名門キニーが残した1979年の伝説録音がニューマスターでブラッシュ・アップ。その伝説録音とは「1979年12月26日ロンドン公演」。この日は短いテレビ放送や流出プロショットなど映像でも有名ですが、本作はショウの一部始終を完全収録したライヴアルバム。伝統の名会場“ハマースミス・オデオン”で記録された極上オーディエンス録音です。その最大のポイントはアップグレードしたサウンドにありますが、まずはショウのポジション。1979年と言えば、『LIVE KILLERS』にもなった“JAZZ TOUR”が浮かびますが、本作はちょっと違う“CRAZY TOUR”。その状況を整理する意味でも、当時のスケジュールから振り返ってみましょう。 ●1978年 “JAZZ TOUR”・10月28日-12月20日:北米(35公演)●1979年・1月17日-3月1日:欧州(28公演)・4月13日-5月6日:日本(15公演)《6月『THE GAME』制作開始》《6月22日『LIVE KILLERS』発売》 ・8月18日:SAARBRUCKEN OPEN AIR出演《10月5日シングル『Crazy Little Thing…』発売》“CRAZY TOUR”・11月22日-12月26日:英国(20公演)←★ココ★ これが『JAZZ』以降の流れ。『LIVE KILLERS』は「欧州」ツアーから制作されましたが、その発売と前後して次作『THE GAME』の制作を開始。10月には先行シングル『Crazy Little Thing Called Love』をリリースし、母国イギリスで実施したのが“CRAZY TOUR”でした。“JAZZ TOUR”では英国公演がなかったこともあり、20公演に及ぶ力の入った日程が組まれました。そんな英国ツアーでも、本作のハマースミス公演はハイライト。最終日というだけでなく、この日はポール・マッカートニーの呼びかけによるカンボジア救済チャリティ・コンサート“CONCERT FOR KAMPUCHEA”の一部。その初日でもありました。そんなショウはプロショット撮影され、一部がテレビ放送。その後、流出プロショットも発掘され、1979年の象徴ともなっています。しかし、そうした映像編はいずれも不完全版。それに対し、本作はフルショウを楽しめるライヴアルバムなのです。しかも、クオリティが極上。何しろ、本作をモノにしたのはあの“キニー”。日本公演のブート史と同義とさえ言える名門中の名門ですが、実は海外録音も数多く残している。本作もキニーのスタッフが渡英して記録した銘品録音なのです。この録音自体は従来から知られ、1979年を代表する名作と湛えられてきましたが、本作はさらにアップグレードしたニューマスター。大元マスターかどうかは不明なものの、既発よりも遙かにクッキリとしていて瑞々しい。既発では乱れ気味だった「Jailhouse Rock」のステレオ感も整っていますが、それ以上なのが全編を貫く鮮やかさ。輝くようなクリアさは密着感にもなり、録音ポジションが2-3列ほど前にグッと近づいたかのよう。既発をご存じの方なら、元々オンな録音なのをご存じと思いますが、ニューマスターはさらにQUEENに迫ってしまう。本作を体験した後では、あれほど素晴らしかった既発もモコモコして聴けなくなってしまいます。しかも、本作はそんな新マスターをさらに細心リマスタリング。この録音は若干オーバーピーク気味に始まり、徐々に改善していくことでも知られていますが、本作はそのオーバー感を聴きやすく緩和。もちろん、既発では狂っていたピッチも正確に整え、最高峰マスターに相応しい究極形に仕上げました。そんな極上サウンドで体験できるフルショウは……凄い。凄すぎる。前述のようにプロショット映像でも知られるわけですが、そこではカットされていた名曲もたっぷりの完全版。ちょっと列挙しますと……「If You Can't Beat Them」「Mustapha」「Spread Your Wings」「Keep Yourself Alive」「Bohemian Rhapsody」、さらには「Silent Night」や「Brighton Rock」を盛り込み約12分にも及ぶギター&ドラムソロも完全収録。ショウは『LIVE KILLERS』に準じていますが、そこでは聴けなかった次作『THE GAME』の新曲「Save Me」「Crazy Little Thing Called Love」も披露されています。特に「Crazy Little Thing Called Love」は素晴らしい。この曲は映像にもなっていましたが、実は一度演奏が終わってからもシンガロングが鳴り止まずにQUEENに無理矢理リプライズさせていた。彼らも困惑気味に応えつつ、「いい加減にしとけ(笑)」と言わんばかりに「Bohemian Rhapsody」へ突入する……。「Crazy Little Thing Called Love」は最新シングルとして全英2位をマークする大ヒットとなっていたわけですが、そのリアルタイム感が素晴らしいのです。その他にも映像ではブツ切りだった曲間やMCの数々も収録。いかにプロショットが残されているとは言え、名演の体験感は比較にもなりません。絶好調と猛烈テンションが炸裂する極めつけの大名演。そのフルショウをキニー・マジック全開の極上サウンドで捉えた極上ライヴアルバムです。伝統の名作が新マスターでアップグレードした歴史的な大傑作。 Live at Hammersmith Odeon, London, UK 26th December 1979 TRULY PERFECT SOUND(UPGRADE) The Concerts For The People Of Kampuchea Disc 1 (62:08) 1. Intro 2. Jailhouse Rock 3. We Will Rock You (fast) 4. Let Me Entertain You 5. Somebody To Love 6. If You Can't Beat Them 7. Mustapha 8. Death On Two Legs 9. Killer Queen 10. I'm In Love With My Car 11. Get Down Make Love 12. You're My Best Friend 13. Save Me 14. Now I'm Here 15. Don't Stop Me Now 16. Spread Your Wings Disc 2 (51:20) 1. Brian MC 2. Love Of My Life 3. '39 4. Keep Yourself Alive 5. Drum/Guitar Solos (incl. Silent Night) 6. Brighton Rock (ending) 7. Crazy Little Thing Called Love 8. Bohemian Rhapsody 9. Tie Your Mother Down 10. Sheer Heart Attack 11. We Will Rock You 12. We Are The Champions 13. God Save The Queen