Yeeshkul ! 今週もフロイドの新作が登場致します!さてファンの方々はフロイド71年のライブ音源と言えば何を思い浮かべるでしょうか。ここ日本では何と言っても箱根アフロディーテと大阪というもはや伝説と化している初来日公演がありますので、先々週に新装版でリリースされた『APHRODITE 1971 』や、鮮やかな透明サウンドが印象的な『UNPROCESSED OSAKA 1971』が思い浮かぶかと思います。この時期はフロイドライヴの絶頂期。海外のライブ公演に目を向けても、他の年度以上に多くの名演奏・名タイトルががズラリ並んでいるのが1971年の特徴です。『SAN DIEGO 1971 』や『MONTREUX 1971 』『OFFENBACH 1971 』等々と枚挙にいとまが無く、全バックカタログの割合からしても71年は他年度のタイトルより多めで、かつ演奏内容の濃い秀逸なものがずらりと並んでいます。 そんな中で『おせっかい』発表の僅か5日前、71年11月6日の北米クリーブランド公演の決定版として話題になった『ACUTE DANGER』という初期タイトルがあったのを御記憶でしょうか。これはかつての人気レーベルから出ていた『CLEVELAND 1971 』のアッパー版として収録内容の見直しを図り製作したもので、そのバランスの良い優れた音質がリリース当時マニアの間で大きく反響を呼んだ一枚でした。ところが近年これに使用した録音ソースのリマスター版がネット上に現れ、再びこの録音ソースがマニアの注目を集めています。本盤は、お察しの通り、この1971年クリ―ヴランド公演のアッパー版音源をリマスター収録した同公演決定盤であります。(ネット音源の全体的に低かったピッチも全てジャストに補整済み)旧盤との違いで説明しますと、まず演奏音が手前に1歩出て、収録音が本来持っていた肉厚さが明瞭感を伴って向上しているのです。これはオープニング「The Embryo」は勿論、その前に収録されているロジャーのアナウンス(※「The Embryo」の曲紹介)や録音機周辺の音像から顕著に現れますので、再生ボタンを押した直後からお気付きになるでしょう。また聴き進むうちに深く気付かされるのは音像のブレが大幅に軽減されている事です。実際に旧盤や他レーベルを含む既発盤と聴き比べて戴ければ判然としますが、どの曲のどのシーンでも演奏音が端整に整い、曲の表情がグッと引き締まって聴こえるのが容易にお分かり戴ける筈です。これはイコライズで音像を加工・変化させたのではなく、マスター音源が元々宿していたポテンシャルの高いサウンドを最新機材を使って厳密なピッチ調整や若干の音像・定位補正で最大限引き出した成果です。言わば過剰な味付けでそれを分からせるのではなく、素材の味を引き出す為に要所で確かな" 隠し包丁 "を入れる仕事技で質の向上を図ったと言えば通じるでしょうか。これによって弱音部では微かな音がしっかり立ち、強音ではよりマッシヴで鋭く立ったサウンドがなっているのです!! こうした一皮剥けた新しい聴き心地はその後も噴出し、「Fat Old Sun」では近く鮮明なギルモアの歌声とオルガンの響きが終始パーフェクトに報告され、この日の揺れ動く音楽表現が非常に間近な音像で現れます。5分50秒付近から展開してゆく協奏的対話も先導するギターが近くて潤い豊かな音色で響き、ドラムとベースもこれまで以上にタフで艶のある音を放って音楽的な行間を埋めているのが分かる筈です。「太陽讃歌」では低音のざわめきからゆっくり立ち上がる導入部がますます洗練された音像で蘇り、演奏音が沈み込む低音域でも音の彫りの深さがしっかり現れ、収録原音の質の高さが更に感じられると思います。中盤6分21秒からの展開もギターとオルガンが場の空気を振動させる様子がアッパー感満点の響きで出ていますし、歪んだ残響と共に終曲へ向かう様子も耳を疑う生々しさで出てきますので御注目下さい。そして「Atom Heart Mother」では轟音から立ち上がる重量感満点の導入部で五臓六腑に染み渡る響きに圧倒されるでしょう。