27年前の匂いが強烈に漂うオフィシャル映像集が史上最高峰クオリティで復刻です。本作はチャリティ・プロジェクト“ROCK AID ARMENIA”の日本盤レーザー・ディスクをDVD化した1枚です。その醍醐味は、何と言っても強烈な時代感と豪華絢爛のビデオ・クリップにあるわけですが、まずは基本の話から……。 このプロジェクトの発端となったのは1988年12月のアルメニア地震。死者2万5000人、避難者40万人という大災害となったわけですが、その被災者救済のためにロック界の重鎮たちが立ち上がったわけです。このプロジェクトに限らず、80年代の音楽界はチャリティ企画が花盛り。エチオピア飢饉を救うためのBAND AID(1984年)、「We Are The Wolrd」の一大ヒットとなったUSA FOR AFRICA(1985年)、20姓最大のチャリティ・コンサートLIVE AID(1985年)、HR/HM系のHEAR 'N AID(1986年)、旧ソ連の麻薬撲滅運動をサポートしたMOSCOW MUSIC PEACE FESTIVAL等々……そんなチャリティ・ブームの最終盤に登場したプロジェクトでした。この企画の目玉は、豪華ミュージシャン共演によるDEEP PURPLEの「Smoke On The Water」カバー。メインのシングルの他、参加アーティストのコンピレーション・アルバム、クリップ集のビデオ、制作ドキュメンタリー・ビデオなどがリリースされました。本作は、その中でも参加アーティストのクリップ集。当時は主にVHSで流通していましたが、本作では日本でリリースされたレーザーディスク版を精緻にデジタル化いたしました。当店では数々の廃盤映像をレーザーディスクから復刻してきましたが、本作もまた完全に同じ工程。コアマニア秘蔵の“ミント盤”と、海外専門メーカーの“ハイエンド環境”を駆使した史上最高峰クオリティを実現。その頂点画質&音質でプロジェクトに賛同したバンド/ミュージシャンの15曲と、新録版「Smoke On The Water ’90」のビデオ・クリップが観られるのです。さて、以上が基本。ここからが本題です。まず、参加アーティスト15組のクリップが続くのですが、そのラインナップが凄い。BON JOVI、FOREIGNER、RUSHといった北米系もいますが、メインは大英帝国。HR/HM系やプログレ系の超大物バンドが大挙して登場するのです。ポイントは、その時代感。中にはEL&PやLED ZEPPELINのように古い映像を引っ張り出してきているものもあるものの、80年代にキラめいたASIAやMIKE AND THE MECHANICS、THE FIRMが登場し、大御所バンドもクラシックスではなく、現役感アピールするかのような80年代クリップを大量投入するのです。DEEP PURPLEなら「Perfect Strangers」ですし、GENESISは「Mama」、PINK FLOYDも「One Slip」をチョイス。バンド名を眺めると70年代の勇姿が浮かんでくるラインナップなものの、映像は徹底的に華やかなりし80年代。ファンが一番望んでいる光景ではないけれど、猛烈に郷愁を誘われる……そんな映像集なのです。例えば、YES。往年の代表曲「I’ve Seen All Good People」が収録されているものの、そのバージョンは“90125 YES”のライヴ・クリップ。モダン・アート風のTシャツのトレヴァー・ラビン、オシャレなのか寝間着なのか微妙なジョン・アンダーソン。極めつきはクリス・スクワイアで、髪型はほとんどスティングですし、肩にザクのパイプのようなホースを付けた謎の衣装に身を包む。そんな彼らもナゾなら、を映し出す映像処理もナゾ。「スポットライトですよ」と言いたげなアニメーションの光芒が描かれ、「CG」というよりは「コンピューターグラフィック」と呼びたい幼稚な処理の数々が重ねられる。「Good People」を象徴しているであろう1940年代風の人々も登場しますが、メンバーや映像自体が古臭くなっているというジレンマに背筋がゾクゾク。もうほとんど古典SF映画のレトロ・フューチャー感覚です。もう1つ挙げるなら、GARY MOOREの「After The War」でしょうか。いきなり「誰だ、お前?」と言いたくなる若者が爽やかに登場したかと思うと、突然髪を丸坊主にされ、アメリカ陸軍に入隊してしまう。