいで動くわ。あの日、家に帰ると母がこう言ったの。“カーマンをかんだの。それともローリー?” 私は“2人共ビリーもよ”って」8. And She Was ★切り絵アニメ「私は自分の体はベッドの上だけど魂は浮き上がってる感じがしたの。そして部屋中を回って窓の所で彼を見てたり、波を見たり。そして、それはとても楽しかったわ。それを自覚してたんですもの」「私は4人の息子に“自分の好きな事をしろ”ろ教えてきた。別に自由主義者じゃないがね。ある日、息子の1人が6年間消防夫を勤めたあげく芸能界に入ると言ってきた。私は思ったね。ジャズ・シンガーにしろ聖歌隊にしろ、私の性には合わないと。つまり25年以上もたって私はうるさい親父になったのさ」 9. This Must Be The Place ★地下室セッション「母が手すりに足を引っかけてサルのようにぶら下がってたの。逆さまによ。黒く染めた髪がたれ下がっててね。そばに雄鳥がいて時の声(原文ママ)を上げてるの。悪魔払いの祈祷師みたいで大声で叫んでたわ。でも行きかけたら夢は終わり…」「彼から電話があったの。最初の日は確か月曜で“なぜ会えない。こんなに愛してるのに”って言うの。私の返事は“だめ。嫌いよ”。何度もかけてくるんで留守番電話にして出かけたの。帰ったらテープには全部彼の電話が入ってたわ。バカな事よ。そしてある晩。友達とあるバーへ行ったの。店が閉まったのは朝の4時。帰ると彼が台所に座ってた。私、驚いたわ。“なぜ鍵を?”って。結局は彼がレンガを投げて窓を壊し、救命器をよじ登ったと分かったの。ひ弱な彼にしたら一大決心よ。私の部屋は3階だもの」10. The Lady Don't Mind「両親や友達と一緒に食事に行ったんだ。そこにそのお店に着いた時、僕は音なんて何にも気がつかなかったけどビデオゲームがあったんで遊び出したんだ。トイレに行って戻ってみると、全然別の店みたいだったんだ。それで僕は下を見たら下着しか着てなかったの」「そしてカビ臭い匂いの男に会ったんだ。石けんの匂いなんだがね。みんな“カビ臭いさん”と呼んでた。これは3才の時の記憶だが、母と買い物に行った時、僕はこう叫んだんだ。“カビ臭いさんだ!”。彼は母と僕を殺したいと思った。僕らは困って店を出た。彼にはその日会わなかったよ」「僕はCMは見ないの」「クイズが好き」「ウサギ用のいい物があるよ」「好きよ。私はバックスバニー。人参が大好き。どうしたの?」「ブラック&デッカ-社の自動アイロンは電源を切り忘れても勝手に切ってくれるから安心です」「私は会社を買いました」「バーンスタインのピアノです」「ひげ剃り法を…」「みんなの…」「お代は返します」「働く時も遊ぶ時も力強い味方です」 11. Love For Sale ★チョコ菓子「僕はいつも自分だけは助かると思ってる。だから飛行機事故で全員死亡なんて悲惨すぎると思うよ」「パリ、アテネ、ナイロビ。違うわ。どれが最初だったかしら? アテネ、そしてナイロビ、ダラス、エルサレム…」12. Road To Nowhere ★田舎の教会・ハイウェイ「一旦街を出ちまうと何も見えやしない。恐ろしくて地獄へ1足飛びのように思える。暗黒と騒音だけだからね」「最高の時は結婚生活だ。女房に…感謝してるよ。本当にいい女でね。すばらしい人だった。際立ってたよ。だが私はそれに気づかなかった。彼女が死んで気がついた。理想の女を女房にしたことで夢中だった。生前から彼女には感謝してたが、言うなれば非凡だな。何年かは苦労もしたし、彼女も不満を言ったが、給料がどんなに良かろうと、また悪かろうと充分やりくった。できたんだ。どうやったかは知らん。彼女はは誠実で貞節。男が望む全てのものを持っていた。私の話で彼女がいかに大事だったか分かるだろう? 今でも同じさ」13. End Credits 1. Opening Logos 2. Introduction 3. Once In Lifetime 4. Wild Wild Life 5. Stay Up Late 6. Cross Eyed And Painless 7. Burning Down The House 8. And She Was 9. This Must Be The Place 10. The Lady Don't Mind 11. Love For Sale 12. Road To Nowhere 13. End Credits PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.52min.