音割れが無くなったとは言いませんが、サウンドの精度が高まっている事で嫌味な轟音ではなくなっていますし、曲中の静かなパートでも中音域の豊かな空間の中で交差する声のハーモニーやベースの動き、シンバルの音がブレずに出て拡散し、この日の変化と洞察力に富んだ表現をより正確に耳へ運びます。「One Of These Days」は冒頭の風のSEが更に近い音で聴こえ、骨太で芯のあるベースがド迫力の音像で迫ります。周知の通り、この日は" One Of These Days, I'm going to... "の後から再始動する演奏が非常に高い推進力を放っている訳ですが、これも収録音本来の鋭いサウンドで次々とこちらへぶつかってくる興奮で心躍るでしょう。僅かに頭切れで始まる「ユージン」は、この日も音楽が詞を取り払う事によって生まれるフォービスム、すなわち心のままに色彩を置いてゆく姿が鮮明に浮き上がります。霊感に充ちた音の装飾が鮮明なサウンドで聴き手を生々しく挑発し続け、詞が無い事によって得られる可能性を音楽によって開いてゆくその姿は、既発盤で聴き馴染んでいればこそ未知の輝きと驚きを発見されるに違いありません。「Cymbaline」は強弱が幅広く取られたその特徴的なアンサンブルが単に音の強弱で変化せず、この日の演奏が持っているスケールの自然な表現変化として感じ取れるのも嬉しいアッパー・ポイントです。またこの日は曲途中の足音シーンで女性の笑い声が挿入されるレアシーンがありますが(※ 8分10秒~22秒)、これも録音機周辺の様子と共に透明度の高い音像で出てきます。「Echoes」では導入のリングモジュレータを介したピアノ音から威力ある鋭い音が立ち上がり、演奏表現の縁取りも旧盤以上の確かさで掴めるでしょう。アホウドリの鳴き声の後ろで鳴る風の効果音も解像度が増し、映像喚起力が更に高まっている点も本作のアドヴァンテージです。演奏終盤も至近距離で現れる表現の鮮やかな陰影に圧倒されること請け合いですし、何よりも音楽が人の心の中で像を結んで意味を為すマジカルな瞬間、すなわちこの曲が根底に秘めている芯の部分と更に深く通じ合える筈です。尚、この録音ソースは以前から唯一の欠点として録音者が一曲ごとに録音のオンオフを繰り返している事でも知られていますが(※ 曲中の欠落は「ユージン」の僅かな頭切れ以外ありません)、これは今回使用した新マスターも同様です。しかし本作は収録原音の生々しさを残す意味からも敢えてこれを未加工のまま収録しております。ちなみに近年リリースされた海外のタイトルではディスク冒頭からこうしたシーン全てにフェイド処理が掛けられているのですが、本Sigma盤はマスターそのままのオリジナル収録音を忠実に引き出すディスクを目指して製作していますので、欠落もガチャ、というアナログノイズもあるがままの姿で残している訳です。しかし文章冒頭で書いた通り、厳密なピッチ補正と定位補正は隠し包丁を忍ばせるが如くしっかりとリマスタリングを施してありますから、精度を上げた収録原音本来の鮮烈なアッパー感を存分に噛み締めて戴けるに違いありません。魂により深く71年フロイドの新しい爪跡がグッと差し込んでくる最新作を是非お試し下さい。
Live at Emerson Gym, Case Western Reserve University, Cleveland, OH. USA 6th November 1971 PERFECT SOUND(UPGRADE)
Disc 1(61:33)
1. The Embryo 2. Fat Old Sun 3. Set The Controls For The Heart Of The Sun 4. Atom Heart Mother
Disc 2(72:39)
1. One Of These Days 2. Careful With That Axe Eugene 3. Cymbaline 4. Echoes 5. Blues





