「反戦」をテーマにした曲ゆえの演出だとは分かるのですが、もしかして「長髪(=ロック)が刈られる」ことで戦争の悲劇を表現している!?!? しかも、この青年はそれっきりほとんど絡まず、コージー・パウエルを従えて弾き倒すゲイリーとの熱演のギャップが凄まじい。ビデオクリップ粗製濫造な80年代とは言え、もうちょっと何とかならんのか……。自分でも苦笑いなのか微笑ましいのか分からない笑みが浮かんでしまう光景なのです。そんなクリップ群の〆を飾るのが主役の「Smoke On The Water ’90」。「We Are The World」や「Stars」よろしく、重鎮中の重鎮が次から次へと登場する。ちょっと名前を挙げてみると……イアン・ギラン&リッチー・ブラックモアのオリジネイター組の他、リズム隊がクリス・スクワイア&ロジャー・テイラー。ヴォーカルにブライアン・アダムス、ポール・ロジャース、ブルース・ディッキンソン。ギターにデイヴ・ギルモア、トニー・アイオミ、アレックス・ライフソン、ブライアン・メイ。鍵盤にキース・エマーソンとジェフ・ダウンズ。さらに、画面には出てきませんが、ジョン・ロードやジョン・ポール・ジョーンズもバッキングに参加しています。単に豪華有名人なだけでなく、まるで日本企画かのように日本人好みなスター達が勢揃いしているのです。そんな彼らが次々と音を重ねていく豪華絢爛な「Smoke On The Water」。「We Are The World」「Stars」のように専用の新曲ではないので見どころのフィーチュア度はやや低めですが、それでもそれぞれの個性が染みついた私たちには強烈。キースのシンセに乗せてリッチーのリフが乗り、ギルモアとアレックスのギターが同時に鳴る中、ロジャースの艶やかな美声が流れ出る。当時、「ギランを歌わせたら天下一品」と(一部で)言われていたディッキンソンですが、実際に本家ギランとデュエットするとそうでもない(笑)事が分かりますし、逆にBLACK SABBATH時代にもこの曲を弾いていたアイオミのソロはハマッてる。そんな中、強いてMVPを決めるならブライアン・メイでしょうか。超個性で世界に名を馳せる猛者の中にあってもメイのサウンドは群を抜いて輝く。「1音で誰か分かる」ではなく、「1音で他を忘れさせる」強烈さ。「QUEENのメイ」ではなく、ジミヘン並みに人類史上最高のギタリストなのではないでしょうか。ともあれ、ロック史上希に見る強烈無比な5分10秒です。1本1本のクリップが時代の薫りを発散し、無上無類な「Smoke On The Water ’90」にたどり着く77分間。私たちが愛して止まないヒーロー達の80年代がギュウ詰めの1枚。この豪華にして心くすぐる大傑作。 Japanese Laser Disc Edition (77:15) 1. Introduction 2. Fanfare For The Common Man - Emerson, Lake & Palmer 3. Livin' On A Prayer - Bon Jovi 4. After The War - Gary Moore 5. Run To The Hills - Iron Maiden 6. Headless Cross - Black Sabbath 7. Dazed And Confused - Led Zeppelin 8. Heat Of The Moment - Asia 9. Hearts Turns To Stone - Foreigner 10. Silent Running - Mike And The Mechanics 11. Satisfaction Guaranteed - The Firm 12. Perfect Strangers - Deep Purple 13. Mama - Genesis 14. One Slip - Pink Floyd 15. The Spirit Of Radio - Rush 16. I've Seen All Good People - Yes 17. Smoke On The Water - Rock Aid Armenia 18. There She Goes Again - The Quireboys (Outro.) PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.77min.