異様なレベルの名作・傑作を連発している希代のプロジェクト、NICK MASON'S SAUCERFUL OF SECRETS。その最新ライヴアルバムが登場です。昨年の全欧ツアーに続き、北米ツアーも大好評続行中。もうすぐ開始から1ヶ月が経過しようとしていますが、本作はそんな4月の第一報。「2019年4月1日ミルウォーキー公演」の極上ライヴアルバムです。3作同時リリースとなりますが、北米ツアーの累計では早くも9作目。まずは、いつものようにコレクションを日程で整理しておきましょう。 ・3月12日『VANCOUVER 2019』・3月13日『SEATTLE 2019』※機材トラブル・3月15日『SAN FRANCISCO 2019』※セットが完成・3月16日『LOS ANGELES 2019 1ST NIGHT』・3月17日『LOS ANGELES 2019 2ND NIGHT』・3月19日:フェニックス・3月21日:デンバー ・3月24日『IRVING 2019』・3月25日『HOUSTON 2019』・3月27日:マイアミビーチ・3月29日『ATLANTA 2019』・3月31日:セントルイス・4月1日:ミルウォーキー 【本作】・4月3日-22日:北米(15公演)・4月29日-5月4日:英国(5公演)・7月3日-27日:欧州(14公演) ……と、このようになっています。初期FLOYDミュージックを復刻させるコンセプトが話題を呼び、ほぼ全公演から録音が登場。ただし、当店としてはのべつ幕なしにリリースしているわけではなく、各日のベストを厳選し、それでも基準に届かなければスルーする。これまでのタイトルを体験された方なら実感していただけると思いますが、それでもこれだけリリース可能なほど名録音が次々と生まれている異常なツアーなのです。そして、本作のミルウォーキー公演はその13公演目にあたるコンサート。北米ツアーは全28公演ですから、ちょうど折り返し点となるショウを記録したライヴアルバムなのです。気になる本作のクオリティですが、もちろん極上のフル録音。最大のポイントはクリアさでしょうか。同時リリースの『ATLANTA 2019』もウルトラ・クリアなのですが、本作も五分。顕微鏡観察のレベルで比較すると本作の方がわずかに距離成分を含んでいるのですが、驚くのはそれが曇りや濁りにならず、同レベルのクリアさを維持していること。暖かさをまったく感じさせないクリスタル・グラスのような輝く音響であり、かといって特定の音域が突き抜ける事もなく、トータルで均整が取れている。サウンドボード的な鮮やかさではあるものの、ライン録音ほど密着してはいない。ごく希にある「キラキラとした美しい響き」を好む方にはツボな名録音なのです。そのクリアさは、現場感にも通じている。実のところ、このミルウォーキー公演は、だいぶ盛り上がっている。間違ってもクリスタル・クリアな演奏音を邪魔することはないのですが、曲間には盛大な喝采が広がる。それはどのライヴアルバムでも通じるものの、他公演では曲が終了してから沸き上がるのに対し、本作はエンディングですでに盛り上がり始める感じ。もちろん全曲・全編ではありませんが、そうした前のめりなムードが端々から滲み出すのです。しかも、それがまた良い。先述したように本作はウルトラ・クリアですから、その声や拍手の1粒1粒まで超クリア。近くの喝采は大きく聞こえ、遠くの熱狂は音量が小さいものの、それは音量だけの話。すべての距離でピントが合っているようなクリアさのおかげで、遠近感が絶妙な立体感を描き出しており、現場空間を正確に再現してくれるのです。これは、演奏音にも同じ事が言える。初期FLOYDは出音自体よりも、現実の会場で鳴る音響にこそ真価がある。そこに佇むからこその立体感、音に囲まれる幻惑感が肝。本作は、その空間をウルトラ・クリアに体験させてくれる。聴き耳を立てて1音1音を分析する聴き方にも耐えられ、無心に音世界に浸りきっても美しい。ある意味でオーディエンス録音の理想を体現したかのような超美録音なのです。三者三様に素晴らしいライヴアルバムが登場するNICK MASON'S SAUCERFUL OF SECRETS。初期FLOYDならではの混沌とした熱気を感じるなら『HOUSTON 2019』、サウンドボード的な密着感なら『ATLANTA 2019』、そして輝く“空間の美”なら本作といったところ。いずれ劣らぬ最新レポート。初期FLOYDだからこそ多彩な録音の個性がビビッドに感じられ、その面白さがますます深まっていく。 Live at Riverside Theater, Milwaukee, WI, USA 1st April 2019 TRULY PERFECT SOUND Disc 1(55:24) 1. Intro 2. Interstellar Overdrive 3. Astronomy Domine 4. Nick Mason Introduction 5. Lucifer Sam 6. Fearless 7. Obscured By Clouds 8. When You're In 9. Remember A Day 10. Arnold Layne 11. Vegetable Man 12. Nick Mason Introduction 13. If 14. Atom Heart Mother 15. If (reprise) Disc 2(59:48) 1. The Nile Song 2. Guy Pratt Speaking 3. Green Is The Colour 4. Gary Kemp Speaking 5. Let There Be More Light 6. Childhood's End 7. Nick Mason Speaking 8. Set The Controls For The Heart Of The Sun 9. See Emily Play 10. Bike 11. One Of These Days 12. A Saucerful Of Secrets 13. Point Me At The Sky Nick Mason - drums Guy Pratt - bass & vocals Gary Kemp - guitar & vocals Dom Beken - keyboards Lee Harris - guitar & vocals